怒、厠破壊、折
「あー!うちのサッカー部が他校に乗り込んで、喧嘩したりトイレぶち壊したやつですよね。
しかも、暴れ回ったのにこっちは1人が腕骨折しただけですんだってヤバいっすよね!」
…大変だ。歴史が改ざんされている。
先日、仕事でたまたま一緒になった10個下の
男の子が、地元の中学校の後輩だということが
わかった。
地元が同じだと分かると、共通の話題で一気に
盛り上がるものだが、さすがに10歳差だと
なんか絶妙に噛み合わない。
しばらく話しているうちに、2人の間に
なんともいえない空気が漂い始めた。
ボクはそれがたまらなく嫌だったので、
(な、なにか共通のテーマをパスしなければ!)と
7月の暑さで半熟状態の脳みそをフル回転させた。
そして、ボクがサッカー部の2年生だったころの、
”ある1日”が、その後の後輩たちによって
脈々と語り継がれている。
という噂を耳にしたことを思い出した。
「そういえばさー、サッカー部の”伝説の1日”
って聞いたことある?」
「あー!うちのサッカー部が他校に乗り込んで、喧嘩したりトイレぶち壊したやつですよね。
しかも、暴れ回ったのにこっちは一人が腕骨折しただけですんだってヤバいっすよね!」
…本当に語り継がれていたのに驚いた。
しかし、当時を生き抜いた身としては、
歴史が大きく歪んで伝承されていることに
強い危機感を覚えた。
そしてまさにいま、キーボードをカタカタ ッターン‼︎して真実を語ろうとしている。
ボクは、あの1日を経験し、
事実を正確に記憶している数少ない人物と
して、責任を持って、事実を正確に記し、
インターネットの海に残すことを決意した。
そして、いつの日か、未来の同志諸君がここに
辿り着き、真実を知ることを祈っている。
すべてはここから…
あれは、3年生の最後の試合を1週間後に控えた
6月の上旬だった。
大会前の最後の練習試合として、自転車で1時間半
北上し、同じ埼玉県内のある中学校に遠征した。
僕たちは、一学年に約20人ほど、全体で60人
近くのまあまあ大所帯のチームだった。
ボクたちは奇跡が重なりまくって初めて、
県大会に手が届くかも?くらいの弱小チーム
だった。
ただ、先輩たちは「もしかするかもしれない」
メンバーが揃っていた。
そして、この試合までめちゃくちゃ調子が
よかった。
そして、さっそくAチーム同士の試合が始まる。
Aチームというのはいわゆる一軍で、3年生を
中心に構成され、数人の上手い下級生が飛び級
でいたりする。
もちろんボクはBチームだ😁👍
経験者なら分かると思うが、大体の流れは
A戦→B戦→A戦(→C戦)といった感じ。
どちらかの顧問の先生がだいたい審判をやり、
ベンチ入りすらできていない僕たちBチームが
副審(旗持って「オフサイド!」ってやる人)
や玉拾いをする。
そしてこの「副審」は本当にやりたくない。
(いま近くに元サッカー部がいる人は聞いてみてください)
だってボールがコートから出るたびに
「マイボ!マイボ!」ってマジで言われまくるからだ。
「カバディカバディ!」みたいな感じ。
そして当然、オフサイドでもそうじゃなくても、
「オフサイ!オフサイ!」って選手たちが叫ぶからだ。
(※もちろん自分が出ている時は、元気よく
「マイボ!マイボ!」ってたくさん言ってた)
ボクは幸いにも副審に選ばれることなく、
次のB戦に向けてウォーミングアップをする
メンバーにまわされた。
仲良しのぐっち君とアップをしつつA戦の様子を見る。
するとぐっち君はボクの肩を叩き言った。
「おい、審判やってる相手の顧問の先生見てみ」
40代くらいだろうか?黒字に金のラインの
ジャージ、ウルフカット気味の茶髪、スクエア形で上だけ金縁のサングラス。
「あれ本当に中学校の先生!?!?!?」
(イメージ的には、哀◯翔さんが近い)
試合はというと、先輩たちはなんだか微妙に
噛み合っていない。細かなミスを連発し、
徐々にイラ立ち始め、粗いプレーが目立つ。
グラウンドに嫌な空気が広がる。
そして、相手チームも同じような状況だった。
そうなるとなにが起こるかというと、
「マイボ!マイボ!!!」 マイボマイボ マイボのシューリンガン!
「オフサイ!オフサイ!!!」 シューリンガンのオフサイオフサイ!!
と、非常にカオスな試合になるのである。
しだいに暴言やラフプレーも出始める。
さらにその試合を裁くのはあのイカつい先生
(以下、グラサン先生と仮で呼ばせていただく)
いつのまにか「もしかするかもしれない」状況が出来ていた。
運命のホイッスル
そして、唐突に笛が吹かれるのであった。
ピーーーーーーッッッッ!!!!
「おい!!!!!お前ら全員集まれ!!!試合に出てるやつ全員だ!!!!」
やっぱりグラサン先生は怖かった。
敵味方関係なく、試合を中断させて集め、
公開説教を始める。(説教自体はスポーツマンシップや相手へのリスペクトについてだった)
イベント:【先生がキレる】
は誰しも1度は経験したことがあるイベントだが、
キレる原因に自分が関係あるかないかでワクワク度合いは大きく変化する。
今回、ボクは一切関係ない。
だってBチームだからな😁👍
グラウンドは、とんでもない空気になり、
遠くのほうで聞こえる女子軟式テニス部の
ポコーンポコーン!\ナイッショー‼︎/
だけが明るくこだまする。
ボクとぐっち君も先生によく怒られる側だった
ので、怒られている時の沈黙には慣れていた。
ただ、ここに遠くのほうから元気よく
ポコーンポコーン!\ナイッショー‼︎/
が乗っかってくるとちょっと耐えられなかった。
「ぐっち君!ちょっとだめだ!この状況やばすぎる!」
「俺もだ!いったんトイレ行こう!ここから離れたすぎる!」
逃げるようにそっとグラウンドから離れる。
「だ…駄目だ まだ笑うな…こらえるんだ…」
と校舎方面にある屋外トイレに早足で向かう2人。
トイレまであと数mまで近づいた時には、2人の早足はもはや駆け足になっていた。
腹痛以外でトイレにダッシュしたのは後にも先にもこの時だけだった。
ほぼ同時にトイレのドアを勢いよく押したその
瞬間、
ボコオオオオオオオオンンンン!!!!!!!!
「うわああああああああああ!!!!!」
「ああああああああああああ!!!!!」
僕たちはトイレのドアをぶち抜いてしまったのである。もちろん、そんなつもりはなかった。
その数秒後
「おおおおオオオオオイイイイなにやってダァァァァァ!!!!!」
3分前に公開説教をし、まさかの練習試合中断を宣言したらしいあのグラサン先生が怒って職員室に引き返す途中に、このトイレはあったのである。
ボクはめのまえが まっくらに なった!
ここから先は、ボクもぐっち君もあまり記憶が
残っていない。
チームメイトや後輩たちからの証言を集めた
結果は以下の通りである。
・土気色の顔面をしたボクたちが、職員室に帰ったはずのグラサン先生を連れてくる。
・うちの顧問のところまでやってきてなにやらゴニョゴニョ話す。
・顧問の顔も土気色になり、4人でどこかに消えていった。
・いつの間にか戻ってきたボクとぐっち君は、
自分たちがでるはずだったB戦の玉拾いを土気色のまましていた。
もういろいろ終わったわ
A戦は一旦中断し、先にB戦を行う。
その間にAチームの選手は頭を冷やせ。という流れになっていた。
呆然とした状態でぐっち君と玉拾いをした記憶
からはかろうじて残っている。
本来であれば自分たちが出るはずのポジションに、
3年生の中でAチームに入れなかった先輩が
出ている…。
いっつも食べているお菓子から付けられたであろうあだ名の「ポッキー君」という先輩は、細くて色白で、ウイイレがめっちゃ強かった。
「ぐっち君見て…ポッキー君がボクの代わりに
試合出てる…試合出てるの初めて見た…」
「ああ、ポッキー君ってフォワードだったんだな…
初めて知ったわ…」
とうつろな目でぐっち君と眺めたあの時の映像は、
網膜に焼き付いて離れない。
体育座りをしているボクたちの目の前で、
ポッキー君が身体を張って相手選手と競り合う。
空中のボールをヘディングしようとジャンプした
その時、競り合いでバランスを崩したポッキー君は肩から地面に落ちていく…
この瞬間はずっとスローモーだった。
\ポキィッッッッ/
「ぎゃああああああああああああ!!!!!」
ポッキー君の絶叫がグランドに響き渡る。
絶叫の数秒後、静寂が広がる。
ポコーンポコーン!\ナイッショー‼︎/
ボクの感情はもう、ぐちゃぐちゃになった。
ポッキー君は腕を骨折した。
ここまで読んでくれた同志諸君よ。以下が正しい歴史である。
「うちのサッカー部が他校に
乗り込んで(練習試合で遠征し)、喧嘩したり(説教されて)トイレ(ボロボロのトイレを誤って)ぶち壊したやつですよね。しかも、暴れ回った(説教されただけ)のにうちは一人が(試合中に)腕骨折しただけですんだ(ポッキー君はそれが引退試合になった)ってヤバいっすよね!」
※ほぼ実話ベースですが、一部脚色等加えています
↓30年前に住んでた街に行ってエモい気分になった話
↓アラスカに行ってオーロラ見た話
