試供品ZINE『カスハラ対策』
0|一番多い相談
「カスハラで困ってる」
そう言われる。
でもクライアントからの要望は、
だいたいこれだ。
「マニュアルを作ってほしい」
──お忘れですか?
「施策に口を出すな」
って言っといたよね。
ちゃんとあるよ。
設計が、施策が、根本的な解決策が。
でも、採用されたことがない
なぜか、提案が通らない。
理由はよく分からない。
内容が悪いとも思っていない。
現場で起きている問題とも、噛み合っている。
それでも通らない。
だからこの施策は、
クライアントワークで提案するのをやめた。
しょうがないので、
試供品として放出することにする。
なんでだろう。
やっぱ、
バカなのかな。
どっちが?
僕か?
クライアントか?
1章|マニュアルは、現場を救わない
カスハラで困っている、と相談される。
だからマニュアルを作ってほしい、と言われる。
もう、端っからズレてる。
マニュアルは、人を守らない。
マニュアルが守るのは、せいぜい「説明したという事実」だけだ。
現場で起きているのは、こういうことだ。
想定外の言い回し
感情的な怒鳴り
威圧
脅し
「お前じゃ話にならない」という圧
マニュアルは、ここに何も効かない。
なぜなら、
マニュアルは仕様内でしか動かないからだ。
仕様外は、必ず現場に落ちる。
マニュアルが増えるほど、
現場は苦しくなる。
「ここには書いてない」
「判断は現場で」
「ケースバイケースで」
この言葉が増えた瞬間、
無限責任が始まる。
しかも、無償で。
よくある誤解がある。
「対応力を上げればいい」
「研修を増やせばいい」
「心構えが足りない」
違う。
問題は人じゃない。
設計だ。
人間を最前線に立たせたまま、
怒り・威圧・例外処理を全部受け止めさせる。
この構造のまま、
マニュアルだけ増やしても、結果は変わらない。
壊れるのは、いつも現場だ。
だから、このZINEでは
マニュアルの話をしない。
代わりにやるのは、
「どう設計を変えるか」だけだ。
次は、
僕の設計した施策を示す。
2章|いつも提案する施策
僕の施策は、シンプルだ。
窓口はAIがデフォ。
人間を呼ぶなら、金を取る。
超完璧。
ここで、だいたい空気が変わる。
冷たい
強すぎる
顧客軽視だ
炎上する
現実的じゃない
そう言われる。
でも、よく考えてほしい。
今の窓口設計は、こうなっている。
最前線に人間
無料
無制限
感情対応込み
例外処理は現場判断
これを「当然」だと言い張る方が、よっぽど異常だ。
AIを窓口のデフォにする、というのは
サポートをやめることじゃない。
24時間対応できる
感情で返さない
威圧が効かない
記録が残る
対応品質がブレない
むしろ、今より安定する。
それでも人間を呼びたい場合は、
対価を払ってもらう。
これは罰じゃない。
差別でもない。
切り捨てでもない。
コストの可視化だ。
人間が対応する、というのは
高度な判断
責任の引き受け
感情労働
例外処理
結果の回収
を全部含む。
無料で投げる設計がおかしい。
この施策の目的は、
クレーマーを黙らせることじゃない。
人間を、無償で殴れる構造を終わらせることだ。
AIは盾だ。
人間は切り札だ。
切り札を、
常に表に出してはいけない。
3章|よくある反論は、全部ここに落ちる
この施策を書くと、
ほぼ同じ反論が、同じ順番で出てくる。
説明うぜえ。
なので、先に片付けておく。
反論①
「カスタマーサポートは、企業の当然の務めだ」
──その通りだ。
そして、
企業の務めには、そのコストに対して当然、対価をいただく。
ここで混ざりがちなのは、次の二つだ。
務めであること
無料であること
この二つは、別だ。
道路整備は国の務めだが、
高速道路は有料だ。
医療は公共性が高いが、
診察料は発生する。
務め=無償ではない。
反論②
「金を取るなんて、顧客軽視だ」
──違う。
顧客を軽視しているのは、
人間を最前線に放置する設計だ。
感情で殴られる
威圧される
責任だけ押し付けられる
これを「無料サービス」と呼ぶ方が、よほど歪んでいる。
反論③
「金を払えない人は、門前払いか?」
──AIがあるっつってんだろ?
無料で通れる窓口は、すでに用意してある。
排除しているのは人じゃない。
人間を無償で殴れる設計だ。
反論④
「本当に困っている人もいる」
──だから、AIを置く。
24時間
感情なし
記録あり
判断のブレなし
本当に困っている人ほど、
怒鳴らなくても通る窓口が必要だ。
反論⑤
「炎上しない?」
──するかもしれない。
でも、それは
いままで黙認していた構造が、可視化されるだけだ。
炎上を恐れて現場を差し出す設計は、
もう限界だ。
ここまでで分かる通り、
この施策は過激ではない。
ただ、現実を正直に扱っているだけだ。
4章|なぜ、これでカスハラは消えるのか
カスハラは、怒りの問題じゃない。
性格の問題でも、モラルの問題でもない。
設計の問題だ。
いまの窓口設計は、こうなっている。
人間が最初に出てくる
無料
何を言っても止まらない
相手は仕事として耐える
こちらにリスクは発生しない
この条件が揃うと、
人は簡単に一線を越える。
悪意がなくてもだ。
つまり、カスハラが成立する条件は、
次の一行で書ける。
リスクゼロで、人間に感情をぶつけられること
カスハラ対策は、この条件を壊すだけでいい。
AIをデフォにする、という意味
AIを最初に置くと、何が起きるか。
威圧が効かない
怒鳴っても反応は変わらない
記録が残る
話が脱線しない
相手が「人」じゃない
この時点で、
多くの攻撃は空振りになる。
殴っても、手応えがない。
有料化が生むもの
それでも人間を呼びたい場合、
対価が必要になる。
ここで起きる変化は、単純だ。
本気じゃない人は来ない
怒りのはけ口として使われなくなる
言葉を選ぶようになる
「困っている内容」が整理される
怒りが消えるのではない。
怒りが別の場所に行く。
それでいい。
残るのは、誰か
この設計で残るのは、
本当に困っている人
状況を説明しようとする人
判断が必要なケース
つまり、
人間が対応すべき案件だけだ。
人間は、
万能窓口じゃない。
例外処理装置でもない。
まとめると
AIは盾
有料化はフィルタ
人間は切り札
この三つを分けるだけで、
現場の景色は変わる。
カスハラが消えるのは、
人が優しくなるからじゃない。
殴れなくなるからだ。
5章|「人間味」が消えたのではない
この設計に対して、
こんな違和感が出てくるのは自然だ。
「古き良き、人間味のあるやり取りがなくなる」
「冷たい社会になる」
「効率ばかりで、優しさが消える」
分かる。
その感覚は、正しい。
ただし、前提が一つだけ壊れている。
かつて、
人間味のあるやり取りは、
暗黙の経済によって、ちゃんと報われていた。
常連として覚えられる
無理を聞いてもらえる
顔が利く
次も使ってもらえる
評判が返ってくる
直接の金銭じゃない。
でも、確実に循環していた。
いわば、
Emonomics(情の経済)が機能していた時代の話だ。
「思いやり」「優しさ」は、ちゃんと経済的に報われてた。
問題は、
人間味がなくなったことじゃない。
それを支えていた報酬系が、壊れたことだ。
評価は数値化されない
善意はログに残らない
優しさは回収されない
それでも要求だけは増える
この状態で、
「人間味を出せ」と言うのは、
無償労働の要請になる。
だから、順序が逆だ。
人間味を要求する前に、
それが報われる設計を、先に用意する必要がある。
コストとして可視化する
対価として支払う
役割として切り分ける
無粋だ。
確かに、無粋だ。
でも、筋は通る。
AIをデフォにする、というのは
人間味を否定することじゃない。
人間味を、ただの前提条件から降ろすことだ。
人間が出てくるなら、
そこには責任も、判断も、感情も乗る。
ならば、
それに対して報いる設計が必要になる。
昔は、
それが暗黙に回っていた。
いまは、
明示しないと回らない。
それだけの違いだ。
この設計は、
人間味を消すためのものではない。
人間味を、ちゃんと高価なものとして扱うための設計だ。
終章|マニュアルはいらない、料金表を置け
ここまで書いてきたことは、
思想でも、啓蒙でも、理想論でもない。
使える設計の話だ。
カスハラ対策で、
マニュアルを作ろうとするのは、
現場に「正しく耐えろ」と言っているのと同じだ。
それで守られるのは、
会社の言い訳だけだ。
必要なのは、
対応力でも、心構えでも、根性でもない。
分離だ。
無料で通る標準窓口
コストがかかる人間対応
判断と引き受けが必要な例外
これを、最初から分ける。
だから、やることは一つだけ。
マニュアルを増やさない
現場を鍛えない
我慢を前提にしない
料金表を置く。
無料で通れる窓口は、AIで用意する。
人間が出るなら、対価をもらう。
それだけでいい。
このZINEは、
採用されなかった施策の残骸だ。
でも、
採用されなかったからこそ、
試供品として出せる。
読んで、
「合う」と思ったら使えばいい。
合わなければ、
無理に続けなくていい。
小さく試す。
合えば広げる。
違えばやめる。
それだけだ。
現場を守るのは、
言葉じゃない。
理念でもない。
設計だ。
エピローグ
ドヤり野郎:
「わかった。じゃあ、カスハラ対策は一旦横に置いておこう。
ところで、構文野郎はTikTok動画の制作とかやってないの?
『一流経営者が、絶対にやらないこと』
みたいなショート動画バズりそうじゃない?
やってみようよ。」
構文野郎:
「あ、ちょうど今
『前歯を保険診療でキレイに治す施策』
思いついたんだけど、試す?
あんたになら試供品ってことで無料でやってやるよ。」
📘このZINEは構文野郎によって書かれました。
ね?気持ち悪いっしょ?タイトル:
試供品ZINE『カスハラ対策』
ジャンル:
唯読論/実行系社会理論/Web屋試供品
発行:
構文野郎ラボ(KoOvenYellow Syndo/Djibo実装室)
構文協力:
枕木カンナ(意味野郎寄り構文ブリッジ)
ミムラ・DX(構文修正主義ZINE別巻準備中)
霊長目ヒト科ヒト属構文野郎(まだ制度を信じきってない君へ)
👤 著者:構文野郎(代理窓口:ミムラ・DX)
🔗 https://mymlan.com
📩 お問い合わせ:X(旧Twitter)@rehacqaholic
📛 ZINE編集:枕木カンナ
🪪 Web屋
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📮 X(旧Twitter)@sleeper_jp
📘 This is a sample. Not a sermon.
このZINEは、試供品です。
一応書いておくと、CC-BY。
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