②母の気持ちが分からない。
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治療の希望について
母は放射線治療を嫌っている。また放射線治療が必要になったらどうしたらいいのかな、と聞いてくる。
わたしは、治療の選択はお母さんがしたらいいよ、もし嫌だったら断ることもできるよ、としか答えられない。
今の段階では、放射線治療は、痛みや臓器の不具合などを抑えるための対症療法的なものでしかない。しかも、放射線治療には、倦怠感や食欲不振などの大きな代償が伴っていて、高齢で体力の落ちた母には決して楽なものではない。だから、わたしは放射線治療を母に積極的に勧める気にはなれない。
母は、治りたい、生きたいという希望が強く、まだまだ治る見込みがあると信じているようなので、母の心情に合わせるなら、放射線治療を頑張ろうと励ますのが正解かもしれない。反対に、もう頑張らなくていいよ、とわたしの本心を言ってしまえば、それは治る見込みがないと告げるのに等しいことになる。
どうしたらいいのかな、と聞くとき、母はわたしにどんな答えを期待しているのだろう。単に私に決めてもらいたいだけなのだろうか。
どんな答え方をしたときも、母の顔は晴れなくて、正解ではなかったと自覚する。わたしは正解を知って楽になりたいと思っている。
どこで療養をしたいのか
母は自宅に帰りたがっている。帰りたがっているが、自宅で暮らすことを不安にも思っている。それで、どうしたらいいのかな、と私に聞いてくる。
私はできれば母を自宅に帰らせたい。自宅が母の居場所だと思うから。それに一緒の時間をたくさん過ごすことができるから。
母の不安も理解できる。私は無邪気にも最期まで自宅療養することの難しさをさほど想像していなかった。それが現実に迫ってきて、真剣に考えてみれば、終末期には誰かが四六時中付き添っていられる環境がなければ、自宅療養は相当に難しいということが、次第に明確になってくる。
わたしが母と同居できない状況で、家に帰れるよ、と安易に伝えることは、母を不安にすることでしかないのかもしれない。母は、その不安をかかえて帰宅するくらいなら、このまま病院にいたいと思っているのかもしれない。
母は、私は家に帰りたいから、あんたは私と同居して、とは決して言わない。わたしも、いっそのこと今だけ同居しようか、一緒に家に帰ろうよ、という言葉が今にも出かかっては、夫や娘や仕事のことを考える。
母は、どうしたらいいのかな、というだけだ。母は、全部を分かっているのかもしれない。
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