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第十三話 ひとりで きめる ということ

📘 はじめて読む方へ

このお話は、子どもが働く体験のできる
こどものくにを舞台にした物語です。
※前のお話のつづきになります。

前回のお話はこちら👇
(会社法) 👉 第十二話 はじめての ちいさな株主総会

📚 こどものくにシリーズ一覧はこちら
👉🏰こどものくに(やさしい法律教室シリーズ内)

あたたかい日差しが、窓いっぱいにひろがる朝。

はるきは、ゆっくりと目をさましました。

きょうは――
また、おしごとの日です。

かたん。

ポストから、小さな音。

はるきは、もうすっかり慣れた足どりで、ポストのところへ行きました。

封筒の中には、手紙が一通と、
「体験用」と書かれた、株主の証のバッジが――2つ。

はるきは、ゆっくりと、手紙をひらきました。


〈きょうの おしごと〉

あなたは、
大人気のガチャガチャの会社の
ただひとりの 株主です。

会社の名前やガチャガチャの中身を決め、
取締役を選び、
代表取締役を決めてください。


「……ひとり?」

はるきは、小さくつぶやきました。

バッジをポケットに入れて、車のボタンを押します。
車は、いつもどおり、なにも言わずに、すぅっと走り出しました。

* * *

ついた先は、こぢんまりとした建物。

中に入ると、
前に来た会議室より、さらに小さな部屋でした。

イスは、ひとつ。
テーブルも、ひとつ。

ほかには、だれもいません。

「……ほんとに、ぼくだけなんだ。」

そのとき。

ポケットの中で、パスポートが、やさしく光りました。


あなたは、この会社のただひとりの 株主です。

あなたは、今日、じぶんを取締役に えらんでください。

取締役がひとりだけのときは、
その人が代表取締役になります。


「……じゃあ。」

はるきは、イスにすわり、
そっと手をあげました。

静かな部屋。

だれも、なにも言いません。

はるきは、小さく言いました。

「ぼくを、取締役にします。」

その言葉が、
ぽとん、と部屋に落ちたような気がしました。

「……それで、代表取締役も、ぼくです。」

誰も反対しません。
誰も、うなずきません。

でも――
ちゃんと、決まりました。

* * *

会社の名前も、
ガチャガチャの中身も。

はるきが考えて、
はるきが決めました。

早く決まるのに、
とても静か。

「……なんでも、決められるんだ。」

でも、はるきは、ふっと息をはきました。

「ちょっと……こわいな。」

間違えても、
相談する相手はいません。

よくても、わるくても、
ぜんぶ、自分。

* * *

そのときです。

こんこん。

ドアを、たたく音。

ドアを開けると、
そこには――ライオンのおじさんが、立っていました。

やさしそうな目。
きちんとした服。

「こんにちは。」

その人は、にこっと笑いました。

「この会社、とてもすてきですね。
ガチャガチャ、ぼく、だいすきなんです。」

そして、部屋の中を見まわして、言いました。

「このガチャガチャ……
きっと、人気が出ますね。」

はるきは、少しうれしくなりました。

「もし、よかったら……」

その人は、つづけます。

「ぼくも、この会社を応援したいです。
だから……
その、応援バッジを、ひとつ、売ってもらえませんか?」


はるきの胸が、きゅっとなりました。

(……売ったら。)

(株主が、ふたりになる。)

(そうしたら……)

はるきは、前の、株主が3人の
株主総会を思い出しました。

意見が通らなかったこと。
でも、ひとりじゃなくてほっとしたこと。

(安心、だったけど、
 ぼくの意見、通らないこともあったな。)

でも――

(今は、ぜんぶ、じぶんで決められる。)

(こわいけど。)

(でも……)

ライオンのおじさんが、どんな人かは、
まだ、わかりません。

ずっと、同じ気持ちで、応援してくれるかも、わかりません。


はるきは、少し考えてから、言いました。

「……すみません。」

おじさんの目を、ちゃんと見て。

「もう少し、考えてからでも、いいですか?」

ライオンのおじさんは、少しだけ驚いた顔をして、
でも、すぐに、やさしくうなずきました。

「ええ。もちろんです。」

* * *

帰りの車。

外の景色が、ゆっくり流れていきます。

ポケットの中で、パスポートが、また光りました。


株主が増えると、会社を思い通りにすることは、できなくなります。

だから――

会社によっては、
「この人ならいいですよ」と、
会社が認めた人だけが
株主になれるようにしていることがあります。

そういう会社を
**非公開会社(ひこうかいがいしゃ)**といいます。

反対に、
だれでも株主になれる会社を
**公開会社(こうかいがいしゃ)**といいます。

会社は、どんな会社にしたいのかを考えて、
公開会社にするのか、非公開会社にするのかを決めています。


はるきは、空を見あげました。

どんなに人気がある会社であっても、

株主になりたくても、
だれでも、株主になれるわけじゃない会社が、ある。

はるきは、すうっと息をしました。

「ひとりで決めるのは、こわいけど……
 自分の思ったことが決められないのもいやだな」

(決めるって、むずかしい……)
(でも、それが――株主のしごとなんだ。)

車は、なにも言わず、はるきを、やさしく家まで運びます。


またひとつ、この世界のことを、知った気がしました。


🏰前のお話はこちら👇
👉第十四話 ポストにない会社

🔒 秘密のページ
※気づいた人だけが読める、パスポートのいちばん奥。(会社法)
📘パスポートの秘密のページ①――はるきの知らない、会社のしくみ


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プロフィール

🌿司法書士ママ|みか
平成19年司法書士試験合格。
売買・相続などの不動産登記や会社・法人登記に15年以上たずさわっています。
家族の物語とともに、法律を“絵本のようにやさしく”お届けしていきます🍃

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