第十二話 はじめての ちいさな株主総会
📘 はじめて読む方へ
このお話は、子どもが働く体験のできる
こどものくにを舞台にした物語です。
※前のお話のつづきになります。
前回のお話はこちら👇
(会社法) 👉 第十一話 ひとりで きめた ねだん
📚 こどものくにシリーズ一覧はこちら
👉🏰こどものくに(やさしい法律教室シリーズ内)
はるきは、ふわっとした光で目をさましました。
きょうは――おしごとの日です。
かたん。
ポストから、小さな音。
はるきは、いつものように歩いていきました。
封筒をあけると、1まいの手紙と、
「体験用」と書かれた 株主の証である小さなバッジが3つ。
手紙には、こう書かれていました。
〈きょうの おしごと〉
株主として 株主総会(かぶぬしそうかい)
に出席してください。
株主総会で、
会社の名前と、取締役(とりしまりやく)を
きめてください。
その後、代表取締役(だいひょうとりしまりやく)を
きめてください。
「前も、株主総会行ったけど、
取締役を決めただけだったな。
会社の、名前まで決めるの?」
はるきは、ちょっとびっくりしました。
バッジをポケットに入れ、車のボタンを押すと、
車は、また何も聞かずにすーっと走りはじめました。
* * *
前に来た株主総会は――
ひろい会場で、大人の動物たちがいっぱい。
でも、今日はちがいました。
ついた先は、小さな建物。
中に入ると、ふつうの会議室。
そこには、トラのおばさんと、さるのおじさんが座っていました。
「バッジを3つ持ってるんだな。」
さるのおじさんが、にこっと笑います。
「じゃあ、この赤いボール3こ、青いボール3こ。
きょうは2つ話し合うから、2しゅるいのボールで投票だよ。
1つ目の会社の名前を決める時には、赤いボール、
2つ目の取締役を決める時には青いボールを使うよ。」
はるきは、そっとボールを受け取りました。
そのとき、パスポートが光ります。
あなたは、今日、
この会社の株主です。
株主は3人。
さるのおじさんは バッジ10こ。
トラのおばさんは バッジ1こ。
あなたは バッジ3こ。
会社の名前と、取締役を決め、
そのあと、代表取締役を決めてください。
はるきは、まわりを見ました。
さるのおじさんは、赤と青のボールを10こずつ
トラのおばさんは、1こずつ
それぞれ手に持っています。
* * *
「では、株主総会(かぶぬしそうかい)をはじめます。
今日は、株主全員が出席しています。」
さるのおじさんが立ちあがり、言いました。
「会社のきまり(ていかん)にしたがって、
わたしが議長(ぎちょう)をつとめます。
どうぞよろしくお願いします。」
そう言って、さるのおじさんは、みんなにぺこりと頭を下げました。
「きょうの議題は2つ。
① 会社の名前を『おつきさま株式会社』から
『たいよう株式会社』に変えるかどうか。
この議案は、赤いボールをつかいます。
賛成はこちらの箱へ
反対はあちらの箱へ
それぞれ入れてください。
もっているボールは、すべて同じ箱へいれてください」
はるきは、ボールを見つめます。
「……たいようって、かっこいいかも。」
はるきは、3つの赤いボール全部を賛成の箱に。
トラのおばさんも、賛成の箱へ赤いボール1こを入れました。
でも――
さるのおじさんは、赤いボール10こ全部を、反対の箱へ。
「賛成4こ、反対10こ。
「この議題は、たくさんの賛成が必要です。
持っているバッジの3分の2以上が賛成しないと、決まりません。
だから、この案は、ひけつです。
会社の名前は『おつきさま株式会社』のままに します。」
「ひけつ…って、『たいよう』に、ならないってこと?
……賛成の人数のほうが多いのに……?」
はるきは、はっとしました。
“この世界は、人の数じゃなくて、もっているバッジの数で決まるんだ。”
それが、この世界のルールなのです。
* * *
つぎの議題です。
「では、取締役を選びます。
ここにいる 3人を そのまま取締役に えらびたいと思いますが、
いかがですか?
さっきの議案とは、色をかえて投票します。
青いボールを使ってください。」
トラのおばさんは、青いボールを賛成の箱へ。
さるのおじさんも入れました。
「……株主が、取締役になっていいんだ。」
はるきは、そっと青いボールを賛成の箱へ入れました。
「賛成が ぜんいん。
では、取締役は この3名に決まりました。」
ぱちぱちぱち。
会議室に、小さな拍手。
「なお――」
さるのおじさんが言います。
「この会社には、取締役会はありません。
だから、『ていかん』の決まりにしたがって、
取締役同士で代表取締役(しゃちょう)を話し合って決めます。」
はるきは、首をかしげます。
「……ていかん?」
むずかしい言葉が増えていきます。
「では――だれがいいでしょう?」
トラのおばさんが、大きな声で言いました。
「さるさんがいいと思います。」
はるきは、小さな声で言いました。
「ぼくも、いいとおもいます。」
「ありがとうございます。」
さるのおじさんがうなずきます。
こうして、全員一致で
代表取締役は さるのおじさんに決まりました。
* * *
帰りの車。
ポケットの中で、なにかが ひかります。
また、コインが1まい――。
そして、パスポートが光りました。
株主(かぶぬし)は、
株主総会(かぶぬしそうかい)で、
取締役(とりしまりやく)を えらびます。
株主は、
自分を取締役に選任することも できます。
代表取締役(だいひょうとりしまりやく)を
どのように決めるかは、
会社によってちがいます。
会社には、
取締役会(とりしまりやくかい)が
ある会社と、
ない会社があります。
取締役会がある会社では、
取締役みんなで集まって、
会社の大事なことを話し合い、
代表取締役も えらびます。
取締役会がない会社では、
あらかじめ決められた
会社のきまりにしたがって、
取締役どうしで、
会社を代表する人を えらぶことが できます。
この会社のきまりのことを、
ていかん(定款)といいます。
ていかん(定款)は、
会社を作るときに、
必ず作る、大切なものです。
会社は、
この ていかん(定款)に したがって、
うんえいされます。
はるきは、外の空をながめました。
「……株主が3人しかいない会社もあるんだ
株主みんなが、取締役になることもあるんだな」
前の、大きな会場の株主総会とは
ぜんぜんちがいます。
はるきは、すこし肩をゆるめました。
風が、やさしくほほをなでていきました。
「前のお仕事みたいに
ひとりだけの取締役だと、
ひとりでなんでも決められるけど、
こわくて、心細い
たくさん取締役がいると
安心するけど、
自分の意見が通らないこともあるんだな」
はるきは、『たいよう株式会社』への変更が
ひけつ(否決)されたことを
思い出して、そっとつぶやきました。
どっちも、この世界のルールなのかもしれません。
はるきは、すうっと息をしました。
今日も、すこしむずかしかった。
でも――こわくはなかった。
また少し、この世界のことを知った気がしました。
🏰前のお話はこちら👇
👉第十一話 ひとりで きめた ねだん
🏰次のお話はこちら👇
👉第十三話 ひとりで きめる ということ
🔒 秘密のページ
※気づいた人だけが読める、パスポートのいちばん奥。(会社法)
📘パスポートの秘密のページ①――はるきの知らない、会社のしくみ
🏰「こどものくに」シリーズを最初から読む
子どもが働く体験のできる国で、
はるきは、いろいろな立場になりながら、
決めること・選ぶことのむずかしさを体験します。
会社法、民法、不動産登記法――
法律の考え方を、
やさしい物語として学ぶ教室です。
シリーズ全体を読む
👉 🌕レオくんとめぐるやさしい世界へようこそ(ページの見方の地図)
👉 🌿はじめまして(プロフィール)
🐢 シリーズ案内
プロフィール
🌿司法書士ママ|みか
平成19年司法書士試験合格。
売買・相続などの不動産登記や会社・法人登記に15年以上たずさわっています。
家族の物語とともに、法律を“絵本のようにやさしく”お届けしていきます🍃
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ、応援いただけますと、とっても嬉しいです💫
いただいたチップは、書籍購入など、もっと良いお話を書くための費用に使わせていただきます🍃
