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18. Yurika|読む人の運命を加速させる恋愛小説

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ふぅ、疲れた。
私はパソコンから目を離し、腕を持ち上げて大きく伸ばす。
それから力を思いっきり込めて、一気に抜く。

腰が痛い。
看護師の仕事を始めてから腰痛持ちになった。子どもたちを抱きかかえることも多いから。

時計は夜の11時20分を告げていた。
もう少し、頑張りたい。このシナリオは書き切ってしまいたい。

なんとなく始めたシナリオライターという仕事。
洸太さんはすごく、喜んでいた。より私らしくなっていると言って。

洸太さん———

私はスマホでLINEを開く。
「さっきはほんとごめん。自分が抑えられなかった」
既読は付けたけど、まだ返信はしていない。

今日の朝、急に洸太さんから電話が来た。
仕事に向かう途中だったけど、何かあったのかと思って私は電話に出た。
「洸太さん?どうしたんですか?」
「本当に好きなの?」
洸太さんは迫ってくるような声だった。どこか刺々しく、今まで聞いたことのない声。
「本当に好きなの?直樹さんのこと」
「え?」なんでそんなこと聞くの。
「友利花さんは本当に、直樹さんことが好きなの?」

この前直樹さんと電話した後、洸太さんにすぐLINEをした。
「さっき直樹さんと電話して、今の気持ちをそのまま伝えました。そしたら直樹さん、直接告白したいって言ってくれました。来週の火曜日。洸太さんの言う通りにしてよかったなと思います」
洸太さんに隠すのはおかしいと思ったから。

「本当に好きなの?友利花さん、答えて」
洸太さんは、逃がしてくれない。
「なんで・・・?なんで、そんなこと聞くんですか?」
私はもう、泣きそうだった。
「誤魔化してるから。友利花さんが、自分の気持ち」
誤魔化してる?
「洸太さんは、どうなんですか?誤魔化してないんですか?自分の気持ち」声が、震えてる。
「誤魔化してないよ。友利花さんには幸せになってほしい。誤魔化してない」
「でも私が直樹さんに気持ち伝えたってLINEした時は、『よかったね』って言ってたじゃないですか。なんで今になってそんなこと言うんですか」
「それは———」
ずるい。
直樹さんは優しくて、私のことを大切に思ってくれて。
直樹さんの気持ち、伝わってくるようにもなってる。
でも、なんで———

それから、長い沈黙があった。
とても深く、暗くて、もう二度と音が聞こえてこないのではないかと思うほど、長い沈黙だった。

「すみません、洸太さん。私、仕事行かないと」
私がそう言って沈黙を破ると、洸太さんは最後、言った。
ひどく、寂しそうな声で。
「直樹さんと、幸せになってね」

その電話の後、洸太さんから届いたLINEを見つめる。
「さっきはほんとごめん。自分が抑えられなかった」
なんて返信していいのかわからない。

「直樹さんとのこと、応援するよ」
洸太さんの声が、蘇る。
「友利花さんが幸せなら、それが一番いいことだと思う」

「友利花さんは本当に、直樹さんのことが好きなの?」

なんで———
なんでそんなこと、聞くの。

はぁ・・・
パソコンからJ-POPバラードが聞こえてくる。

直樹さんは優しくて、一緒にいて落ち着く。大人の余裕もあって私のペースを大切にしてくれる。
私は直樹さんのことをもっと知りたいし、もっと好きになりたい。
この気持ちに嘘はない。
付き合ったら、普通に幸せなんだろうなって思う。

洸太さんの、寂しそうな声。
洸太さんは?
洸太さんは、どうしたいの?

苦しい。息が———

私は椅子から立ち上がり、冷蔵庫に向かう。
何か、飲んだ方がいい。

もうなんか、疲れたな。疲れた。
仕事も、プライベートも。
なんでこんなに、うまくいかないんだろう。
どこから、間違ったんだろう。
これでも看護師になるために一生懸命勉強して、自立するために一人上京して働いて、ちゃんと彼氏作って、将来も、ちゃんと———

冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぐ。
注がれる音と、それに交わる微かなバラード曲。

あれ、この曲———

私の心が、一緒に歌う。
口ずさむごとに、その意味が、私を揺さぶる。

踏み込んじゃいけないのはわかってる。そんなことわかってる。
色んなものが、おかしくなってしまう。
洸太さんも、洸太さんの家族も、私も———
でも、もう、どうすればいいんだろう。
この気持ち、どうしようもないこの気持ち。

聴こえてくる旋律が、私の内側から響き上がっていく。
高まって、もう、止まらない———

「———直樹さんと、幸せになってね」

洸太さんの声と共に最後、私の視界は涙で歪み、崩れ落ちていった。



どれくらい、泣いてただろう。

私はゆっくりと立ち上がり、のそのそとパソコンの音楽を止めた。
部屋は静まり返る。
そうだよね。もう深夜0時過ぎだもん。

日を跨いだ。
私は今日、告白される。直樹さんに。

私はスマホを手に取り、LINEを開く。
「沙織、こんな遅くにごめん。今日少しだけ時間ある?ちょっと話したいことがあるの」
送信し、スマホの画面を消した。

足を引きずるようにしてソファの方へ。崩れるようにして座る。
背もたれに頭を乗せ、目を瞑る。
瞼に溜まっていた涙がまた少し、溢れてきた。

私は、何が欲しい?
もしこれが、運命なら。

>>次回話


【あらすじと初回話】


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