母が帰るまでの2時間だけ、私は自由だった【子ども目線】
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これは子どもだった私が見ていた世界の話です。
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〇15:45
学校からの帰り道、ランドセルはずっしり重い。
でも、これから始まる一番幸せな時間を考えると、足取りは自然と軽くなる。
「もう少し!」
小走りで家の目の前へ。
玄関の鍵を自分で開ける。
扉が開くと、家の中はしん、と静まり返っていた。
靴を脱ぎ、部屋を確かめる――誰もいないことを確認して、ようやくほっとする。
よかった。
ランドセルを放り、冷蔵庫へ。
「今日は何を食べようかな」
その瞬間から、心が小さく跳ねる。
袋麺を取り出し、鍋に水を入れる。
テレビをつけ、少し音量を上げる。
少し固くてもいいや。
泡が立ったら麺を入れて、卵を落とす。
白身のぷるんとした感触。
黄身は少し固まったのが、好き。
ああ、いい時間。
顔が勝手にほころぶ。
こたつに座り、
足をくねくねさせながらラーメンを食べる。
幸せだなぁ。
片付けなくても誰も怒らない。
大の字で寝ちゃうぞ。
私は思い切り寝転がって、
縁側から空を見あげた。
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〇17:00
胸の奥に黒い塊がじわじわたまっていく。
「そろそろ帰ってくるかもしれない」
その“かもしれない”が、一番怖かった。
怒られる夜の気配だけで、体の内側がざわざわする。
勉強しなきゃ、でも手は動かない。
「まだ大丈夫かな、間に合うかな……」
時計を何度も見ながら、
どんぶりを洗うタイミングを考える。
〇17:55
テレビが終わる。現実が一気に戻る。
リモコンを置き、
どんぶりと箸を持って台所へダッシュ。
窓の外を確認する。
よし、まだ帰ってきていない。
靴をそろえる。
エンジン音が遠くで聞こえ、心臓がドクン、と跳ねる。
「やばい」
ランドセルを掴み、忍者のように音を立てず
階段を駆け上がる。
机に向かう私は、50メートルを全力疾走した後みたいに、息が上がっていた。
そして、黙って机に向かい勉強を始める――
これが、私の小さな精いっぱいの選択だった。

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