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コンプラゼロの異世界


本業の合間に、友人の紹介で少しだけスポットのアルバイトをすることになった時のこと。

自動車関連の小さな会社で、繁忙期の手伝いとして行った。


それまで大きな組織での勤務経験しかなかった私は、いわゆる「小さな会社」で働くのがそれが初めてだった。

だからこそ、そこに広がっていた光景に対する免疫が全くなかった。



その会社は、一言で言えば「とんでもない場所」だった。


個人情報の扱いが、とにかくめちゃくちゃ

まず驚いたのは、個人情報の扱いだ。

オフィスを見渡しても、どこにもシュレッダーがない。

管理が恐ろしく杜撰で、顧客の個人情報が載った書類を「業務用のゴミ収集に出すから大丈夫」と、そのままゴミ箱にポイポイ捨てていた。

さらに驚愕したのは「経費削減」を理由に使われていたコピーの裏紙だ。

なんと、その裏紙には別の顧客の個人情報がばっちり印刷されたままになっていた。

大企業なら一発でアウトになるようなコンプライアンス違反が、当たり前のように行われていた。


社員も店長も、やりたい放題

同じ地域に関連会社が3つほどあったのだが、そこの社員たちは平気で遅刻してくるのが当たり前。

ひどい時には、お店のトップである店長すら悪びれもせず遅刻してくる。


モラルの低さはそれだけにとどまらない。

仕事中に社員同士が殴りかかるほどの激しいケンカを始め、怒鳴りあう。

またある時は、在庫管理を全くしていなかった店長が、手元にない商品を顧客に売ってしまい、顧客を激怒させた。

どうしてよいか分からなくなった店長は、なんと仕事中にそのまま職場から逃亡した。


漫画のような話だが、すべて現実だ。


そんな地獄のような職場で、唯一まともだった男性社員がいた。

しかし、彼も早々に愛想を尽かして辞めていくことに。


その彼が、退職する間際に私に向かって残した言葉が今でも忘れられない。

「mugiさんのような人は、こんなところにいてはダメですから」

あの時の彼の切実な表情が、この会社の異常性を何より証明していた。



「ここって、本当に日本ですか?」


時給こそ良かったものの、とにかく「人」の程度が悪かった。

いや、悪いというより、彼らと話しているといつも不思議な感覚に陥っていた。

お互いに日本語を話しているはずなのに、彼らの言っていることが私には全く理解できないのだ。

感覚としては「ここって本当に日本なのだろうか?」と首を傾げたくなるようなカルチャーショックだった。


売上が悪いと、社長が営業会議と称して来た時のこと。

冒頭、社長(父親)と店長(息子)で大喧嘩を始めた。

そして、会議の最後は近くのコンビニの評価で終わるという、さっぱり理解できないものだった。



何より、出勤して「おはようございます」と挨拶をした時のこと。

店長は毎回、何も言わずに私をスルーした。

「挨拶しないんですか?」と思わず聞くと、店長は不思議そうな顔でこう答えた。


「え、それって必要なんですか?」


挨拶の必要性すら共有できない人間たちが集まる場所。

それがその会社だった。


私は短期間でそこを辞めた。

今でも時々思い出すが、あのクオリティの会社が、現代の日本で組織としてなぜ成り立っていたのか、未だに全く理解できないでいる。


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