発達障害にビタミンは効く?~ASD・ADHDと栄養について最新研究から考える~
「発達障害の子どもに、何かできることはありませんか?」
児童精神科外来では、このような質問を受けることがあります。
「子どもの成長を少しでも支えたい」「家庭でできることを探したい」という保護者の思いは非常によく分かります。
以前に脳の発達に様々な栄養素が不足することなく摂取することが大切、という記事をまとめました。
今回は、発達障害の子どもに対して、栄養やビタミン補充がどのような影響を与えるのかについて、最新の研究をもとに解説します。
ただ、わたしはこういった記事を書くときに注意して欲しいことがあります。
「とにかく与えれば与えるほど良い」と考えたり、「そんなこといっても、子どもにたくさんあげたら過剰になるはず」と恐れすぎることです。
適正な量というものがあります。
また、栄養だけで劇的な変化は難しいのも事実です。
また、サプリメントは「摂れば摂るほど健康になる」というものではありません。
成人を対象とした研究でも、サプリメント利用と健康への影響は単純に判断できません。
そのことを忘れずに、記事の内容を読んでいただけると嬉しいです。
今回は、2025年に発表された、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)に対するビタミン補充の効果を調べた系統的レビュー・メタ解析について紹介します。
ビタミンは脳の働きに関係している
ビタミンというと、「体調を整えるもの」「不足すると病気になるもの」というイメージが強いかもしれません。
しかし、ビタミンは脳の発達や機能維持にも重要な役割を持っています。
例えば、
・ビタミンD
・ビタミンB群
・葉酸
・ビタミンB12
などは、神経細胞の働きや神経伝達物質の合成、炎症反応の調整などに関わっています。
脳は非常に多くのエネルギーを必要とする臓器です。その発達には適切な栄養素がきちんと供給されることが重要になります。
ASD・ADHDへのビタミン補充を調べた最新研究
これまで、ビタミン補充がASDやADHDの症状にどの程度影響するのかについては、研究結果が一致していませんでした。
今回紹介する研究では、過去に行われた複数の研究をまとめる「系統的レビュー・メタ解析」という方法を用いて、ビタミン補充がASDやADHDの症状に与える影響を検討しています。
その結果、ビタミン補充はADHDの症状改善と関連しており、ASDではビタミンB群の補充に限って、症状改善がみられる可能性が示されました。
ただし、これはビタミンによって発達障害を治すという主張ではありません。
今回の研究では、ASD全体ではビタミン補充による効果は統計的に明らかではなく、ビタミンB群に限って効果が認められました。
一方、ADHDではビタミン補充全体で効果が認められ、特にビタミンDで効果が大きくみられました。

ASDではビタミンB群が注目された
ASDについての研究を検討した結果、ビタミンB群の補充によって症状改善がみられる可能性があると指摘されました。
ビタミンB群は、神経伝達物質の合成やエネルギー代謝など、脳の働きに関わる重要な栄養素です。
特に葉酸やビタミンB12は、神経発達に関係するさまざまな生体反応に関与しています。
ASDの子どもでは、偏食が強いケースも少なくありません。食べられる食品が限られていることで、特定の栄養素が不足する可能性があります。
そのため、食事内容を確認し、不足している栄養素がないかを考えることは大切です。
ADHDではビタミンDが注目された
ADHDについては、ビタミンD補充によって、不注意、多動性、衝動性などの症状改善がみられる可能性が報告されました。
ビタミンDは、骨の健康に関わる栄養素として知られていますが、近年では脳機能との関連も注目されています。
脳内では、神経細胞の成長や炎症反応の調整などに関わることが分かっています。
ビタミンDは食事だけでなく、日光を浴びることで体内でも作られます。ただし、必要量は年齢や季節、生活環境などによって異なります。
ビタミンを摂れば発達障害は治るのか?
改めて注意が必要なのは、
「ビタミンを飲めば発達障害が改善する」
という意味ではないということです。
今回の研究では、ビタミン補充による一定の効果が示されましたが、効果の大きさは限定的です。
ASDやADHDは、遺伝的要因を中心に、脳の発達過程に複数の要因が関係して生じるものです。
栄養だけで改善するものではありません。
療育、環境調整、必要に応じた薬物療法など、現在有効性が確認されている支援を継続することが大切です。
また、サプリメントについても、必要以上に摂取すればよいわけではありません。
不足している栄養素を補うという考え方が基本になります。
子どもの脳発達のために大切なこと
今回の研究から分かることは、「ビタミンが発達障害を治す」ということではありません。
大切なのは、子どもの脳が十分に発達できる環境を整えることです。
そのためには、
・バランスの良い食事
・十分な睡眠
・適度な運動
・子どもに合った療育や支援
といった基本的な生活習慣を整えることが重要です。
栄養は、その大事な要素の一つです。
子どもの発達に悩んだとき、「何か特別なものを足す」ことだけではなく、日々の生活を見直すことも大切です。
食事、睡眠、遊び、人との関わりといった積み重ねが、子どもの成長を支える大切な土台になります。
ビタミン以外も含め、脳の発達に重要な栄養素など、まとめた記事も過去に書いています。脳の発達を支える栄養については、以前の記事でも詳しく解説しています。
好き嫌いに悩む保護者の方は医師や栄養士に相談するなど、栄養の偏りにどう対応するか一緒に考えてもらうこともおすすめです。

参考文献
Shen Y, Xie Y, Zheng Y, Zheng Y, Liu Y. Vitamin Interventions in ASD and ADHD: Systematic Review and Meta-Analysis. Neuropsychiatr Dis Treat. 2025;21:1845-1855. doi:10.2147/NDT.S553063.
Kennedy DO. B Vitamins and the Brain: Mechanisms, Dose and Efficacy—A Review. Nutrients. 2016;8(2):68. doi:10.3390/nu8020068.
National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Vitamin D—Health Professional Fact Sheet. Updated June 27, 2025.
