NY領事館から電話がきた朝。ぎりぎり間に合った在外投票を振り返る
7月13日、日曜の朝。突然携帯電話が鳴った。電話に出ると日本語が聞こえてくる。
「休日の朝にすみません。在外選挙人証が届きました」。相手はニューヨークの日本領事館の職員だった。一瞬詐欺かと思ったが、本物でほっとした。
日本国外にいても、在外選挙制度を活用することで国政選挙に投票できる。そして、この日は在外選挙の投票最終日。連絡を受けてすぐに領事館へ向かった。まさに間一髪の滑り込みだった。
私は在外選挙の申請が遅れたことで、在外選挙人証の受け取りがぎりぎりになり、参院選に投票できるかの瀬戸際だった。珍しい経験だったと思うので、記録しておくことにする。
在外投票とは?制度と手続きの基本

外務省のホームページによると、在外選挙制度は海外に住む人が外国にいながら国政選挙に投票できる制度だ。この制度を使ってする投票を「在外投票」という。
在外投票をするためには、在外選挙人名簿に登録され、在外選挙人証を持っている必要がある。この登録には、国外転出届を出す市区町村の選挙管理委員会で申請する「出国時申請」と、出国後に管轄の大使館や領事館で申請する「在外公館申請」がある。
投票方法も大使館や領事館での「在外公館投票」と郵便での「郵便等投票」がある。朝日新聞の記事によると、2021年の衆院選では世界226の在外公館で在外選挙が実施された。

上記の案内メールにあるように、在外選挙の投票期間は日本よりも短い。日本に投票用紙を送る必要があるからだ。場所によって異なるようだが、ニューヨークの領事館は13日が最終日で、日本国内よりも1週間早かった。
どうして滑り込みに?在外選挙人登録が遅れた理由

私は日本で国外転出届を出した際、在外選挙人名簿登録の申請をしていなかった。出国前に調べきれていなかったことに加え、国外転出届を出した栃木県小山市の窓口でも特段何も言われなかったため、出国時申請をしていなかった。そのことから推察するに、出国時申請はあまり一般的ではないのかもしれない。
申請が必要なことに気づいたのは入国後だった。5月上旬に領事館を訪れる用事があったため、その際に申請用紙を提出した。申請書は外務省のHPでダウンロードできた。
在外公館申請で登録されるには、「満18歳以上の日本国民で、引き続き3か月以上その者の住所を管轄する領事官の管轄区域内に住所を有する者」が要件となる。この要件があったため、すぐには登録できず、時間がかかったのだ。
この要件に関する居住確認の連絡は、6月末か7月初旬に受けた。その際には、選挙人登録が参院選に間に合わないかもしれないと伝えられていた。半ばあきらめていたので、滑り込みながら間に合ったことに正直驚いた。
日本では新聞記者として選挙の取材にも携わった。忙しくても投票に行かなかったことは一度もない。今回もちゃんと投票できてほっとしている。
領事館での投票、こんなに違う?日本とのギャップ

領事館到着後、職員に在外選挙人証を受け取りに来た旨を伝えると、「お待ちしていました」という感じで通され、すぐに受け取れた。
その後、在外投票の手続きに移る。同じタイミングで投票に来ていた人も数人おり、その点では日本の投票所での投票と似た雰囲気だった。
しかし、投票前後の手続きは日本よりもはるかに多い。日本では受付を済ませた後、投票用紙を記入して投票箱に入れて終わりだが、こちらは投票用紙を日本の市区町村選管に送る必要がある。
そのため、投票用紙を市区町村選管に送るための封筒と、選挙区、比例それぞれの投票用紙を入れるため封筒の計3つへの記入が求められた。封筒の記載内容の確認をするスタッフなど、日本の投票所よりも多く職員が配置されており、より厳重な雰囲気だった。

自分の1票は届いたのか?在外投票結果を読み解く
通常、投票者数や投票率などの投票結果は全体の数字しか着目しないが、各選管では在外投票のみの状況も発表している。
在外投票をする立場になって在外投票のみにしぼった結果を見ると、1つ気づくことがある。在外投票のみの当日有権者数はきわめて少ないため、自分が投票したことを投票結果から実感しやすいということだ。
下の2つの表を参照してもらいたい。私が在外選挙人名簿に登録されている小山市の結果が記載されたもので、上が在外の当日有権者数、下が国内の有権者数である。
小山市の在外投票の当日有権者数は67人。そのうちの2人は私と妻である。下表の通り、国内の当日有権者数は13万5156人だった。


続いて下の表の投票結果を見ていく。在外の投票者数(小山市)は選挙区、比例代表ともに23人だった。投票率は34.33%で栃木県内の市町で3位となっている。
もし、私と妻が棄権していれば投票率は31.34%となり、小山市は4位の野木町と順位が入れ替わっていただろう。わずか2票でも、投票率の順位に影響が出るほど在外の有権者数は少ない。それだけに、1票の重みを感じた。
国内であれば分母が大きいため、私や妻の投票動向でこれだけ大きな違いは生まれない。


感想:大切な1票
在外投票のみの投票結果を見ることは、全体の傾向を読み解く上では意味のないことだ。しかし自分が投票したということを、より身近に感じられるおもしろさがあった。在外投票をした人は、自分が登録されている選管の発表資料を見てみると新たな発見があるかもしれない。
ぎりぎりの在外選挙人登録となったことで感じたことがある。月並みな表現になってしまうが、1票の重さだ。日曜日の朝に連絡してくれた領事館の方は電話口で「大切な1票ですので」と語っていた。自分の権利が大切にされていることを感じられてうれしかった。
今回、全体の投票率(選挙区)は58.51%で前回に比べ6.46ポイント増となったそうだ。交流サイト(SNS)では「投票してきた」というような投稿を多数見かけた。
そもそも選挙に行くこと自体が難しい人もいれば、私のように制度の複雑さに戸惑う人もいる。けれど、それを乗り越えて投票している人が数多くいる。選ばれた人たちには、その重みを忘れず、丁寧に政治を進めていってほしいと願う。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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👇は投票後に訪れたヤンキース戦の観戦記事です。
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