広瀬AIを作った男が、断腸の思いで広瀬氏のnoteを解約した話
広瀬隆雄の投資哲学を、まるごとAIにした。
投資で二度と同じ失敗をしないためだ。
それでも、失敗は止められなかった。自分で作ったAIにすら、自分を止められなかった。そんな自分をなんとかするため自分が選んだ方法は、皮肉なほど単純なものだった。
広瀬氏のnoteを、解約することだ。
■ 広瀬隆雄を、AIにするほど読んだ
広瀬AIを作ったきっかけは、大きな投資の失敗だった。レバレッジETFで850万を溶かしたあと、二度と繰り返さないために、広瀬隆雄の投資哲学をAIに落とした。それが自分用の「広瀬AI」だ。ニュースや決算を読ませて、その方法で市場を見させていた。
その経緯は前に書いた。
今日は、その続きだ。
■ AIは3度、止めにきた
広瀬氏の投資哲学でAIを作り、投資を運用すれば、もう二度と同じヘマはしない——そのはずだった。なのに、AIを作ったあとで、もう一度、大きく失敗した。最初の1、2回は、投資戦略を読んでも鵜呑みにせずやり過ごせた。やられたのは、その次だ。
順番に書く。
会社で疲れて帰り、6月13日の「投資戦略」を読んだ。ちょうどスペースXが上場して連騰していた。その勢いに当てられ、頭が宇宙でいっぱいになっていた。記事で広瀬氏は、宇宙というテーマはもう終わり、関心はAIへ移ると書いていた。だが熱くなった頭は読みたいところだけを拾った。「強気」と「宇宙」の二語をつなげて、勝手に「宇宙に強気」と読んだ。同じ記事に「もう終わり」と書いてあるのに、その一行は目に入らない。見たいように、読んでいた。
宇宙は終わりと書いていたのにだ。
宇宙でいい銘柄はないか、と広瀬AIに聞いた。出てきたのがASTSだ。ただしAIは、銘柄と一緒に釘を刺してきた。値動きが荒すぎて、いつもの損切りが効かない、買うなら小さく、と。
3日して、買おうと思うと相談した。今度はAIが本気で止めにきた。年率のブレは119%、8%の損切りはひと月で8割方ノイズに弾かれる、フル玉はやめておけ、と。それでも食い下がると、適正リスクの2.6倍だ、額は3分の1にしろ、これはリベンジ買いじゃないのか、とまで言った。
自分は、その全部を押し切った。適正サイズの3倍を超える額を入れ、損切りも置かなかった。あとは仕事に追われ、下げても損切りを逃した。マイナス20%を超えたところで、ようやく損を確定させた。
道具は3度、別々の角度から止めにきた。値動きで、サイズで、動機で。それでも押し切ったのは、情報が足りなかったからでも、道具が悪かったからでもない。あの最初の読み間違えで、頭がもう決めていたからだ。決めた頭は、自分で作ったAIの警告すら聞かなかった。
■ ガードレールはあったが防げなかった
ルールを増やしても、防げない。あのとき、ガードレールはもうあった。AIが3度、はっきり引いてくれていた。それでも全部踏み越えた。
これは自分だけの話じゃない。分かっていても、その瞬間が来ると止まれない——オレオレ詐欺と同じだ。冷静なときに引いた線は、熱くなった頭には届かない。
しかも守りはいつも不利だ。こっちは毎回成功しないと意味がないのに、罠は一度成功すれば足りる。やり過ごした回をいくつ積んでも、たった一発で全部持っていかれる。勝った回は、なんの保険にもならない。ルールを足すのはいい。ただ、熱くなった頭では、そのルールすら守れない。要るのは、ルールより、それを意志に頼らず守らせる仕組みのほうだ。
■ 自分だけの問題かを、数字で確かめた
ASTSで溶かしたあと、気になった。「投資戦略」で投資を行うことが儲けにつながるか。それとも、発表のたびに動くこと自体が、割に合わないのか。
そこで、広瀬氏の今年の「投資戦略」全24本を、実際の株価で一本ずつ検証した。連載の節目どおりに動いた人ほど資産を減らし、何もせず持っていた人のほうが増えていた。発表の瞬間に反応するほど、取りこぼしが積み上がる。数字を全部出した検証は、別の記事にまとめた。
年初の100ドルが半年でどうなったかも、そこに置いた。
腕の問題じゃなかった。発表されたその日に、生で反応して動くこと——それ自体が、損のもとだった。
■ 元を断つ
広瀬氏のnoteには、いまも学びがある。市場の見方も、歴史や地政学の読み解きも、読むたびに発見がある。それでも、やめる。解約する。
最初は、もっと軽く考えていた。購読は続けて、「発表された日だけは開かない」。それで済むはずだった。でも、それも結局は意志の話だ。意志で止まれるなら、そもそもASTSで溶かしていない。AIに3度止められても踏み越えた人間が、「今日は開かない」の一行で止まれるわけがない。
だから、我慢するんじゃなく、我慢する場面ごと消す。手の届く場所に「答え」を置かない。発表される結論に、そもそもアクセスできなくする。それには、購読をやめるのがいちばん早い。意志に頼らない、というのはそういうことだ。
価値があるかどうかじゃない。自分が、それを安全に持てるかどうかだ。どれだけ良い情報でも、振り回されるなら、手放すしかなかった。
■ AIにも、結論は食わせない
同じことが、AIにも起きる。自分の投資AIは、広瀬氏の方法で、まっさらな目で市場を読むために作った。なのに、こっちが先に結論を渡すと、AIもその前提の上でしか考えなくなる。
現に、ASTSのときがそうだった。自分は「宇宙でいい銘柄はないか」とAIに聞いた。その時点で、「宇宙に強気」という自分の思い込みを、もうAIに渡している。だからAIは、値動きもサイズもきちんと警告したのに、「宇宙そのものをやめておけ」とは言わなかった——広瀬氏が「宇宙はもう終わり」と書いていたのに、だ。結論を渡された側は、その枠の中だけで答えてしまう。
だからAIにも、結論は入れない。継ぐのは方法であって、結論じゃない。結論を食わせた瞬間、自分の広瀬AIは、こっちの思い込みをなぞるだけの機械になる。それなら、わざわざ作った意味がない。
■ 卒業
広瀬氏から受け取るべきだったのは、毎週の「答え」じゃなかった。市場を自分の目で見る「方法」のほうだ。その方法はこれからも学び続けたいと考えていた。しかしそれでも、断腸の思いで手放す。馬鹿な自分を何とかするために。
答えは、見た瞬間に脳が従う。人も、AIも。だから、答えを断つ。方法は継ぐ。購読はやめる。それが、自分なりの卒業だ。
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