【創作】おもいで堂 #2
おもいで堂を飛び出した少年が目を覚ますと、そこはいつも寝ているベッドの上でした。
「そうだ。昨日ママとおばあちゃんのお話してて、そのまま寝ちゃったんだ…だからあそこに行けたのかな…」
先程までの不思議な出来事をベッドの上でゴロゴロしながら考えていると、リビングの方からおいしいにおいがしてきました。
「朝ごはんのにおいがする!早く起きないと!おじいちゃんとも約束しなきゃ!」
少年はすっぽりと被っていた布団から飛び出し、おいしい匂いのする方へ駆け足で向かいました。
駆け足で向かった先にはすでに朝ごはんが用意されており、少年のママとパパ、そしておじいさんが座っていました。
「おじいちゃん!今日はぼくと一緒に寝ようね!」
静かな食卓に、少年の大きな声が響きました。
「おお、急にどうしたんじゃ?まずは おはようの挨拶じゃろ?」
大きな声に少し驚いたおじいさんでしたが、優しく少年の頭を撫でながら言いました。
「あっごめんなさい。おはよう!おじいちゃん!あのね、今日の夜はおじいちゃんと一緒の布団で寝たいんだ。だめ?」
おはようと返したおじいさんは、不思議そうな顔をしながら答えました。
「だめなことはないんじゃが、じいちゃんの布団で一緒に寝ると狭くなるがいいのかい?わしは大歓迎じゃよ。」
やったー!と大きな声を出した少年は、喜びのあまり、その場でぴょんぴょん飛びはねました。その様子を見ていた少年のママとパパ、おじいさんは顔を見合わせ、微笑みあうのでした。
「ほら、もう少しこちらへおいで。布団からはみ出して風邪をひいてしまいよる。」
枕元の小さな明かりをたよりに、おじいさんは少年に暖かい布団を掛け、仲良く並んで布団に入りました。
「ねぇ、おじいちゃん。手つないでもいい?」
そう言いながらも少年の手は、すでにおじいさんの手を握っていたのでした。
「おやおや、どうしたんじゃ?やっぱり寒かったんか?」
おじいさんは、少年の手をぎゅっと握り返しました。握り返してくれたおじいさんの手は温かく、少年の手を包み込みました。
嬉しくなった少年は、えへへ と笑い、おじいさんにぴったりとくっつきました。
「こうして誰かと眠るのは、久方ぶりじゃのう…」
ポツリとつぶやいたおじいさんの表情は、少し寂しそうでした。
「おじいちゃん。おばあちゃんがいなくなってさみしい?」
少年の言葉におじいさんは、少し黙ってしまいました。少年は何も言わず、おじいさんの言葉を待ちました。
「そうじゃのう…さみしくない と言ったら嘘になってしまうのう。」
おじいさんは小さな声で答えました。
寂しそうなおじいさんを元気づけようと手をぎゅっと握り直し、少年は言いました。
「ねぇ、おじいちゃん。ぼくと一緒におばあちゃんのお話ししない?えーっとぼくはね、おばあちゃんと一緒に…」
おじいさんが返事をする間もなく、話し始めた少年は、おばあさんとの思い出をたくさん話しました。そしておじいさんも少年の話に耳を傾けました。
「お前さんはお話しが上手じゃのう。じいちゃんも嬉しい気持ちになるわい。」
笑顔になったおじいさんを見て、嬉しくなった少年は言いました。
「ねぇ、じゃあ次はおじいちゃんが、お話ししてくれる?ぼくが知らないおばあちゃんとの思い出、いっぱい聞きたいな。」
「ばあさんとの思い出か…お前さんみたいに上手く話せるかわからんが聞いてくれるかい?」
少し恥ずかしそうな表情を見せたおじいさんでしたが、おばあさんとの思い出を思い出しながらゆっくりと話し始めました。
静かにおじいさんの話を聞いていると、おもいで堂で読んだおばあさんの思い出と同じ話がいくつもありました。少年はそれがなんだか嬉しく思いました。
そしておじいさんの話し声が心地よかったのか、少年はいつの間にか眠ってしまいました。
「おやおや、寝てしもうたか。」
すうすうと寝息をたてる少年に、おじいさんは布団をそっとかけ直しました。
「こんな小さな子に心配かけさせるとは、わしも情けないのう…ばあさんがおったら、怒られとるわい…」
少年の寝顔を見ながら、ポツリと言いました。
そしておじいさんも、握られた手の温もりを感じながら眠りにつくのでした。
