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【怪しい人びと 新装版】東野圭吾|読了

怪しい人びとを描いた、全7編の短編集。

「寝ていた女」「もう一度コールしてくれ」「死んだら働けない」「甘いはずなのに」「灯台にて」「結婚報告」「コスタリカの雨は冷たい」が収録されている。

少し時代を感じる部分はあるけれど、どの話も読みやすく、短い中にそれぞれ異なる“怪しさ”があった。

事件や謎だけでなく、真相を知ったあとに、それまで普通に見えていた人間関係が少し嫌な方向へ変わっていく。

その読み味が、自分にはかなり好みだった。


怪しいのは、事件よりも人びと

本作で面白かったのは、タイトルどおり、怪しいものが事件だけではないところだった。

友人、知人、夫婦といった身近な関係の中に、見下しや劣等感、隠し事や歪んだ感情が潜んでいる。最初は何気ない関係に見えていても、読み進めるうちに小さな違和感が生まれ、その印象が少しずつ変わっていく。

真相が明らかになったときに残るのも、謎が解けたという満足感だけではない。

「本当は、そのような関係だったのか」

そう気づいた瞬間、それまで交わされていた会話や人物の行動まで違って見えてくる。

大きな事件の派手さよりも、人と人との関係が少し嫌な形で反転する。その後味が、この短編集の魅力だったと思う。


見下しと劣等感が残る「灯台にて」

特に印象に残った一編が、「灯台にて」。

二人の大学生が、スタートとゴールを逆にして旅をする物語で、主人公は幼馴染から長い間マウントを取られ続けている。

表面上は友人同士に見えるけれど、その間には見下しや劣等感、相手に対する複雑な感情がある。主人公が旅の途中で灯台守と出会ったことから、二人の関係は次第に嫌な方向へ変わっていく。

印象的だったのは、事件そのものよりも、その出来事によって二人の間に隠れていたものが表へ出てくるところだった。

親しいからこそ積み重なった感情があり、それがあるきっかけによって別の形を取る。

読み終えると、最初に見えていた友人関係へは戻れない。その変化に、人間の怪しさがよく表れていた。


一枚の写真から始まる「結婚報告」

「結婚報告」は、導入から強く引き込まれた。

友人から結婚報告が届いたものの、同封されていた写真に写っていたのは、友人ではない女性と、その夫だった。

整形をしたのか。

しかし、別人になるほど姿を変える理由は見当たらず、もともと友人はきれいな女性だったはず。それなら、写真の女は誰なのか。

幸せな知らせであるはずの結婚報告が、一枚の写真にある違和感だけで、一気に不穏なものへ変わっていく。

「この人は誰なのか」という分かりやすい疑問から始まり、真相へ近づくほど、写真に写る人びとの関係も別の形に見えてくる。

短い物語の中で、最初の引っかかりから結末までがコンパクトにまとまっている。その切れ味も良かった。


手軽さの中に残る嫌な感触

本作は、短編ごとに設定や雰囲気が異なり、気軽に読み進められる。

少し時代を感じる部分はあるものの、文章は追いやすく、謎も簡潔にまとまっている。短い時間で一編を読み終えられる一方、その中には東野圭吾作品らしい人間の暗さが自然に入り込んでいた。

人物たちは、最初から明らかに異常なわけではない。

普通に暮らしているように見える人が秘密を抱え、何気ない関係の奥に別の感情が隠されている。だからこそ、真相を知ったあとに残る嫌な感触にも現実味があった。

読みやすさと、人間関係に潜む怪しさ。

その二つを手軽に楽しめる短編集だった。


読後に残ったもの

『怪しい人びと 新装版』で印象に残ったのは、謎の答えよりも、答えを知ったことで変わってしまう人の見え方だった。

怪しいのは、事件だけではない。

普通に見えていた人びとと、その関係の奥に隠れていたものだった。

特に「灯台にて」と「結婚報告」が良く、東野圭吾作品らしい読みやすさと、少し嫌な後味を楽しめる一冊だった。

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