フランス:セックスワーク非犯罪化の法案が議会提出 緑の党と不服従のフランス
『現代思想』6月臨時増刊号「総特集=フェミニズムから問う」(青土社)の青山薫「買春処罰と新廃止主義」に、フランスの「「買春処罰」法制定10年を期して、緑の党上院議員がセックスワーカーを含む関係者と共同で「反買春処罰」法案を提出する」ことが書いていました。
以下のリベラシオン(Libération)への記事のリンクがありましたが、記事全体は有料なので、先頭の無料版だけを翻訳しています。
《10年後、売春法は失敗した──今こそ当事者に発言権を返すべきだ》
寄稿:アンヌ・スイリス(緑の党・上院議員)
本来はセックスワーカーを保護するはずだった「買春客の処罰」は、実際にはセックスワーカーをより不安定な状況に追い込み、暴力や殺害を増加させてしまった。セックスワーカー本人たちと共に討論会を企画している緑の党のアンヌ・スイリス上院議員は、当事者の経験に基づいた政策転換を訴えている。
「売春制度を廃絶する前進」として導入されたこの法律は、実際には不安定さと暴力を増大させた。10年が経った今、その結論は明白である──この法律はセックスワークに従事する人々を危険にさらしている。殺害も暴力も増え、若年層への予防という点でも成果はまったく見られない。
本来は施行から10年後に実施されるはずだった影響評価が行われていないため、私たちはセックスワーカー、法律専門家、現場の支援者たちと共に、上院とパリ政治学院で一般公開の2日間の討論会を開催することにした。そして、当事者と共同で作成した法案を提出し、法制度が──(※ここで無料部分は終了)
以下のフランスのニュースメディア「BFM TV」の2026年4月13日の記事は全文が無料で読めるので、それを翻訳しています。2016年に施行された買春処罰法から10年を経ての大きな転換になるセックスワークの非犯罪化を目的とした法案の提出の記事の日本語への翻訳の要約とその関連です。
セックスワーカーの団体が、上院議員アンヌ・スイリス(Anne Souyris)と、下院議員アンディ・ケルブラ(Andy Kerbrat)と協力し、非犯罪化を中心とした法案(PPL)を作成しました。
「PPL」は、フランス語の「Proposition de loi」の頭文字をとった略語で、日本語では「議員立法(または議員提出法案)」という意味です。フランスの法案には大きく分けて2つの呼び方があります。
Projet de loi(PJL): 政府(首相)が提出する法案(閣法)。
Proposition de loi(PPL): 国会議員(上院・下院)が提出する法案(議員立法)。
上院議員アンヌ・スイリス(Anne Souyris)は、ヨーロッパ・エコロジー=緑の党の議員で、党の正式名称はEurope Écologie – Les Vertsで、略称はEELVです。緑の党は2023年秋にLes Écologistes(レ・ゼコロジスト)へと党名を変更しました。現在も通称として緑の党や旧称のEELVと呼ばれることが多くあります。下院議員アンディ・ケルブラ(Andy Kerbrat)は、不服従のフランスの議員で、党の正式名称はLa France insoumiseで、略称はLFIです。
協力団体には、Fédération Parapluie Rouge(赤い傘連盟)、アムネスティ・インターナショナル、NousToutes(フランス最大級のフェミニスト運動団体)、Acceptess‑T(トランスジェンダー当事者団体)があります。これらの団体は、まず第一にセックスワークの非犯罪化を求めています。
Médecins du Monde(世界の医療団)の担当者サラ=マリー・マフェソリ氏は、「世界中のすべてのセックスワーカーが求めているのは非犯罪化だ」と述べています。
法案には買春行為の購入を処罰する規定の廃止、広義の売春周旋に関する刑罰の廃止があり、性労働者70名への聞き取りを基に作成(フランスでは初)しています。スイリス議員は、「この法案は売春を推進するものではない」と強調して、「現実に基づき、包括的に権利を与える法律である」と述べています。
目的は、セックスワーカーが暴力から守られること、労働法の保護の下で安全に働けるようにすること、希望すれば安全に仕事を辞められる選択肢を確保することがあります。
2016年の買春処罰法の問題点は、Acceptess‑T のディレクター、ジョヴァンナ・ランコン氏は、「2016年の買春客処罰法は、特にトランスの性労働者を医療システムから遠ざけ、HIV治療の中断が増えた」と指摘しています。アムネスティのセバスチャン・テュレ氏も、「10年経った今、健康・安全・暴力防止の観点から、より良い枠組みが必要だ」と述べて、今回の法案を「歴史的な第一歩」と評価しました。
法案は以下のことも重視しています。不法滞在状態の移民性労働者への支援、差別・搾取からの保護、未成年による性的サービス販売の防止。
以下の記事にありますが、2016年の買春処罰の最終投票に参加したのがわずか87人の議員でした。賛成が64、反対が12、棄権が11でした。国民議会下院の定数は577議席なので、残りの議席は490もありました。それだけの欠席が意思を示さない中で、全く合意の取れない中で成立したのが、フランスの2016年の買春処罰法です。法律制定の経緯に問題がありすぎたのです。
