④作文教室と名乗りたくない作文教室はじまる。
前回は、次男の中学受験が迫る中で友人の子どもを巻き込み作文教室を開催したところまで話しました。講師の経験すらないコピーライターが始めた作文教室とはどんな内容なのか、その実態と成果を紹介します。
「上手な作文」を目標にしないあやしい作文教室
2023年の夏から作文教室(実証実験ともいう)を始めたことは前回お話しました。
当初は中学受験対策が目的でしたが、事業化を検討する中で、作文教室の意義を改めて考えるようになりました。
試行錯誤の末に生まれたのが、以下の考え方です。
目標は「上手な作文」が書けることではない。
「作文教室」という名称には、学校の勉強のようなイメージがあり、正直なところ違和感があります。しかし、内容を伝えるために、便宜的にこの名前を使っています。
新聞記事や小説、論文、コピーなど、自ら主体的に書く文章は「作文」とは呼ばれません。私自身の偏見かもしれませんが、「作文」という言葉は、自主的な文章表現にはそぐわない気がするのです。
私が教えたいのは、単なる「作文」ではありません。洞察力、発想力、表現力、コミュニケーション力、そして内面から湧き出る言葉といった、子どもたちが生きていく上で不可欠な力です。文章を書くことは、これらの能力を育む最良の手段だと信じています。そこで、これらの力を伸ばすためのカリキュラムをゼロから考えました。
生きる土台となる力を高めるカリキュラムをつくってみた
私が考えたカリキュラムの一部を紹介します。
【10の発見】
この内容は前回のnoteで書いたので割愛します。
【これ、わかる?】
視点を変えることで物事の解釈が変わる、日本語の曖昧さや多義性を学ぶレッスン
【ゴロゴロ、ドッカーン】
言葉は一通りではなく、新しい表現をつくっても良いことを、オノマトペを題材に教えるレッスンです。
【学校まで案内してください】
自分の視点と他者の視点の違いを理解し、誰にでも伝わる表現を身につけるレッスン。(例:「右に曲がる」という指示でも、相手の向きによって解釈が変わる)
【ことばで絵を書く】
私が提唱する「ビジュアル思考」を使った文章づくりの代表的手法です。

上記の写真を説明してくださいと出題すると、多くの人は「原っぱで女の子がバットを持っています」と答える人が多いでしょう。しかし、これだけでは情景が伝わりません。そこで、ズームイン・ズームアウトという技法を使って、まるで絵を描くように表現するレッスンを行います。
<ズームインの例文>
綿をうすーく伸ばしたような雲が流れていた。
空は青く澄み、遠くに山並みが見える。
原っぱの芝生は日の光をあびて輝いていた。
少女が立っている。手には黒いバット、長い髪はツインテール、スカートを風になびかせて。
<ズームアウトの例文>
黒く光るバットをにぎる小さな手。
長い髪が風にゆれる。
少女は笑顔で原っぱのバッターボックスに立つ。
あたり一面に緑色のカーペットのような芝生が広がる。
遠くにはこの町を象徴する美しい山並みが霞んで見える。
晴れ渡った空には、綿をうすく伸ばしたような雲が流れていた。
こうした情景がイメージできる書き方を身につけるだけで伝わり方が大きく変わることを教えました。
このように洞察力や発想力に重点をおき、文章作成の技術を教えるカリキュラムを作成しました。
あやしい作文教室に参加した子どもたちの反応と成果
ゲームのように遊びながら文章を書くレッスンは予想以上の成果をあげました。
友人の子どもたちは、まるでスポンジが水を吸うように、内容をどんどん吸収していきました。会うたびに文章構成力や表現力が向上し、物語を作るレッスンでは、私が夢中になるほどの作品が生まれました。作文が苦手だった子も、お絵かきのようにスラスラと文章を書けるようになり、「作文って楽しい!」と言ってくれるようになりました。うちの次男は、書くスピードは遅いものの、「空から黒猫が降ってきた」といった奇想天外な発想をするようになりました。
しかし、順調だったのは最初だけでした。
作文教室の根本に潜んでいた大いなる矛盾が、あるときから露呈してしまったのです。
終わり

<次回予告>
目標をクリアしたのに、封印せざるを得なかった作文教室
