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🏰07.屋敷を出たお嬢様の再会

長く続いた一人の夜に、ようやく終わりの気配が訪れたようです。

カレンは、まだ整いきらない呼吸を落ち着かせるように椅子に座った。

涙の跡は乾ききってはいない。けれど、その重さはさっきまでとは違っていた。
向かいに、テキパキとシレットがいる。

胸の奥で固まっていたものが、少しずつ溶けていく。言葉にならない安心感がそこにはあった。

「……なんだか、不思議ですわね」

ぽつりと呟く。

「さっきまで、あんなに動けなかったのに……
今は、だいぶ平気ですわ」

テキパキがにこりと笑う。
「それで十分ですよ。こうして話せていますし」

シレットも続ける。
「一人だとそうなりがちです」

カレンはその言葉を、ゆっくり受け取る。

「……ええ。そうね」

静かな時間が流れる。

テキパキがそっと声をかける。

「お腹、空いてません?」

カレンは少し恥ずかしそうに、小さくうなずいた。

「ここ数日、食事が喉を通らなかったのに、急にお腹が空いてきましたわ」

「それはいいことですね!
では、久しぶりに腕を振るいましょう!」

軽やかな足取りでキッチンへ向かう。
包丁の音が、控えめに響きはじめる。

「誰かに作ってもらうのは久しぶりですわ」
そう言ってテキパキの隣に立つ。

テキパキは慣れた手つきで簡単な一品を作っていく。

「まぁ。やっぱり上手ですわね」

その間に、シレットは静かに動く。
床の物を一つずつ拾い上げていく。

やがて香ばしい匂いが広がり、
テキパキが声を出した。

「できましたよー。シレットも一旦休憩して…」

「もう終わっています」

振り返ると、床にあったものはすべて消え、
テーブルは輝きを放っている。

「え……」
「これ……わたくしの部屋ですの……?」

カレンは思わず目を疑った。

シレットは静かに一言。

「使用頻度別に整理しています」

一瞬の間の後、カレンは吹き出した。

「流石シレットですわ。変わってないのね」

目元を拭いながら、笑うその顔に色が戻っていく。

「いつも通りです」

「……こんなに笑ったのはいつぶりかしら。
こうやって誰かと食卓を囲むのも、本当に久しぶり」

カレンはカップを両手で包んだ。

「……温かいですわ」

テキパキが嬉しそうに微笑む。
シレットは何も言わず、静かに頷いた。

その夜。
窓の外では丸い月が静かに街を照らしていた。

「……テキパキ、シレット。本当にありがとう」

ひとすじの涙が頬を伝う。それは悲しみではなく、安心を思い出した証の涙。

──ひとりの夜は、まだ終わってはいない。
けれど、もう昨日までと同じではなかった。

月だけが、静かにその安らぎを見守っていた。


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