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フランスの買春処罰法の成立の経緯

フランスの2016年の買春処罰法は、どういう経緯で成立したのかを知りたい時に、日本語圏では情報が乏しいので、ここに載せています。

元々この法案は、2013年に国民議会の下院での初回採決があり、次のような投票の結果でした。国民議会で法案を支持した議員の大半は、議会を支配するフランス社会党の所属でした。多くのセックスワーカーがこの法案に反対して、2014年7月にフランス上院で否決されています。

2013年の国民議会下院

賛成:268
反対:138
棄権:79

フランスの議会は、二院制です。国民議会の下院の定数は577議席で、直接選挙で、任期は5年。元老院の上院の定数は348議席で、間接選挙で、任期は6年で3年ごとに半数が改選になっています。

当時のUMPであるThe Union for a Popular Movementの国民運動連合で、現在のフランス共和党にあたる政党は、2013年のこの法律に多くの議員が反対しました。

以下のLa Dépêcheの記事にあるように、国民議会下院の定数は577議席であるのに、2016年の買春処罰の最終投票に参加したのはわずか87人の議員でした。賛成が64、反対が12、棄権が11でした。残りの議席は490もあるのに、欠席して意思を示さないという全く合意の取れない中で成立したのが、フランスの2016年の買春処罰法の実態です。

2016年の国民議会下院

賛成:64
反対:12
棄権:11

La Dépêcheの記事の内容を短くまとめて、補足してみます。

フランス社会党と左派連合の議員は多くが支持しましたが、フランス共和党では棄権が主流となりました。左派急進党と緑の党の議員の大半は、買春処罰法に反対しています。

この最終投票は、国民議会で審議された4回目で最後の審議でした。上院は毎回この法案を否決していましたが、最終決定権は国民議会の下院議員にありました。

この買春を犯罪化する法案の提出者であるフランス社会党のモード・オリヴィエ議員は、需要を枯渇させることで人身売買を減らすことができると言っています。女性の人身取引対策グローバルアライアンスが人身売買を減らすことに、成人間のセックスワークの非犯罪化が有効で、成人の買春処罰が有害であると言っています。これとは正反対のことを言っているのが、モード・オリヴィエです。

公式の推定では、フランスには3万から4万人の売春婦がいて、その80%は外国出身であるそうです。以下の記事に書いていますが、フランスでは合法的な売春宿の制度は1946年に廃止されて、売春自体は形式上は合法のままでしたが、関連する行為の多くが犯罪化されてきました。現在のフランスは、買春処罰法を廃止する法案が提出されています。

この買春処罰法案を提出した3人の議員に、社会党のモード・オリヴィエ議員、カトリーヌ・クテル議員、共和党のギ・ジョフロワ議員がいました。

フランス共産党のマリー=ジョルジュ・ビュフェ議員も「いいえ、売春は世界最古の職業ではなく、女性が被る最古の支配なのです」と言ったことが記録に残っています。

セックスワーカーの団体は、金銭を介する性的サービスの交換であっても、自発的なものであると言っていて、主にラテンアメリカや中国出身の約60人のセックスワーカーが、議会の近くで「顧客への罰則に拳を上げて抗議する娼婦たち」と書かれた横断幕を掲げてデモを行ったとあります。

セックスワークと奴隷制と人身売買を混同して、セックスワーカーを否定することを目的としたのがフランスの買春処罰法であるという批判がされています。以上が、La Dépêcheの記事のまとめと補足です。

フランスの買春処罰法は、国民議会での同意も得られず大量の欠席者を出して、国民の中でも激しい議論を巻き起こして、相当な問題含みの中で成立したものです。

フランス社会党の内部の議員グループが法案を提出して全体では少数の賛成者に、多くの欠席者を出して、合意の上で成立した法律ではなかったのが、2016年のフランスの買春処罰法です。

フランスの二大政党の一角を占めていたのが社会党でしたが、性道徳の厳格派で、成人女性の性的主体性をまるで児童と同じであるかのように扱って、女性は成人でも自己決定力を持つことができないという姿勢で、国際人権の強い潮流になっている成人間のセックスワークの非犯罪化の理解がないことで、時代の潮流に反していると見なされた社会党は、二大政党の一角であった政党とは思えないほど大きく衰退しています。

現在は、共和党の議員からベルギーが2022年に成人間のセックスワークの非犯罪化を欧州で初めて実現して、2024年にさらに改正したことが模範になるとして、法案も提出されています。

このフランスの買春の犯罪化はスウェーデンモデルを参考にしたものですが、北欧モデルとも言われるスウェーデンモデルは、現在では、あらゆる批判がされて、失敗したとよく言われています。

以下は、その後の経緯です。


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