新年度のたびに、いい人の仮面で息が切れる
新年度の朝は、いつも少しだけ息が浅い。
肩が上がる。喉が乾く。口角だけ先に持ち上がる。
まだ誰にも会っていないのに、身体だけが先に「感じのいい自分」を作り始めている。
新しい環境、新しい人間関係。
また一から、ちゃんとした人でいなきゃいけない気がする。
でも本当は、ずっとそれが怖かった。
仲良くなることと、円滑でいることは、別の話だと気づくまでに、ずいぶん時間がかかった。
来年度に持っていきたい、ひとつのこと
今日で、今年度が終わる。
明日から、新しい環境になる人も多いと思う。
異動とか、転職とか、担当替えとか。
制服みたいに、新しい肩書きを着せられる朝が来る。
私も少し、どきどきしている。
来年度、ひとつだけ忘れないでいたいことがある。
仕事の人間関係として円滑であることと、仲良くなることは、別だということ。
頭ではわかっている。 でも私は、ずっとそこを混ぜてしまっていた。
無意識に、いつも仮面を被っていた
傍から見ると、私は人見知りしないように見えるらしい。
物怖じしないようにも見えるらしい。
数百人の前でプレゼンをしても、全然緊張していないように見える、と言われる。
でも本当は、初対面の人ひとりと話すだけでも怖い。
嫌われたくない。
感じのいい人でいたい。
親しみやすく、話しかけやすく、できれば好かれたい。
会う前から、もう身体は"感じのいい人"の姿勢になっている。
表情、振る舞い、声の出し方、全てが明るく元気な人のものだ。
仲良くなることを、急ぎすぎていた
たぶん私は、仲良くなることを急ぎすぎていた。
ちゃんと仕事ができることより先に、安心されること、受け入れられること、場に馴染むことを取りに行っていた。
でも本当は、ずっと気を張ったままなんて過ごせない。
元気な人の仮面も、親しみやすい人の"型"も、ずっとまとっていれば、そのうちボロが出るか、自分のほうが先に壊れる。
愛想よくして、空気を読んで、欲しい言葉を先回りして。
常にその場に合う自分を出していたら、どこまでが本当の自分で、どこからが作ったものなのか、わからなくなった。
仮面を脱いだら、身体の声が聞こえた
無理をしていた自覚は、当時はあまりなかった。
でも、身体が先に限界を迎えた。
仕事で身体を壊して、休職した。
仕事も、プライベートも、全部なくしたみたいな感覚だった。
そこから何がしたいか考えたけど、わからなかった。
ずっと誰かの期待に応え続けてきたから、自分の感覚がどこにあるのか、もうわからなくなっていた。
わかったのは、ただ一つ。
仮面を被り続けることに、心も身体も疲れ果てている、ということだけだった。
こうあるべき、を手放してみた。
そうしたら、自分のことが少しずつ見えてきた。
身体の感覚に集中してみると、気づいたことがあった。
初対面の人と会う時、大勢の前に立つ時、私はハイテンションになっているだけじゃなかった。
全身に、ぎゅっと力が入っていた。
人と会うのが好きだと思っていた。
でも本当は、奮い立たせて、楽しいと思い込ませていただけだったのかもしれない。
認めた瞬間、少し、肩が下がった気がした。
こわがりでも、仕事はできる
私はこわがりだ。
会議の前は今でも少し呼吸が浅くなるし、初対面の人の前では言葉を選びすぎる。
仲良くなれなかったらどうしよう、とすぐ思う。
でもそれでも、仕事はできるはずだ。
仮面を被らなくても、必要な挨拶はできる。
丁寧に話すこともできる。
約束を守ることも、相手を尊重することもできる。
だから、頑張ることをやめることにした。
頑張らないとできないことは、続かない。
力まずにいられる自分で、できることを増やしていく。
円滑であることと、仲良くなることは、別だ。
この線を、来年度は忘れたくない。
それでも、怖い朝は来る
上手くやってるように見せるのは、得意だった。
でもそんな私だって、本当は笑うのがしんどい日がある。
不安で眠れない夜がある。
月曜日が来るのが嫌すぎて、日曜の夜に泣くこともある。
だから、うまく笑えない朝があってもいいと思うことにした。
馴染めるか不安で泣きそうでも、それでいいと思うことにした。
仲良くなることを目標にしなくていい。
まずは、自分が壊れないことを優先する。
息を止めないこと。
無理な仮面を被らないこと。
怖い自分を、置いていかないこと。
少し不器用なままでも、春はちゃんと始められる。
生身の私で、生き直す春
来年度の私は、自分が自然体で生きることを、何より大事にする。
みんなと無理に仲良くならなくていい。
最初から、好かれなくてもいい。
感じのいい人を演じきれなくても、それで仕事が全部だめになるわけじゃない。
少し不器用でも、少し静かでも、少し距離があっても、翌日またちゃんと仕事に行ける。 その積み重ねで、十分働いていける。
明日からの私は、いい人を完璧にやるためじゃなく、ちゃんと自分のままで働くために、新年度を始めたいと思う。
1年後の春には、もっと息を深く吸える私になっていたい。
それが今年の、小さな決意。
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