観測ログ②:人生何周目なんだろう、という話
少し前の話になるが、
アメリカ副大統領の経歴が目に留まった。
はじめに気になったきっかけは、その年齢だった。
新副大統領候補、39歳。
若いんだな、と思った。
他にも、
妻と三人の子供。家族思い。イラク派兵経験あり。
その後、本を書いてベストセラー作家。
待て待て。
設定を盛っているぞ。
しかし、まだ止まらない。
貧しい家庭に生まれ、
軍隊に入り、
戦地へ行き、
超有名大学へ進み、
本を書いてベストセラー作家。
さらに、
金融業界へ入り、
政治家になり、
──39歳で副大統領。
イベントの密度がおかしくないか。
もちろん、
努力や才能は疑わない。
ただ、
それだけでは理解しきれない、
「この世界のルールを最初から知っている感」を
つい、感じずにはいられない。
最近、ゲーム実況をよく見ている。
ややこしいこと抜きに、
ぴろぴろと話す機械音声を聞き流しながら、
疲れた脳を洗っている。
特によく見るのは、
RTA。
リアルタイムアタックだ。
通常のプレイヤーが迷っている場所を、
開発側が仕掛けた難所を、
長年かき集めた知識と技術を以て、
最短距離で駆け抜ける。
壁をすり抜け、
バグを利用し、
開発側すら想定していないルートを通る。
設定盛り盛りの副大統領を見ていると、
同じような感覚を覚える。
他にも。
ドナルド・トランプ。
イーロン・マスク。
ジェフ・ベゾス。
そして、
われらがショウヘイ・オオタニ。
わたしが青春野球マンガの編集者なら、
ショウヘイ・オオタニの設定にはOKを出さないだろう。
令和のコンテンツにしては、
盛りすぎている。
創作世界さえも軽々と超えていく。
すごいの一言だ。
彼らのような傑物を見ていると、
「プレイ済みなのでは?」
とさえ、思えてくる。
もちろん比喩である。
だが。
もしも、そういう設定だったら。
J. D. Vance が設立した Narya Capital という会社の
「Narya」って、
The Lord of the Rings の、
エルフの指輪の名前から取られているらしい。
魔法アイテム!
なんだ、課金ガチ勢かい。
それなら、
そうなりますわな。
──などと、
理解の追いつかない密度の人生に、
つい物語を貼り付けたくなってしまう。
そんな自分が、
いたり、しなくもない。
この世界、β版だったらしい
この世界には上位の存在がいて、
彼らは宇宙というゲームをリリースした。
これが最近流行っている。
各プレイヤーには初期宇宙が配布されて、
それを発展させるシミュレーションゲーム。
惑星環境。
物理法則。
種族パラメータ。
その辺りを自由に設定して、
自分の宇宙を育てていく。
このジャンルではプレイヤー数が多いので、
長く続いている人気タイトルらしい。
かなり管理が面倒くさいのに、
ハマる人にはハマるようだ。
シーズン制の世界
現在はシーズン4。
はじまってからはまだ日が浅く、
今年で138億年だ。
詳しいプレイヤーの話によると、
β版時代は、
かなりバランスが悪かったらしい。
なので、
運営が直接ログインしてきて、
突然洪水を起こしたり、
隕石を落としたりしていた。
かなり強引な調整だ。
レビューがあったら、
星1が付いていた時代だと思う。
そのため、
プレイヤーたちは、
あの手この手で難局を乗り切った。
ストレージにアイテムを詰めて、
山へ退避させたり。
強引に海を割って、
領域外へ移動したり。
大型アップデートで、
「火」「言語」「鉄器」システムが導入される際も、
予告なしで適用されたもんで、
かなり炎上したらしい。
その影響もあって、
ゲーム内の一部種族には、
当時の出来事が、
「人知を超える存在」
としてデータに残ってしまっている。
いまさら取り除けないレガシー仕様だが、
運営は、
「世界観設定」
と言い張っている。
うまくできている。
その後、
シーズン3あたりで正式リリース。
ゲームバランスが安定し、
物理法則も固定化された。
プレイヤーたちは、
ようやくゲームの観察を楽しみ始める。
「なぜリンゴは落ちるのか」
「なぜ星は動くのか」
「この世界のルールはどうなっているのか」
そんなことを、
種族たち自身が考え始める様を見ながら、
今日もコミュニティで盛り上がっている。
運営は基本ノータッチで、
コミュニティを眺めながら、
システムログだけチェックしているらしい。
パッチの話
ただ、
正式リリース後も、
運営が完全にいなくなったわけではない。
定期的に、
予告なしで仕様変更が入る。
価値観。
文化。
倫理観。
「なんとなく皆が、同じ方向を向き始める」
そういう形で適用される。
時に強引な環境変化によって、
種族間のバランスが乱れてしまうことがある。
その場合に備えて、
今でも運営アカウントで、
いくらかのプレイヤーがログインしている。
どう見ても設定が盛られているこのプレイヤーは、
ゲーム世界では目立ちすぎているため、
プレイヤー間では周知の事実だ。
ただ、
ゲーム内種族たちには、
「認識補正フィルター」
のようなものが掛けられているらしい。
違和感を覚えても、
それは「現実」として処理されている。
だから、
どう見ても設定がおかしい人物が現れても、
世界はそのまま回っていく。
うまくできている。
なぜこのゲームは人気なのか
理由のひとつは、
プレイヤー自身にも、
展開が読めないことにある。
自分たちで設計した種族が、
やがてその意図を超えて動き始める。
文明を作る。
人知を超えた存在を作る。
自らのコピーを生み出そうとする。
種族たちは、
常に問い続けている。
「自分たちは次に何をするべきか」
プレイヤーたちは、
その瞬間を見るために、
延々と宇宙を回している。
設計したはずなのに、
制御できない。
その、
ままならなさが面白いのだという。
現実に戻る
──などという妄想を
もし、目の前に座っているサラリーマンが、
むむっとした表情で書いているとしたら、
どうだろう。
急に、
周囲に空席が目立っているような、
そんな焦りを、感じ始めなくもない。
隣では、
学生たちが、
寄り集まってスマホゲームをしている。
目の前には、
受験のテキストが、
ところ狭しと広げてはあるようだが。
そんな日常の現実に戻ってきた。
ただそれでも、
最近の世界を見ていると、
「ゲームっぽさ」
を感じることはある。
SNS
バズ
AI
アルゴリズム
誰かが設計したルールの上で、
わたしたちは、
最適行動を探し続けている。
冒頭の傑物たちは
スケールが違いすぎて、
肌触りを持って感じることは、私には難しい。
もし、
これがゲームなのだとしたら。
その目的は、
何なのだろうか。
人類という種族には、
いったいどんな設定が与えられているのだろうか。
プレイヤーたちは、
何を面白がって、
この種族を眺めているのだろう。
開発会社は、
いったいどこに、
このコンテンツの面白みを仕込んでいるのだろう。
生存か
競争か
繁栄か
それとも。
「なぜ」と問い続けることそのものが、
エンドコンテンツなのだろうか。
問い続けること。
これが、
人類に与えられた、
設計思想なのかもしれない。
ここまで書いていて、
ふと思う。
わたし自身、
ゲームにあまりハマったことがない。
そもそも、
ゲームって、
こういう世界観じゃないのかもしれないな。
そう考えると、
これ以上妄想を続けるよりも、
さっきからスルーしているSlackの返信に手を付ける方が、
今の自分にとっては有用な気がしてきた。
こうやって、
思考の次元を広げながら遊ぶのは、
結構たのしい。
それだけの話だ。
──まあ、
それも設計思想の一部なのかもしれないが。
本記事は創作・比喩表現を含む読み物であり、
特定の人物・政治・思想等への支持・批判を意図するものではありません。
この記事は有料設定にしていますが、本文はここまでで完結しています。
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最後の最後で第三の謎の男性現る(バグ?)
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