ブルースへの旅──魂の原点を探す音の記憶
記憶の針を落とす Vol.3
私の音楽の入り口には、いつもBluesがあった。
音楽の沼に嵌まったきっかけであり、いまだに抜け出ていない。
今回は、この Blues についての話しをする。
現代音楽の源流となるBlues
Blues とは、音楽形式の一種だ。
起源は中世にアメリカ大陸へ連れてこられた黒人達が、奴隷労働の合間に奏でた音楽にさかのぼる。
基本的な形式としては、12小節で1周するコード進行。
キー音(1度)に対し3度と5度の3コード。
音階はブルーノートスケールなど、専門用語での解説はいくらでもあるが、
これらは興味があれば Wikipedia などで調べてほしい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブルース
重要なのは、Blues は現代の音楽のベースになっているということ。
そして、私にとっては「最初に触れた生々しい音」だった。
それまでの「ヨーロッパの白人達の音楽(クラシック音楽)」と現代の「ロックやポップス」などの音楽形式が違うことは理解できると思う。
南北戦争の後、奴隷解放宣言を受けた黒人達は、自由を手に入れたとはいえ、財産が無い。つまり今までの主人の下で小作人として働くことしか出来なかった。そこで僅かながらも給料をもらうようになる。
やがて、毎日の重労働を癒やす場所として酒場が出来る。
ジュークジョイントと呼ばれる掘っ立て小屋の様な安酒場だ。

酒場には音楽が必要で、今のような音響機材の無い時代、酒場の片隅で生演奏をするミュージシャンが生まれる。
そのうち、評判を呼ぶミュージシャンも現れる。
人気のあるミュージシャンは、音楽だけで食べていこうと、ギターを片手に各地を演奏して回るようになる。
今でもブルースマンにギタリストが多いのは、こうした旅回りにギターが手軽だったからだ。
この時代の代表的なミュージシャンが、ロバートジョンソン、チャーリーパットンなど。レコードが生まれたのが1920年代なので、それ以前のミュージシャンの音は残されていない。
Cross Road Blues / Robert Johnson
“悪魔と交わした契約”と語られた伝説の一曲。
Blues は、酒場で発達してきた。酒場での音楽は、ダンスを誘発する。
人々は安酒をあおり、ダンスをする事で日々のストレスを発散させた。
Blues にシャッフルビートが多いのは、ダンスミュージックとしての裏付けといえる。
そして人間は一定の刺激を受け続けると、より強いリズムを求める。
Blues も時がたつにつれ、リズムが強調されていく。
1950年代ごろ、Blues のリズムが強調されて Rhythm&Blues(R&B)が確立する。(その少し前から Jump Blues などリズムが強調された音楽もあった。)
その時代の代表的なミュージシャンが、レイチャールズ、サムクック、ジェームスブラウンなど。
What'd I Say / Ray Charles
ゴスペルの魂をクラブの熱気で包んだ、まさに R&B 誕生の瞬間とも言える曲。
やがてチャックベリーなどのミュージシャン達が、R&B の進化形として Rock’n'Roll(R&R)を生み出す。
JOHNNY B GOOD / Chuck Berry
ロックンロールを象徴する代表曲のひとつ。
エレキギター主体のスタイルを決定づけた一曲。
この頃には、エルビスプレスリーなどの白人が、ロックンロールを歌い大ヒットすることで、黒人だけの音楽では無くなってくる。
(プレスリーはデビュー当時、「黒人のように歌う白人の坊や」と呼ばれていた。)
Blue Suede Shoes / Elvis Presley

1960年代に入り、ビートルズが現れることで、その波は世界に爆発的に広がっていく。ロックンロールは、ビートルズ以降 Rock と呼ばれるようになった。
つまり Blues を起源にした音楽が、Blues→R&B→R&R→Rock と変化していく。音は、少しずつ“踊るためのもの”へと変わっていった。
(途中、いくつもの枝分かれがおきていて、R&B→Funk→Hip Hopといった流れもある。)
ロックバンドの編成は?と聞かれると、ドラム+ベース+ギター+キーボード(or ギター)と答える人が多いと思う。
この編成を初めて構成したのが、Chicago Blues のボス、マディウォーターズだった。そのため、マディは「Rockの父」と呼ばれている。
HOOCIE COOCHIE MAN / Muddy Waters
自信と色気、そして“黒人の誇り”が込められたブルースの代名詞。
ローリングストーンズの「ローリングストーン」もマディの歌から取った名前だ。
Bluesは英国経由で世界へ
40年代~50年代にかけて最盛期を迎える Blues だが、60年代にさしかかると、アメリカでは「古くさい音楽」という扱いを受けるようになる。
しかし、海を越えたイギリスの若者達が、このアメリカの古くさい音楽に飛びつく。ビートルズの生まれたリバプールが、港町だということも無関係ではない。アメリカから直輸入の音楽が届いたのはイギリスの港町だった。
60年代の中盤以降、イギリスの音楽が世界を制した。
ビートルズ、ローリングストーンズ、クリーム、WHO…。
彼らは Blues をベースに独自の音楽を作り上げ、アメリカを始めとする世界へ影響を与えていった。
少し話はそれるが、文化が広がる背景には、やはり国の勢いも関係していたのかもしれない。
60年代半から始まったベトナム戦争によって、アメリカは疲弊し、国力が下がっていたことも、イギリス勢に勢いをつかせた要因の一つだろう。
とは言っても、この時期のアメリカの音楽にも素晴らしい音がたくさんある。この話は別な機会に改めて記載する。
ビートルズは当然、日本にも影響を与える。
グループサウンズ(GS)が生まれ、次々とヒットを飛ばす。
シーサイドバウンド / ザ・タイガース
日本の若者が初めてロックの“リズムで踊った”瞬間だった。
GSブームは短かったものの、その後の日本のロックの創世に大きな影響を与えた。
今日の一曲
今日の一曲
ビートルズがアメリカを制した最初の一曲。
──Bluesの流れが、世界に届いた瞬間の音。
🎧関連記事
ブルースの流れを、もう少し先まで辿るなら。
■ Vol.20|Robert Johnson『King of Delta Blues Singers』
十字路に置き去りにされた声が、ロックの未来を決めた夜の物語。
■ Vol.28|人種の壁は、音で壊れた
ロックンロールは、黒人音楽と白人音楽が“混ざった瞬間”だった。
■ Vol.29|針を落とす前に、街が鳴っていた
ジャズは、楽譜より先に、街の中で鳴っていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この音が、どこかあなたの記憶にも響いたなら──
「スキ」や「フォロー」で教えてください。
その小さな共鳴が、次の音を紡ぐ力になります。
✒筆者関連シリーズ
前の記事: Vol.2|センチメンタル・シティ・ロマンス『歌さえあれば』
次の記事:Vol.4|The Blue Nile『Hats』
いいなと思ったら応援しよう!
共感でも、違和感でも。
何かが残ったなら、それで本望です。
サポートは次の一行のために。