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【創作】所詮、私はしがない煙草。火が点くまでに、あなたの唇に触れられたなら

この創作はみくまゆさんの作品のスピンオフになります。よろしければ先にこちらからお読みください。

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 箱の中はいつも窮屈だ。仲間たちと肩を寄せ合い、隙間なく並べられた私たちは、ただ静かに出番を待つしかない。白い紙の体をまっすぐに保ち、いつか来るその瞬間のために、息を潜めて。

 彼の太い指が箱の蓋をめくり、私が選ばれる。その瞬間、心臓が__もし私にそんなものがあれば__激しく鼓動する。選ばれた喜び。運命の始まり。
 でも、それはまだ始まりに過ぎない。そこから先の物語ストーリーは、彼女がいなければ紡がれない。いつも彼に優しく撫でられる彼女。彼女が私の先端に火を灯してくれなければ、灰になって燃え尽きることすら許されないのだ。所詮私なんて、彼からすればそれだけの存在。

(早く。火を……。お願い、火を点けて)

 彼の唇が、私のフィルターを優しく、しかし確実に咥える。柔らかな粘膜が触れた瞬間、温かい息が私の身体を包む込む。まだ火は灯されていないのに、すでに予感だけで震えが走る。彼は軽く、けれど意図的に私の先端に歯を立てる。鋭い圧迫。私のフィルターがわずかにへこみ、かすかな痛みを覚える。それは優しさとは真逆の確かな暴力。でも、その痛みが、まるで彼に抱きしめられているようで、たまらなく、良い。

(もっと強く、私を噛んで。私の身体が千切れるくらい強く抱きしめて)

「あれ、ライターどこだっけ?」
 彼女を探す彼の声が聞こえて、私を噛んでいた力がふっと弱まる。その瞬間、火を点けられたい衝動が沸々と湧き上がる。と同時に私の胸を嫉妬が焦がす。いや、それすら焦がせないこの状況がもどかしい。
 火がなれければ、彼女がいなければ、私は彼と「ひとつ」になれない。彼女の小さな炎が、私の身体を焼き尽くすきっかけを与えてくれなければ、私は永遠に白い紙のままなのだ。

「ホントにどこやったけな?なあ、ライター知らない?」
 ふいに彼は隣りに佇む女に声をかける。
「タバコなんて後でいいから、ちょっと原稿見てよ」
 女はお団子頭を揺らしながら、彼の前に紙束を差し出す。
「……ったく。しょうがないなぁ」
 彼は咥えていた私を箱に戻すと、女から紙束を受けとる。女は満足そうな笑みを浮かべて、彼に身体を寄せた。

 彼女ライターも、煙草も。彼という世界において、ただの機能的な「物」に過ぎない。血の通った人間の女に、私たちなんかが勝てるはずもなかった。

 私はまた窮屈な箱の中でひらすら待つ。彼に選ばれるその時を。彼に愛されて吸われて燃え尽き灰になるその時を。
 ただ渇望するように待ちわびているのだ。


おしまい


🚬🚬🚬

『チャレがや企画』に参加しています。

今回のテーマは『ライター』です。
みくまゆ会長が書籍「書く人生のはじめかた 文章力より大切な“書き続ける”ための心構え」を出版されました。

こちらは書く仕事を目指す人、つまりライターの方に向けての指南書になります。こちらの出版をみくまゆ会で少しでも盛り上げることができたらと思い、『ライター』というテーマにさせていただきました。


冒頭でも申し上げた通り、今回の僕の創作は、みくまゆ会長が書かれた作品のスピンオフになります。
会長の作品がとても艶っぽくて、本当に素敵だったので触発されました。会長がライターなら、僕はタバコだ!という安易な考えで書きました。
きっと”彼目線”や”女目線”の作品を誰かが続けてくれるんじゃないかと期待しています。僕はみくまゆ会メンバーの力を信じています!
#頼んだよみんな


【チャレがや企画】はどなたでも参加できます。是非「ライター」をテーマにエッセイもしくは小説を書いてください。
たくさんのご参加待っています!


コッシー


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#みくまゆ会
#ライター
#書く人生のはじめかた文章力より大切な書き続けるための心構え

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