「How do you feel?」──30年の対話で、私が最初に聞く言葉
以前の私は、
「どうすれば、ちゃんと伝わるか」をずっと考えていました。
企業研修でも、講演でも、
“伝え方”は大切だと思っていたからです。
でも、長く現場に立つ中で、
あることに気づきました。
人は、「正しい言葉」で動くとは限らない。
むしろ、
「ちゃんと話してください」
「論理的に説明してください」
「で、結局どうしたいの?」
そんな言葉を向けられるほど、
話せなくなる人がいる、ということでした。
本当は伝えたい。
でも、言葉にならない。
そんな場面を、私は何度も見てきました。
30年以上、
管理職研修や対話の現場に立ってきましたが、
“言葉が出なくなる人”ほど、
実はたくさんのことを感じています。
ただ、感じていることを、
うまく整理できていないだけなのです。
だから私は、
ある時から最初に聞く言葉を変えました。
「How do you feel?」
「あなたは今、どう感じていますか?」
それは、
答えを求める質問ではありません。
正解を探すための問いでもありません。
その人が、
自分の感情に戻ってくるための問いです。
あの日の、課長の沈黙
数年前、ある管理職研修でのことです。
普段は明るく、よく笑う40代の女性課長が、
「あなたは今、どう感じていますか?」と聞いた瞬間、しばらく天井を見上げていました。
やがて、小さく言いました。
「……自分が何を感じているのか、もうわからないんです」
その一言を、私は今もよく思い出します。
責任感が強く、
人をまとめる立場にいる人ほど、
「どう感じるか」より「どうするべきか」を考える癖がついています。
だから、感情に触れる問いに慣れていない。
「How do you feel?」は、
答えを求める質問でも、正解を探す問いでもありません。
その人が、自分の感情に戻ってくるための問いです。
相手に向ける問いであり、自分に向ける問い
「How do you feel?」
――今、どんな感じかな。
最初にこの問いを投げかけた時、
すぐに言葉が返ってくることは、ほとんどありませんでした。
沈黙になることもあります。
「わかりません」と返されることもあります。
中には、
急に涙があふれた人もいました。
でも私は、その反応を見ながら、
「感じること」を後回しにしてきた人が、
本当に多いのだと知りました。
特に、責任感が強い人ほど…
管理職。
リーダー。
親。
“ちゃんとしなきゃ”が強い人たちです。
そういう人ほど、
「どう感じるか」より先に、
「どうするべきか」を考える癖がついています。
だから、
感情に触れる問いに慣れていない。
コミュニケーションの前に、起きていること
多くの人が「コミュニケーションが苦手」と感じる場面で、 実際に起きているのは、話し方の問題ではないことが多いと感じます。
相手の反応が気になる。
空気を壊したくない。
変に思われたくない。
そうした気持ちが先に立つと、 自分がどう感じているかは、後回しになります。
「How do you feel?」という問いは、 その順番を、そっと元に戻します。
伝え方の前に、今の自分の感覚を確かめる。
それだけで、言葉の質は自然と変わっていきます。
コミュニケーションの前に、起きていること
もちろん、
私も最初からうまくできたわけではありません。
以前の私は、
「元気を出してほしい」
「前向きになってほしい」
そんな気持ちが強すぎて、
問いが“圧”になってしまったこともありました。
急いで答えを出そうとしてしまったこともあります。
でも、本当に必要だったのは、
“正しいアドバイス”ではなく、
“安心して感じられる時間”だったのです。
それから私は、
問いの前に「待つこと」を大切にするようになりました。
沈黙も、
すぐに埋めない。
言葉にならない時間も、
急かさない。
すると少しずつ、
「本当は、ずっと苦しかった」
「怒っていたんだと思います」
「悲しかったのかもしれません」
そんな言葉が、
ぽつり、ぽつりと出てくるようになりました。
スキルは、ハートの次にくる
私は今、
“うまく話せること”より、
“自分の感情を置き去りにしないこと”の方が大切だと思っています。
『スキルは、ハートの次に来る。』
どれだけ知識や技術があっても、
自分の感情がわからなくなると、
人との対話は苦しくなっていくからです。
だから私は、
研修でも、日常でも、
まず最初にこう聞きます。
「How do you feel?」
――今、どんな感じかな。
それは、
相手のためでもあり、
本当は、
自分自身のための問いでもあるのかもしれません。
言い返したくなったとき。
黙り込んでしまったとき。
何も言えなくなったとき。
「私は、今どう感じている?」
答えがすぐに出なくても大丈夫です。
言葉にならなくても、問題ありません。
問いを向けること自体が、 自分を乱暴に扱わない、という選択だからです。
自分の感情を置き去りにしないこと
うまく話せなくてもいい。
すぐに答えが出なくてもいい。
ただ一度、
「How do you feel?」
と、自分に向けて問いかけてみる。
その小さな立ち止まりが、
あなたを元の位置に戻してくれることもあります。
さて、今のあなたは、どう感じていますか。
もしよければ、 今の感覚を、
ひとことでいいので どこかに書き留めてみてください。
答えにしなくていい、途中のままで。
もし、読んでいて「少し立ち止まりたいな」と感じるところがあったら。
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今日のひとこと
「How do you feel?ー私は、今どう感じている?」
と、自分に向けて問いかけてみよう。
きょうもいい日になりますね🌹
Profile
桐生 純子|コミュニケーショントレーナー
法人を中心に30年・延べ15万人の研修現場に立ってきました。
「伝わらない」の多くは、言葉ではなく姿勢の問題です。
その気づきを、記事を通してお届けしています。
著書『こころのスイッチ』
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
「人との関わり方がわからない」
「育成しているつもりが、なかなか現場に活かされない」
そんな場面が組織の中で続いているとしたら。
それは個人の問題ではなく、
"関わり方"の設計から変えられることかもしれません。
管理職の対話力・1on1・心理的安全性をテーマに
企業研修・講演を行っています。
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「検討段階」
「費用感だけ知りたい」で大丈夫です。

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