メイソウ免罪符【三題噺/ホラーショート】
マホにとって、月に一度の女子会は命綱だった。
服を選び、メイクを整え、笑顔を練習する──すべては「いつもの私」を保つため。
支度途中、泣き声は聞こえないふりをした。
だって、女子会は欠かせない。
彼女の幸福の証だから。
駅のコインロッカー。
冷たい鉄扉の向こうに、我が子を押し込む。
口にはガムテープ。声は漏れない。
「少しのあいだだけよ」
そう呟きながら、硬貨を差し込む手は震えていなかった。
女子会の夜は賑やかだった。
笑い声、シャンパンの泡、幸せそうに語られる日常。
──ふと、コインロッカーが脳裏に浮かぶ。
「あっ……」
けれどすぐに、リナの大きな笑い声がかき消した。
「瞑想すればいいのよ」
シャンパングラスを片手に、女子会のボス、リナが耳元で囁いた。
「瞑想してれば、なんでも罪は軽くなるの」
マホは頷いた。
罪悪感の影は泡のように弾けて、消えていった。
──そして、あの子のことなんて頭の片隅にもなかった。
帰宅途中、酔いでぐるぐる回っている頭の中で、ハッと思い出す。
「……あの子のお迎え」
いつものコインロッカーへ。
硬い扉を開け、ぐったりとしおれた小さな身体が目に入る。縫い目の隙間から綿が飛び出していた。
抱き抱えながら千鳥足で帰路につく。
泣き声は聞こえない。
灯りを落とし、教わったとおりに瞑想を始める。
呼吸を整え、心を空に──。
──コン、コン。
小さな拳で扉を叩くような音。
マホは瞑想に集中した。
コン、コン……コン、コン……。
リズムが頭の中に染み込む。
「大丈夫……瞑想してれば、罪は軽くなる……」
オギャー……オギャー……。
泣き声が混じった。
マホは震える手を組み、祈るように目を閉じる。
オギャー……オギャー……ガタガタ……。
背後で、毛糸のようにほつれた髪が揺れた。
ガムテープを貼られた口は沈黙したまま、首だけがぎこちなくこちらへねじれ、縫いつけられたボタンの目が無表情にじっとこっちを見ている。
「ほら、大丈夫よ。瞑想してれば──」
声がした。
リナの声……いや、それはマホ自身の口からだった。
──ボタンの目は、瞬きもせず、まだじっとこっちを見ていた。

ヤスさんの三題噺に久しぶりに参加させてもらいました。
やっぱり三題噺を考えるとホラーになる。
そして、それが楽しい……!!
ショートホラー?ホラーショート?
どっちが正しいのだろう??
《今週の三題噺》
1.女子会
2.コインロッカー
3.瞑想
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