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神社訪問記:東口本宮冨士浅間神社|全国的に珍しいものがいっぱい

東口本宮冨士浅間神社(ひがしぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)
静岡県駿東郡小山町須走126番地/駐車場無料・トイレあり
公式ホームページ:https://higashiguchi-fujisengenjinja.or.jp/


■名前の由来がわからない滝■

神社の前を名前の無い小さな水路があります。
そこに流れ込むのが「信しげの滝(しんしげのたき)」

信しげの滝。上の方は緑豊かな散策路になっている。

神社の境内を流れる湧水の流れの先にあります。
滝の整備がおこなわれた際、「信しげ」と書かれた石が発見されました。それが滝の名前の由来なのですが、そもそも「信しげ」とは何なのか?

富士講(富士山を信仰して登拝をめざす集団)の関係者の名前という説もあります。
富士山信仰をする行者の中には「信○」という、漢字2文字の法名を名乗る人が多かったためです。
たとえば、信重、信応、信覚、信清など。
しかし、いずれにせよ、史料が無いため真相は闇の中です。

■不二山へ入る■

太鼓橋、好きですか?
と、聞かれたことのある人はあまりいないと思います。
おそらくあなたの人生初の質問でしょう。
私は好きです。
曲面はそれほど急でなくても、コンパクトでもいいんです。
むしろ、ゆるやかな曲面と短い距離の方が、結界を超えるようなワクワク感が胸に生じます。心拍数でいうと5上がるくらいの軽い興奮です。

太鼓橋を渡り、階段を登ると鳥居。
額束がくづかには「不二山」と書かれています。

「不二山」の額束が堂々と掲げられた鳥居。

富士山信仰の世界では、正式な書き方のひとつとして非常に古くから使われてきている、伝統的な表記です。
「二つとい山(唯一無二の山)」という意味の最高の敬称でもあります。

鳥居の前に、富士山噴火の際に空に巻き上げられ、地面に落ちて固まった巨大な火山弾が安置されています。
右側のギョウザのような形をした火山弾が重さ1トン。
左側のまんじゅうのような形をした火山弾が重さ250キログラム。

それにしても、氏子さんはなぜこの火山弾を所有していたのか? 経緯が気になる。

これだけの規模のものは大変貴重です。氏子さんが奉納したもの。
富士山の噴火の怖さを伝えるものでもあります。
まだ数千度という温度の、こんな固まりが飛んできて直撃されたら一発アウトです。

■不撓不屈の御神木■

鳥居をくぐると、すぐ右側に奉雷の杉(ほうらいのすぎ)があります。
もっとも新しい伝説を持つ御神木といってもいいでしょう。

奉雷の杉。落雷でもほとんどダメージを受けなかった。

樹齢は350年ほどです。
1707年の富士山の宝永噴火の被害を受けた、この神社ではもっとも古い木のひとつです。

2018年(平成30年)のこと。
この木に雷が落ちました。そのため、神社や地域に落雷が無かったと信じられました。
しかも落雷にも関わらずほとんど枯れていませんでした。
そこで、こう考えられたのです。

雷に対抗したのではない。
雷の力をたてまつり、それにしたがった。
雷の力を和らげつつ、その力と協力したのだ。
したがって、この杉には木の力と雷の力が宿っている。

こうして奉雷の杉と名付けられ、木と雷の力にあやかろうとする信仰者が増えました。
富士山の宝永噴火と落雷の二つを経ても、しっかりと立っている木です。
不撓不屈ふとうふくつの精神の象徴のようです。

もしかしたら、噴火の際に富士山の火のパワーも宿しているかもしれません。
木の特性に、火の特性と雷の特性が加わったということですね。
なんかファンタジーの世界ではすごく強そうです。

■今なら幼児虐待と言われそうな富士塚の狛犬■

神門の左右に富士塚狛犬があります。
富士塚とは文字通り、富士山を模した塚のことです。
江戸時代などに各地に作られ、中には登れるものもあります。

静岡県富士山世界遺産センターの3階のベランダにある富士塚。高さ1メートルくらい。登れる。

この神社の狛犬は富士塚を模した岩の上にいます。
狛犬がこのような形状なのは全国でも大変珍しいです。
子供を抱いて可愛がっているような狛犬はよく見かけますが。

この狛犬のテーマは「獅子の子落とし」
獅子は、我が子を強くするために千尋の谷(せんじんのたに)に突き落とし、這い上がってきた子だけを育てるという物語。

千尋というのは文字通りには1.5キロメートルですが、そんな谷に突き落とされたら、みんな即死です。比喩的に「深い谷」という意味です。

千尋の谷に突き落とされた子獅子が必死で上がってくる様子を表現。

もともとは、比喩としての仏教説話です。
子供を強く立派に育てるには、厳しい試練を与えた方がよいという教訓。
まあ、子供を甘やかすなというところでしょうか?

この説話、解釈によっては幼児虐待になりかねません。
現代では、あまり厳しくしすぎるのも、子育てには逆効果だとされています。まちがっても、お子さんをどこかから落としたりしないように。

この像が作られたのは1932年(昭和7年)ですから、完全に神仏分離で神道と仏教が分けられた後です。
しかし、今でも仏教と神道はお互いに影響を与え合っているのですね。

■ようやく神門をくぐって拝殿へ■

太鼓橋を渡ってから、いろいろなものに触れてきています。
ようやく神門へ。

神門、または随身門(ずいしんもん)。

神門の左右の網目から中を覗くと、かわいい富士山の模型が置かれています。子供が紙粘土で作った工作のような味わいから、素朴な信仰心が滲み出ます。

網網越しに模型を見る。
稚拙な感じの造形が逆に素朴な信仰を強く表す。

緑の深い、ゆったりとした参道を歩きます。
途中で左側の長寿亀石(ちょうじゅかめいし)を撫でます。
氏子さんの家の建築工事中に地面の中から見つかりました。
亀の甲羅みたいで大変な縁起物ということで奉納されたとのこと。
鉄鉱石みたいですね。
この神社の縁起物は触っていいんだかどうだかわかりません。
特に「触らないでください」という注意書きもないので、さっきからいろいろなものを触りまくっています。
この亀石もなでなで。でも、そんなに長生きしたいわけでもないな…。

大きな岩の上に亀石が乗る。
参道と拝殿。参道の左に休憩所、右に神馬舎や神輿庫が並ぶ。

拝殿・本殿の後ろは少し高くなっています。
これは、1707年の富士山の宝永噴火の名残。
実は、NHKの「ブラタモリ」の富士山の回を見て知りました。

本殿の後ろの方が高くなっている。

富士山の噴火で東口本宮冨士浅間大社は完全に火山灰に埋もれてしまいました。
噴火がおさまった後、地元の住民が協力して神社を掘り起こし、取り除いた火山灰を本殿の後ろに積み上げたとのこと。
それが本殿の後ろ側の高くなっている部分。

神社は周囲より少し高いところに位置していることが多いです。
しかし、この神社は住民の力で噴火の被害を乗り越えたために、少し低いところにあります。

■木の根っこをくぐ…らなかった■

拝殿の左手に、上り坂になった小道があります。
その先にあるのが、根上がりモミ

拝殿と、裏鳥居に続く小道。

このもみの木の根元にはもともとは火山灰性の土が積もっていたようです。
それが雨で徐々に削られ、約100年経ったら、根っこが浮いたというわけです。そして根と根の間がトンネル状になったために、くぐれるようになりました。さらに隣接するブナ、カシの木と根が複雑に絡み合っています。

これまた全国的に大変珍しいもので、学術的な価値が高いそうです。小山町の指定文化財(天然記念物)にもなっています。
珍しいものが多いですね、この神社。

根上りモミ。根の間をくぐると、縁結びにいいとされる。

根の間をくぐると良縁に恵まれるとのこと。
しかし、おっさんに今さら良縁も何もないので、ここはくぐらずに済ませます。

それにしても、根上りモミというネーミング。
このご時世、「値上がり」をイメージしてしまいます。
今なら縁結びより、
「このモミの幹を上から下に押さえつけるように力をこめると、値上がりが抑えられる」
とかアピールした方がいいような気もします。

根上りモミから、駐車場へ抜けました。
朝から天候に恵まれなかったのですが、雲の合間から富士山が少しだけ姿を覗かせてくれました。
この日、初めて見る富士山でした。ありがとう、木花咲耶姫。

神社の駐車場より。朝から天気が悪かったが、最後に富士山が姿を見せてくれた。
駐車場側の裏鳥居。

■御祭神■

木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)
大己貴命(オオナムチノミコト)
彦火火出見命(ヒコホホデミノミコト)

三神の関係を簡単にまとめておきます。
オオナムチは別名・大国主命(オオクニヌシノミコト)。日本の国づくりをした神です。
ところが、天の神に国を譲ることになりました。
譲り受けた国の支配者として天から地上に降ってきたのが瓊瓊杵命(ニニギノミコト)。
コノハナサクヤヒメは、ニニギの妃です。
そしてヒコホホデミはコノハナサクヤヒメとニニギの息子。

つまり、
・オオナムチ→国を譲った。
・コノハナサクヤヒメ→国を譲られた神の妻。
・ヒコホホデミ→国を譲られた神の息子。
という関係。ニニギが不在なのが不思議です。

コノハナサクヤヒメの詳しい説明は以下の記事の
「7.木花咲耶姫(コノハナサクヤビメ)」を、
ヒコホホデミの説明は以下の記事の
「8.瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)」の「ちょっと補足」を、
ご覧ください。

オオナムチの詳しい説明は以下の記事の「3.大国主命(オオクニヌシノミコト)」をご覧ください。

■御朱印■

■動画:「信しげの滝」■


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