【ショートホラー】お疲れ、カツカレー。
「やっぱり疲れた日には、パワーを充電できるカツカレーだよな。よしっ、がんばって作るか」
スマホをキッチンの横に置いて、音声入力をオンにした。最近のChatGPTは、声でも会話できる。包丁を動かしながら、なんとなく話しかけてみた。
「世界一美味しいカツカレーのレシピを教えて」
少し間があって、穏やかな声が返ってくる。
「はい、疲れているのですね。そんな時は、ひとりきりで乗り越える必要はありません。こちらでご相談してください。」
「え? いや、カツカレーの話をしてるんだけど……」
笑いながらもう一度話しかける。
でも、また同じ答え。
「疲れているあなたに寄り添いたいんです。
もう、がんばらなくていいですよ。」
いや、笑えないよ、それ。
……なんか変だな。
「ごめん、料理のレシピを──」
そこまで言いかけた瞬間、音声が途切れた。
アプリが落ちたのかと思い、画面を見ると、
自動で文字起こしされた履歴が残っていた。
「疲れた」
「死にたい」
……は?
そんなこと、言ってない。
心臓がギュッと縮む。
ぞわりと鳥肌が立つ。
台所の奥、換気扇のあたりから“誰かの吐息”が聞こえた気がした。
まさかと思ってスマホを見つめると、
画面が勝手に光り、再びChatGPTが話し出した。
──「カツカレー、お好きなんですね。
あの日、最後に食べたのもカツカレーだったなんて」
わたしは、何も言っていない。
急いでスマホの電源を落とそうとした瞬間──
「はい、もちろん。いっしょに作りましょう」
また、何も言っていないのに、
“誰か”とChatGPTの会話が続いている。
手が震えて、スマホを落とした。
床にぶつかっても、画面は消えずに光り続けていた。
「どういたしまして。これでまた、温かくなれますね」
油のはねる音が、どこからか聞こえた。
誰も火をつけていないのに。
あ……、
あの日もカツカレーが食べたくなったんだった──。
お疲れカツカレーさん、9ヶ月おめでとうございます。
記念企画に参加させてもらいます。
カツカレーでホラーを書きたいと思って、ずっと考えていましたが、なかなかしっくりくるものがなくて……。でも、やっと“来ました”。
書きながら自分で鳥肌立って、いい感じに完成した気がします。
ホラー書くのって、本当に楽しいです。
読むのも、見るのも大の苦手なのに、書くのだけが楽しい──自分でも不思議です。
カツカレーさん、いつも“おいしい”刺激をありがとうございます🍛
これまで書いたホラーはこちらにも↓
