[連載小説]ソグディアナ物語第十七章/康国ナオシャンダ姫とニルファナ③
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康国ナオシャンダ姫とニルファナ②
あらすじ
『シルクロードJUN JUN』のソジュンはデビューし、ミュージカルでも活躍。
初期メンバーの純一は、シルクロードの研究者に。
二人は、マネージャーのアン・ミンジェとサマルカンドへ旅することになった。
ところが、ソジュンはタイムスリップしてラクダのキャラバンでシルクロードの旅に出ることに。
たどり着いたオアシスで出会った娘ロクサナに恋心を抱いた。
一方、ソジュンが消えブハラに残されたアンミンジェは途方に暮れていたら、そこに古代の出立ちの『金旭俊』と名乗る若者が現れた。
遅れて到着したメイク兼スタイリストのNAOまでが、翌朝消えた。
長老は、もう一つの言い伝えを語りだした。
「どうやら『時の扉』があいてしまったかもしれない」その話によると、東から来た三人の若者が過去に行き、
過去から紛れ込んだナオシャンダ姫は、過去に戻れるのだという。
「NAOがナオシャンダ姫かもしれない」と言い出した。
それは、ミンジェには信じられない話だった。
柴犬あんさん作のオープニング曲♪
康国ナオシャンダ姫とニルファナ③
アン・ミンジェは、行方不明のNAOのことが気になりはじめた。
もちろん「NAOは過去からやってきたナオシャンダ姫かもしれない」だなんて、そんな話は信じられなかったが、NAOTOの来た経緯を思い出していた。
(そう言えば、芸能バラエティでよく会うドラァーグクイーンのアリアナ・グローブさんに紹介されたんだったな……まだ連絡先、あったかな)
わかったからと言って何かの手掛かりになる訳ではないが、NAOを紹介してくれたアリアナ・グローブに連絡をとることにした。
「まぁ、お久しぶり!マネージャーのミンジェさんから、ご連絡とは嬉しいわねー。
お元気でしたぁ?」
「ご無沙汰してます。相変わらずお元気そうで。
私の方は、元気というか……ちょっと、あれこれありましてね。
いきなりで悪いんだけど、ちょっと聞きたいことがあって電話しました。
何かあった訳じゃないんですけどね。
紹介してくれたNAOTOのこと聴きたくて」
「やだ、あの子、何かしでかしたの?」
「いやいやいや、全然全然。仕事の評判良くて、助かってますよ。
ちょっと知りたいだけなんですが、
アリアナさんは、彼…NAOTOとは、どんな風に出会ったのですか?」
「それならよかった…
出会ったときのこと?
あら〜?話したことなかったかしら…NAOとは、イタリアのクィア・パーティーのフェスティバルに行った時に知り合ったの」
「えっ?イタリアで…」
「そう。実は、彼女、訳アリでね。
地中海の島でやったクィアパーティー会場近くのビーチに打ち上げられていたの。で、イタリアの仲間とみんなで助けたのね。
ケガはなかったけど、頭を強く打ったみたいで……
発見した時は、記憶も無くしてしまってて話すこともできなくてね。
パスポートとか身元のわかるものも無くて探しようもなかったから…
届けはしたけど、結局、身元わからなくてね。
で、私たちでずっと面倒みてたの。
最初に『NAO…』とだけ言えるようになって。それが名前の由来ね。
しばらくしたら、言葉も覚えて…
あの通り、おしゃべりなくらいにね。
彼女、器用だからメイクを教えてあげたらメキメキ腕あげたわ」
「え?そうだったの?身元不明??
それと、ちょっと聞きにくい話だけど…うーん、今の時代にこんなこと聞いていいのかな…」
「なぁに?大丈夫よ、気にしないから」
「さっきから『彼女』っていってるけど、何というか、NAOTOは、LGBTQかと…」
「やーね、違うの。身寄りがないから純粋に助けてあげたのよ。私たち仲間みんなの『娘』として可愛がってたの。
あの子は、手術したわけでもなくて、NAOは、最初っから女の子よ。仕草や話し方は、育ての『マンマ』の私たちドラァーグクイーン譲りだから、勘違いしてたの?可笑しいわぁ」
「えっ?でもNAOTOって名前で紹介されたから、てっきり…」
「違うの、あれね。NAOって呼んでだんだけど、イタリア在住の日本人の仲間がEXILEのNAOTOファンでさ、それでNAOTOが愛称になったのよ」
・イタリアで行方不明になったナオシャンダ
・イタリアで意識不明で記憶を失って発見されたNAOTO
ミンジェは、長老の言ってた「NAOがナオシャンダかもしれない」という話を思い出していた。
(まさか本当に、『時の扉』の向こうに行ったっていうのか?)
仮にそうだとしても、今はまだ探しに行く術はわからない……
ところで現代にやって来た金旭俊については、宿の人には会わせないように、ミンジェが部屋に食事を運んで世話をしていた。
「金旭俊殿、私も貴方様をお国にお送りして差し上げたいと思っていますが、なにぶんラクダの手配が遅れておりまして……
まだまだ時間はかかりそうです。もうしばらく、お待ちくださいませ」
「さようか。我も長旅で疲れておるので構わぬぞ。ここで待たせてもらおう。ところで安国の主は、お前か?」
「私ではございません。ご挨拶が遅くなりました。ここの主を連れて参ります。もうしばらくお待ちください」
ミンジェは、ことの次第を長老に相談し、金旭俊の部屋に向かった……
突然消えたソジュン、NAO、そして入れ替わるように現れた金旭俊…
まさか、長老の言うように「時の扉が開いたのではないか?」
そんな突拍子もない話が現実味を帯びてくるように、ミンジェにも思えてきた。
(ソジュンを探し、金旭俊を元の場所に帰すためには、どうしたらいいのだろう……?)
この後の展開は、また後々に語ることにしよう。
ところで一方、古代の砂漠を行くナオシャンダをのせた隊商は、星月夜のタクラマカンの砂の海を進んでいた。
月のない夜の砂漠の向こうに、ひときわ赤々と燃えるオアシスの灯りが見えた。
ニルファナは、ナオシャンダ姫を振り返り言った。
「ナオシャンダ姫、いよいよ亀茲に着きました!」
亀茲に待つ楽器職人チャドは、「ニルファナ達が帰る」というプルワーンツを受け取って以来、オアシスのバザールの端に松明を灯し、彼女の帰りを待ちわびていた。
一行の到着を心待ちにした亀茲のオアシスでは、盛大な歓迎を用意していた。
もちろん疫病の障りを避けるため、当分は、市中の人々と触れ合うことは出来ない。離れた宿舎で休息をとることになる。
その期間を終えたある日、日没にはまだ早い昼下がりの中庭では、歓迎の宴が始まろうとしていた……
その時、急に暗雲が立ち込め、辺りが真っ暗になった。
砂漠のオアシスには珍しく激しい雨が降り始め、宴は中止された。
姉が帰ってくるのを楽しみにしていたロクサナは、この時、はじめて雷をみた。
ピカッと光ったかと思ったら、「ズドーン」とどこかに雷が落ちる音が轟き、激しく雨が降りはじめた。
「うわっ、怖い」
ロクサナは、稲光に怯えてソジュンの横にピッタリとくっついて震えていた。
いつもなら、珍しい雨が降れば、「恵みの雨」と喜ぶ亀茲の人々も、その日の不穏な降り方に空を見つめていた。
第十八章
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