🏰03.何もわからない日
この回は、屋敷を離れたお嬢様が
街で初めてひとり暮らしをするお話です。
屋敷を出て、間もない頃のことだった。
午後の光が細い路地を照らす頃、古い建物の一室は、届いた荷物と段ボールで足の踏み場もない状態になっていた。
かつて広い屋敷で暮らしていたカレンにとって、この空間はあまりにも違う。
荷解きに時間がかかり、すべてを出した頃には、どこに何があるのか分からなくなっていた。
紅茶を淹れようとしても、カップが見つからない。ようやく見つけたと思えば、今度はポットが見当たらない。
結局、紅茶は諦めた。
「……こんなこと、毎日自分でやるんですの?」
腰を下ろす場所すらなく、ベッドの上の荷物を少しずらして座る。
お腹は減っていたが料理はできず、仕方なく外へ出て、パンを一つ買って戻った。
小さな部屋は静かで、屋敷のように人の気配もない。窓の外を行き交う足音だけが、街の暮らしを教えてくれる。
その音を聞きながら、しばらく何もせずに座っていた。
散らかった荷物は一向に減らない。
夕日が沈むころになっても、部屋の様子はほとんど変わらなかった。
ただ、疲れだけが残り、部屋は何ひとつ整わないままだった。
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