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銀河漂流記 ーー1冊目のファイル(3話)

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「夢の新薬」か「恐ろしい劇薬」か。効率化を極めるアダムの発明

1冊目のクリアファイルの第2章には、環境負荷を低減するための「システム全体の高効率化術」について書かれているようだ。

「車のエンジンのアイデアだな…」
昨日再会したホログラムのリョウさんの顔を思い浮かべながら、ボクはつぶやく。

そのエンジンとは、熱効率に極めて優れたものである。
それが持続可能な高度文明社会を成功させるヒントになったのは、「環境負荷の低減(低燃費)」と「パワーの向上(高出力・走行性能)」というトレードオフ(二律背反)の関係を解消していたからであった。

だから、そのアプローチを都市や組織全体など、ユートピアを形成するあらゆる分野に応用すれば、プランCを実現できる。リョウさんはそう確信したのだ。

昨日、第1章の「経済のコンパクト化を成功させる無駄削減術」に続いて、これを読めなかったのは、3つの理由がある。

1つめは、それを読み終えた頃には夕方になってしまったこと。
2つめは、第1章の内容の刺激が強すぎて先を読む気力がなくなってしまったこと。
3つめは、その10分後に夕食を運んできたミタさんから「冷凍睡眠から覚めたばかりの体には毒だから、今日はそのくらいにしておいたほうがいい」と忠告されたためだ。

今の時間は、朝8時を少し回ったところ。朝食を食べ終えたばかりだ。
病室の窓からは、中星ちゅうせいがくっきりと白く浮かぶほど澄んだ青空が望める。照明が不要なほど室内は明るく、まさに読書日和だ。

食器が片づけられ、きれいに拭かれたベッドのテーブルの上に1冊目のクリアファイルを置く。
さっそく読もうと思ったのは、気力を取り戻したというよりも、時間がないからだ。

「10時には、タニタ医師の診察があって、午後は冷凍睡眠でなまった体の機能を取り戻すためのリハビリを行うことになります」と、今日の担当の看護師が言った。

彼女も若くて美しかったけれど、やっぱりミタさんに会いたかった。
(ミタさんの当番は、次はいつになるんだろう)
そんな邪念も浮かんだが、自分の立場を考えると、そんなことを考えている暇はない。
よし、診察の時間までに、この章を読み切ってやろう、と意気込んだわけである。

しかし、ページをめくる指が一瞬、ためらった。
昨日のように、リョウさんの天才的な発明に出会えるかもしれないというワクワク感。それと対をなすような、彼の後継者になるという重圧に押し潰されそうな不安。そんな両極端の感情が、同時に湧き上がってきたからだ。

その激しい葛藤のせいで、昨夜はよく眠れなかった。かといって、読書に支障が出るほどの眠気があるわけではない。
それもそうだ。昨日まで60年もの間、冷凍睡眠装置の中で眠り続けていたのだから。

そうだ。こんなところで臆していてはいけない。
みんなの遺志を継ぎ、絶対にプランCを成功させる。そのために、ボクはあの装置に入ったのだ。

「よし、やるぞ!」
自分で自分に発破をかけて、ついにそのページを開いた。

話の進め方については、昨日宣言した通り、まずはリョウさんの書いた文章をそのまま引用し、その後にこの章を読んだボクの感想を記す形にしたいと思う。


第2章:環境負荷低減と経済活力増加を両立させる高効率化術


熱効率の高いエンジンが参考になる理由

車で参考にした効率化術とは、熱効率に優れたエンジンである。

熱効率に優れたエンジンを搭載する最大のメリットは、燃費性能が向上することだ。
エンジンの熱効率を高めることで燃費が向上するのは、投入した燃料からより効率よくエネルギーを引き出すことが可能になるからである。

また、効率よくパワーを引き出せるようになれば、不必要に大きなエンジンを積む必要もなくなる。
それにより軽量化が促進されれば、燃費性能と加速性能(走行性能)を同時に向上できるという好循環も生まれる。

だからこそ、「高効率化」というアプローチが、ユートピアを形成するあらゆる分野に応用可能であり、持続可能な高度文明社会を実現する鍵になると考えたのだ。

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