21【ジジとババと、みなさまと私】ジジが、自分で車に乗れた日
もし入院できなかった場合に備えて、ショートステイも予約しておいた。
この判断が、あとで助かることになる。
そして今回は、病院からそのままショートステイにお願いすることになった。
父は、もっとぐじゃぐじゃ言うかと思っていた。
でも、母の様子がただ事ではないことを、なんとなく感じているのだろう。
「家には帰れない」ということを、父なりに理解してくれているようだった。
それがまず、ありがたい。
退院の日を迎えた。
前なら、介護タクシーだった。
でも今回は違う。
病院の車椅子で入口まで来て、
そこから私の車に乗り移る。
「はい、ここ持って。」
「しっかり持ってよ。」
私がそう言うと、
「おぅ……よいしょ。」
「うぅ……よいしょ。」
声を出しながら、車椅子から体を動かす。
そのとき、母が父の後ろに回って、
ズボンの後ろをつかもうとした。
前はそうしないと、体が持ち上がらなかったからだ。
私は言った。
「大丈夫。
もうそれはやらなくても大丈夫。」
母は心配そうな顔をした。
「大丈夫と思えないよね。」
それでも父は体を動かして、
車に腰を下ろした。
そして少しふざけた調子で言った。
「行けるぜ。」
思わず、口に出た。
「よかった、よかった。」
抱えなくても、父が自力で移動できる。
それがどれだけありがたいことか。
ここまで回復したんだな、と思った。
母を父の横に乗せて、三人でショートステイへ向かった。
車の中は、少しだけ明るい空気になっていた。
ここから、父の新しい生活が始まる。
今日も、ジジとババと、みなさまと私の一日。
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