見出し画像

【鵠沼皇大神宮】天岩戸神話(あめのいわとしんわ)の神々と幻の式内社|雑念だらけの境内社参拝

神奈川県藤沢市に鎮座する「鵠沼皇大神宮」は、天岩戸神話の神々や幻の式内社を祀り、さらに相模国の伊勢神宮の荘園を守った格式高い神社です。そんな神聖な空気に浸る一方で、広い駐車場を見ては、いつもの衝動に駆られ、恵比寿様の像を見ては、ある欲望が頭をもたげてしまいました。
さらに、怒らせると一番怖い「武神」に大変なご無礼。
かつて白鳥がたくさん飛来した地で、真剣な気持ちで参拝しながらも、雑念を断ち切れなかった訪問記です。


鵠沼皇大神宮(くげぬまこうだいじんぐう)
 ※通称:烏森神社(からすもりじんじゃ)
神奈川県藤沢市鵠沼神明2-11-5/駐車場無料・トイレなし
公式ホームページ:https://www.koudaijinguu.com/


■正式名称が紛らわしいので■

この神社の正式名称は皇大神宮(こうたいじんぐう)です。
しかし、これだけだと、伊勢神宮の内宮と同じ名称になってしまうので、鵠沼皇大神宮と表記します。

藤沢市には鵠沼(くげぬま)という地名が広く見られますが、「くげ」はもともと「くぐい」と読み、白鳥のことです。

昔はこのあたりに沼や湿地がたくさんあり、そこに白鳥が飛来していたので、「くぐいぬま」が転化して「くげぬま」となりました。

白鳥といえば、日本神話の英雄ヤマトタケルが死後、白鳥になって飛んでいったという伝説が思い出されます。
御祭神にヤマトタケルが含まれていないのが残念です。

ヤマトタケルの体から飛び立つ、白鳥となった魂。

などということを、このあたりに住んでいた昔に人は知らなかったと思います。
昔は、白鳥も食材だったので、このあたりの方々も、こっそりと獲って食べていたかもしれません。
生きるのに必死な時代は神話より食欲です。

■出迎えられている気になる参道■

一の鳥居の横に道陸神(どうろくじん)の石碑が立っています。
これは道祖神(どうそじん)と同じ。
災厄を退けてくれる存在なので、こちらにも合掌。

鳥居の横にある道陸神。

※道祖神についての詳しい説明は以下の記事をご覧ください。

参道の両脇の玉垣には氏子さんの名前が彫られています。
これだけずらっと氏子さんの名前が並ぶと、出迎えられているような気がしてきます。

しかも、私と同じ姓の氏子さんがかなりの数いて、もしかしたら先祖がどこかで繋がっているのかもしれません。
そう思うと、ますます出迎えられている感が強くなります。
「おお、よう来たなぁ。」
と親戚のおじさんたちに語りかけられているような気分になります。
と言っても、私ももう語りかけるおじさん側の年齢ですが。

両側に、柱に氏子さんの名前が彫られた玉垣が続く。

参道を抜けると広い駐車場に出ます。

広いところを見るとダッシュしたくなる習性を持つ私は、
「うーん。縦横ともに直線でのダッシュは難しいな。
でも、一周100メートルちょっとくらいのトラックと考えれば、周回でダッシュは可能か…。」
などと、どうでもいいことを真剣に考えます。
もちろん、神社では妄想にふけっても実際には走りません。

それくらいゆったりとした駐車場だと感じていただければよいのですが。

社号票(右側)の向こう側が駐車場。三の鳥居が聳える。

■「相模国 土甘郷 総社さがみのくに とかみごう そうじゃ」って何?■

社号票の上の方には「相模国 土甘郷 総社(さがみのくに とかみごう そうじゃ)」と彫られています。

社号票。

藤沢市から茅ヶ崎市にかけては、12世紀以降、伊勢神宮の荘園しょうえん(支配領域)である、大庭御厨(おおばみくりや)となりました。

大庭御厨の中には13の郷(村ですね)があり、そのうちの一つが鵠沼郷(くげぬまごう)
土甘郷とかみごうは、鵠沼郷の一部と考えられています。
この神社周辺の昔の村名みたいなものです。

総社というのは、ざっくり言うと、
「ある地域の神社を1ヶ所に集めて祀った神社」
です。
そのため、多くの境内社があります。

■神話の天岩戸あめのいわと物語に関わった神々■

手水舎で手と口を清める。

伊勢神宮の分身のような神社なので、当然、天照皇大神(アマテラススメオオミカミ)が御祭神となります。

『古事記』では、弟のスサノオの乱行に悩んだ太陽神アマテラスは、天岩戸あめのいわとという洞窟にこもってしまいます。
太陽神がこもってしまったので、世界は真っ暗。

そのとき、アマテラスを洞窟から出すのに尽力した神々が、この神社では、アマテラスと並んで祀られています。

日本神話を知っていると、こういうときに、
「へえ、この御祭神の組み合わせは面白いな。」
と感じることができて、嬉しくなります。

また、神々のことが身近に感じられ、日々起こるちょっとした良いことが御神徳のように感じられるようになります。

「AIイラスト日本神話」など、ささやかですが、日本神話を少しでも広める一助になれれば幸いです。

拝殿。参道が曲がっている。

拝殿への参道が折れ曲がっています。
地図で確認したら、社殿は真南に向けて建っています。
この敷地で社殿を真南に向けて建てると、参道を直線にすることが難しかったのでしょう。
それだけ、神社建築の原則(社殿は南向き)を遵守したということですね。

■境内社の中に式内社がある■

本社に拝礼した後、境内社すべてに拝礼します。
まず本社のすぐとなりにある石楯尾神社(いわたておのじんじゃ)

小さいけれど、相模国の13の式内社しきないしゃのひとつに比定(「ここじゃないかな」と推定すること)されています。

小さいけれど、式内社かもしれない。

式内社の詳しい説明は、下の記事をご覧いただくとして、相模国の式内社を見てみましょう。

《相模国の式内社》太字は「神社訪問記」で投稿済みの神社。
1.寒田さむた神社(松田町)
2.川勾かわわ神社(二宮町)
3.前鳥さきとり神社(平塚市)
4.高部屋たかべや神社(伊勢原市)
5.比々多ひびた神社(伊勢原市)
6.阿夫利あふり神社(伊勢原市)
7.小野おの神社(厚木市)
8.大庭おおば神社(藤沢市)
9.深見ふかみ神社(大和市)
10.宇都母知うつもち神社(藤沢市)
11.寒川さむかわ神社(寒川町)
12.有鹿あるか神社(海老名市)
13.石楯尾いわたておの神社(※注記1参照)

※注記1:候補地が相模原市に4ヶ所、大和市、座間市、藤沢市にそれぞれ1ヶ所の合計7ヶ所ある。このような式内社の候補神社を論社(ろんしゃ)または比定社(ひていしゃ)と呼ぶ。

困ったことに石楯尾いわたてのお神社は、候補地が7ヶ所あります。
そのうちの1カ所がここ。
御祭神の石楯尾大神(イワタテオノオオカミ)も謎です。

式内社であることを示した石碑。

ちなみに比定社同士が対立していうことはありません。
もう真実がわからないことは無理に解明せずに、お互いに尊重しようというあたりにも神道のゆるやかさがあります。
いい信仰ですね、神道って。

「元祖」だの「本家」だのと揉めている店などは見習うべき姿勢ではないでしょうか?

■順番に境内社を参拝■

石楯尾神社の隣からずらっと境内社が並んでいます。
次は伊勢ノ宮(いせのみや)
日本の国土と多くの神々を産んだ伊弉諾命(イザナギノミコト)と伊弉冉尊(イザナミノミコト)が御祭神。
この中にさらに、御嶽みたけ神社、秋葉あきば神社が合祀されています。

つまり、
鵠沼皇大神宮 > 伊勢ノ宮 > 御嶽神社・秋葉神社
という、入れ子のようなイメージです。

伊勢ノ宮。

続いて、不思議なことに稲荷神社の連続。
稲荷神社(いなりじんじゃ)豊受稲荷神社(とようけいなりじんじゃ)が並んでいます。

豊受稲荷神社(左)と、稲荷神社(右)。神社での配置順に合わせた写真配置。

どちらも御祭神は宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)、いわゆる「お稲荷さん」です。
地域の神社を併せる中でこのようなことが起こったのでしょう。

きっと、ダブルお稲荷さんが仲良く地域を守ってくれていると思います。

二柱ふたはしらのお稲荷さんが仲良くして大豊作。

次は山王社(さんのうしゃ)です。
御祭神は大山祇神(オオヤマツミノカミ)の神。
私の産土神うぶすながみ(生まれた場所の最寄りの神社の御祭神)でもあるので、念入りにお参りします。

山王社。祠は小さいけれど歴史を感じる。

隣の恵比寿ノ宮(えびすのみや)では、神職のみなさんがなにか出し入れをしていました。
その様子を拝見してから拝礼。

御祭神は八重事代主神(ヤエコトシロヌシノカミ)大国主神(オオクニヌシノカミ)。息子と父ですね。

コトシロヌシは恵比寿様と同一視されることがありますから、恵比寿ノ宮なのですね。

恵比寿ノ宮。境内社で唯一開放されていた。

藤沢七福神の一座らしいです。知らなかったので調べました。

1.毘沙門天:白旗神社、龍口寺   2.大黒天:諏訪神社
3.寿老人:感応院   4.福禄寿:常光寺
5.布袋尊:養命寺   6.恵比寿:皇大神宮
7.弁財天:江島神社

毘沙門天が2カ所なので八福神なのでは? 
七福神よりパワーアップされているのかもしれません。

毘沙門天が二人いる七福神(八福神?)。

恵比寿ノ宮の中を覗くと、恵比寿様の像が鎮座していました。
手にしっかりと釣竿を持ち、鯛を抱えています。

あ、やばい!
この姿…。
そう、ヱビスビールを思い出してしまいました。
ああ、ヱビスビール飲みたい。
このままではビール欲に負けそうなので、次の境内社へ。

中にかわいい恵比寿様が鎮座。

続いて豊受ノ宮(とようけのみや)
御祭神は豊宇気毘売神(トヨウケビメノカミ)
伊勢神宮外宮の御祭神。

社名と御祭神で漢字が違うのですね。
修善寺にある修禅寺を思い出しました。

豊受ノ宮。伊勢神宮外宮と同じ御祭神。

最後に御神木にも手を合わせます。
なにやら結界が張ってある一画がありました。

謎の神域。右側に御神木。

駐車場の方に戻り、ふとイチョウの木を見上げます。
緑の葉のイチョウも、黄色い葉のイチョウもいいですが、枯れて骨格だけになったイチョウも好きです。
青々とした葉が繁る木も好きなのですが、枯れ木も好きなんですよね。
「命の本体」という感じがして。

枯れたイチョウの木。

駐車場の方に戻ると、厳島神社(いつくしまじんじゃ)があります。
広島の厳島神社と同じで、海の守護神なのでしょう。
御祭神は市杵島姫命(イチキシマヒメノミコト)
弁財天と同一視される女神ですね。

厳島神社。今後の船旅の無事や、水難からの回避を祈願。

考えてみると、皇大神宮の中だけで七福神のうち三柱みはしらの神が祀られています。
すなわち、恵比寿ノ宮の恵比寿様(=八重事代主神)、大国様(=大国主神)、厳島神社の弁天様(=市杵島姫命)。
とても福に恵まれそうな神社です。

帰宅後にホームページを見て、石ノ神社(「いしのじんじゃ」? 「いわのじんじゃ」?)を拝むのを忘れていたことに気づきました。

小さなほこらですが、ふだんなら忘れることないのに。
なぜだろう?

御祭神は経津主神(フツヌシノカミ)武甕槌神(タケミカヅチノカミ)
どちらも武神、勝負の神。
怒らせると怖い神々です。
これはまずい。

近日中に再訪して、きっちり拝みますので、どうかそれまで勝負運が落ちることなどがないようにと心の中で祈りました。

■御祭神■

天照皇大神(アマテラススメオオミカミ)
天児屋根命(アメノコヤネノミコト)
天手力男命(アメノタジカラオノミコト)
天太玉命(アメノフトタマノミコト)
天宇受売命(アメノウズメノミコト)
石凝刀売命(イシコリドメノミコト)
《合祀》
石楯尾大神(イハダテヲノオオカミ)
八幡大神(ハチマンノオオカミ)
春日大神(カスガノオオカミ)

■御朱印■

いいなと思ったら応援しよう!