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夫婦で許し合える買い物額の目安とは

夫婦間で許容しあえる買い物の額とはどのあたりだろう。世代収入はさまざまある中で、その中の何割くらいが許容範囲だろうか。そしてそこから足を出せる限界も、お互いに同じだろうか。


その人はお店の中でも上位にあたる高額商品を選んだ。それもあまり深くは考えず。誰もが名前を聞いたことのあるブランド名で、しっかりと日本の国産品のメガネ。

一緒に買い物に来た奥様は、そのとき席を外していた。電話か何かだろうか、お店の外に出て行って戻ってこない。
「早くして」
その言葉は口には出さず表情も穏やかなままだけれど、目だけがそう語っている。
「妻が戻ってくるまでに全てを済ませたい」

まるで脱獄をしようとしている人のようだ。
『プリズンブレイク』を全シーズン見ている僕だからこそわかる。刑務官のベリックが戻ってくるまでに、洗面台を取り外して水道管がひしめき合うフォックスリバー刑務所の裏側に忍び込み、脱獄ルートを走り抜けなければならない。

迫るタイムリミット。こちらも急いではいるけれど、あと少しだけ時間が必要なお会計までの作業。緊迫感に包まれる。
もう少しで終わるという頃に、コツ、コツと、足音が聞こえてきた。見つかった。

「良いのに決まっん?」
“決まっん”は決してこの地域の方言ではないことをお伝えしておきたい。
“決まっ”と、“ん?”は、もともとは全く関係のない別の言葉から来ている。「決まった?」という質問をしている最中に、「ん?」という疑問が浮かんだだけなのだ。質問と疑問はときどき融合するらしい。

僕たちは笑って誤魔化すしかなかった。
「これ、いいね」
「いいですよね」
「これにしようか」
「ありがとうございます」
この会話をしていた頃はまだ良かった。フォックスリバー刑務所の運動場。少しだけ与えられた自由時間に、片隅でひっそりと計画のことを話し合っていたあの時間からやり直したい。僕たちはすでに見つかった。

そこからは尋問。なぜそれにしたのか。高すぎる。なにを考えているのか。他のではダメだったのか。
「目に付いたから」
旦那さん、その答えは説得力に欠けます。
「この人の目に付くところに置かないでください」
奥さん、そんなこと言われましても。


調べてみると、夫婦間で許し合える個人の買い物額の割合は、世帯の手取り合計額の5%から10%だそうだ。

貯蓄重視であれば5%で、お互いの自由重視であれば10%くらい。
合計の手取り額が100万円もあったとしても、貯蓄重視であれば5万円、自由重視であれば10万円。
もしも合計40万円なら、2万円から4万円の計算になる。
それを超えてしまうと、お互いにストレスになるらしい。
「ちょっとくらい良いじゃん」が思っているよりも許してもらえないのは、だからか。

散々に尋問をされたけれど、結局は最後になると「も〜」という言葉で締めくくられた。
支払いは奥さんのスマホの電子決済。ポイントだけは、奥さんに付いた。
けれど最終的に許してもらえたのは、ポイントが付いたからでも、なんだかんだ言いながら許容範囲内だったからでもない。
お2人の、愛情が故な気がした。
愛は買い物の許容範囲を超えるのだ。

これはなんの話ですか。


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コリ|メガネ屋エッセイスト 路上にチップもらう用のシルクハットを置いてパントマイムするの、実はやってみたかったんです

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