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フリント『現代地政学』(3) グローバル時代の「地政学」


科学技術が発達し、
国家単位のパワーバランスだけでは捉えきれない時代に突入した今、
力を持つのは「トランスナショナルなネットワーク」である、
とフリントは述べている。

企業、サプライチェーン、データ、そして人の移動——
それらが国境を越えて交差し、世界の構造を再編成しているのである。


▶︎ 前回:『現代地政学』②


最終である今回は、
このようなネットワークの「接続性」がどのように「地政学」的な力を持ちうるのかについて、語りたい。



・科学技術の発達による変化


フリントは、
人々の「世界」に対するイメージを、従来とは変えなくてはならない、
という。


19世紀以降、
西洋では、世界を「国民国家のモザイク」として認識し、国際政治を考えてきた。

しかし、科学技術が発達し、
ヒト・モノ・カネ・情報の流通量とスピードが、従来とは比べられないほどに増大した現代では、
「トランスナショナルなネットワーク」の影響力が、かつてよりも強大になった。

古代から、ヒト・モノ・カネ・情報は移動してきた。しかし、テクノロジーの発達によって、量とスピードが増大したため、現代人は「グローバル化」を意識するようになった、とフリントはいう


このような変化から、
「銀行(金融)、企業、難民集団」や「テロリスト集団」などが、
重要な「地政学的アクター」へと変貌することが、本書で指摘されている。


つまり、これからは、

「国民国家(の動向)」+「トランスナショナルなネットワーク(の動向)」→国際政治の動向

として、考えなくてはならない、ということである。



・「現代地政学」とは、何か


フリントは、
「国家の力量」として、
「移動の管理、あるいは自らに有利なかたちで、横断するネットワークを構築する力量が問題になる」と、本書で指摘している。

そのような指摘から、
“国家は、どのように「ネットワーク」を構築しようとするのか”
を考えてみると、以下のようになるだろう。


「地政的コード」→「ネットワーク」の設計

で、ある。


フリントのいう「現代」の「地政学」とは、
地理的問題だけでなく、
「地政的コード」に基づいた「ネットワーク」の構造を分析する必要がある、ということなのである。

「ネットワーク」から、様々な「アクター」の抱くビジョンと戦略的な意思が、うかがえる


・「ネットワーク」の構造を、考えてみる


上記の指摘にそって
「地政的コード」を、「ネットワーク」の構造として考えてみると、
以下の5つの「接続性」に分類することが、考えられるだろう。


①物理的「接続性」
 インフラ=港湾・空港・鉄道・道路・電力網・通信ケーブルなど
 物流・エネルギーの流通経路
 資源の豊富さ=エネルギー・鉱物資源の自給力
 地政的要衝=他国との接続点に位置する


②経済的「接続性」
 経済力=経済的影響力の基盤
 貿易・投資の流れ
 技術力と産業構造=先端技術・製造力の集中
 サプライチェーンの中心性
 金融ネットワーク=通貨・決済システムなど


③制度的「接続性」
 同盟・条約などの締結=安全保障の枠組み・軍事的な展開能力
 国際機関への参加=国連・WTO・IMFなど
 外交ネットワーク
 法制度の互換性と信頼性


④情報的「接続性」
 通信・メディア・インターネットの流通
 ネットインフラ企業
 巨大テック企業とAI
 サイバー空間の優位性
 教育・研究・知的財産の交流


⑤文化的「接続性」
 言語(英語圏など)・宗教・価値観などの共有
 映画・音楽・文学などの文化輸出
 国家イメージ

 
①~⑤は、相互に連関し、国家の「接続性」の総合力を形成するのである。


「大国」とは単に力がある国ではなく、他国との「接続」を通じて、影響力を行使できる国である


例えば、
アメリカは、③制度・④情報・⑤文化面で、高い「接続性」を持ち、
経済・軍事と連動して、強力な影響力を行使している。最近では、①物理(北極海・宇宙)と②経済(生産面)を、さらに強化しようとしている。


そして、中国は、①物理(一帯一路・宇宙など)・②経済面での「接続性」を強化し、
③制度面と⑤文化面での影響力を(特にグローバルサウスで)強めようとする一方で、
④情報面では制約がある。


あと、トルコやシンガポールのような中堅国は、
①物理=地理的要衝性を生かして、
②経済・③制度・④情報などの「接続性」を、最大化しようとしている。


などと、各国の「ネットワーク」の構造を見ると、
それぞれの国の「戦略」が、見えてくるのである。

 

・本書の意義


 本書でフリントは、
国力は、地理的な要因や資源だけで決まるのではなく、
いかに「ネットワーク」を構築していくのか、が今後の国力を左右することを指摘している。


「接続性」は、“力の再編”を、もたらすのである。

高接続の「アクター」は、
遮断・再接続・誘導、などを通じて、他国に影響を与えることができるのだ。

「ネットワーク」は、国際秩序にも影響を与えていく


 つまり、地理的に不利であったとしても、
「接続性」を高めることで、「地政学」的な優位を獲得できる
のである。


今後、アメリカと中国の“覇権争い”が考えられるが、
両国とも“互いの「地政的コード」に基づいて、
様々な「ネットワーク」の拡張・再編・遮断などの手段を通じて競い合う”ことになるだろう、と思われる。


それと共に、
混沌とした国際情勢下での移民問題、
偏在するテロと犯罪組織の脅威、
異常気象など、
考慮に入れなくてはならない問題が山積している。


フリントは、本書で「大国」だけではなく、
様々な「アクター」が、それぞれの「地政的コード」に基づいて行動していることを指摘する。


多様な「アクター」たちの行動を理解するうえでも、
本書は大いに参考になるだろう。



→ネットワークの“接続性”が力を生み、制度や秩序を変えていく構造については、『ローマ人盛衰原因論』第5回で詳しく扱っています。



 『現代地政学』連載は、こちらにまとめています




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