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生成AIと中小企業に関するOECDレポートと会計データ ー 生成AIの中小企業への普及の現在地 ー

ポイント

  • 日本の生成AI導入率は主要7カ国で最も低いが、活用企業の6割以上が人手やスキル不足解消への高い効果を実感している。

  • 日本の中小企業の生成AI導入の障壁としても、導入のスキル不足を挙げる企業が多い。

  • 業種別では生成AI導入の格差が拡大しており、会計データからトレンドを捕捉できる。

近年、ビジネスや政策において「生成AI」を抜きに語ることが難しくなっています。しかし、その議論の多くは大企業や個人の活用事例に寄っており、日本経済の基盤である「中小企業」の実態については、まだわからない点が多いように感じます。

マネーフォワード総合研究所では、クラウド会計などから得られる企業財務の統計データを通して、日本の中小企業がこの新技術による環境変化の波の中でどのように変遷してきたのか、研究を進めています。

この記事では、OECDのレポートと私たちの分析結果を照らし合わせ、日本特有の傾向と業界ごとの温度差を紐解いていきます。


1. 「生成AI導入率」と「効果実感」の逆説

主要先進国と比べ、日本の生成AI導入は遅れていることを示したレポートが出ています。OECD(2025a)が日本・カナダ・ドイツ・イギリス・アイルランド・韓国・オーストリアの7カ国を対象とした調査によれば、日本の中小企業の生成AI導入率は約23.5%にとどまり、調査対象国の中で最低水準でした 。

図1/中小企業の生成AI導入率 出典:OECD(2025a) より引用

しかし、同調査の中で「生成AIは、スキル不足を補完してくれたか」という問いに対し、日本の活用企業の63.3%が肯定的な回答を寄せています 。これは調査対象の7カ国の中で突出して高い数字です 。

図2/生成AIによる人手不足・スキル不足の補完効果実感 出典:OECD(2025a) より引用

日本の導入は現時点では遅れているものの、いざ導入した現場における「人手不足の補完」という切実な課題に対する効果実感は、他国以上に強く示唆されています 。

2. 普及の障壁はスキル不足

なぜ、これほど効果を感じる技術の普及が遅れているのでしょうか。OECDの調査結果からその輪郭は見えてきます。生成AIを利用していない中小企業に対して、利用の障壁について尋ねた設問では、日本は利用のスキル不足を回答する割合が突出しています(OECD, 2025a)。

図3/日本の中小企業の生成AI利用の障壁 出典:OECD(2025c) より引用

日本は、生成AIを導入するとスキル不足を補完できる効果を大きく感じる傾向がある一方で、導入に至らない企業では、生成AIを導入するためのスキル不足を強く感じているという、特有の傾向が見て取れます。

3. 会計データが捉えた「業界ごとの反応速度」

こうした導入の障壁は、業種別の導入状況にも色濃く反映されています。世界的にIT産業や専門サービス業での普及が先行しており、業種ごとの業務特性が導入のスピードを左右していることが示されています(OpenAI, 2025; OECD, 2025b) 。
こうした傾向は国内の会計データからも鮮明に現れています 。以下は、私たちが独立行政法人経済産業研究所(RIETI)のコラムおよびディスカッション・ペーパーにて公開した、業種別のAI導入トレンドです 。

図4/業種別生成AI導入率(2022年1月〜2025年6月, 約76,000社)出典:小西・久保(2025, 2026) より引用

このグラフからは、業種によって反応の仕方が明確に異なることが示唆されています。
2023年3月のGPT-4リリース直後から、情報通信業の導入率は垂直立ち上がりに近い急激な変化を見せました 。一方で、建設業、運輸業、医療・福祉などは導入率が相対的に緩やかです 。この普及曲線の扇状の広がりを見ると、業種間の差異は時間の経過とともに拡大しつつあるようにも見えます 。

4. おわりに:

日本の中小企業におけるAI普及の現況において、人的資本への投資が重要な要素であることは読み取れますが、それだけではないことも示唆されています 。
業種によって反応速度が大きく異なるという事実は、一律の支援策ではなく、それぞれの現場の業務特性に合わせたアプローチが必要であることを物語っています。私たちマネーフォワード総合研究所では、今後もこうした会計データという客観的なデータを通して、中小企業の現在地を正しく捉え、発信していきます。


脚注

  1. OECD (2025a)で示されたアンケート調査。2024年10月〜12月に7カ国(日本、ドイツ、英国等)の中小企業5,232社を対象に実施。

  2. 株式会社マネーフォワードのデータは関係法令や利用規約に即して厳正に取り扱い、個人情報を含まない統計データに加工している。「情報セキュリティ・個人情報保護に関する考え方」:https://corp.moneyforward.com/aboutus/governance/information_security/

参照文献

参考
マネーフォワードクラウド会計のデータの特性については、こちらの記事の中で触れています。https://note.com/kubot7/n/n2bb952f90a20?magazine_key=m932b0b5c06c8

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