ビンゴ大会の景品より、うれしかったこと。
「ピンポーン。」
休日の昼下がり、インターホンが鳴る。
玄関を開けると、会社の同僚たちが立っていた。
「こんにちはー!」
そう言いながら入ってきた手には、お菓子だけじゃなく、小さな袋がいくつもある。
「今日は景品も持ってきたよ。」
その一言に、私は思わず笑ってしまった。
娘のために、家でビンゴ大会を開こうと、本当に景品まで準備してきてくれたらしい。
最初、娘は少しだけ照れていた。
私の後ろに隠れて、小さくこちらを見ている。
でも、それもほんの数分だった。
「じゃあ始めるよー!」
ビンゴカードを配って、番号を読み上げる。
「あるかな?」
「ない!」
「惜しい!」
そんなやり取りをしているうちに、娘も少しずつ声が大きくなる。
「リーチ!」
その一言で、大人たちまで盛り上がる。
「おっ、きた!」
「次あるかも!」
会社では採用の話や会議の話をしている人たちが、今日は3歳の子ども相手に本気で一喜一憂している。
その光景が、なんだか面白かった。
「ビンゴーー!!」
娘が両手を上げて飛び跳ねる。
景品を受け取ると、「やったー!」と何度も見せに来る。
周りの大人たちも、自分のことのように笑っていた。
私は少し離れた場所から、その様子を見ていた。
会社では見たことのない表情だった。
仕事の話をしているときとも、飲み会で笑っているときとも違う。
娘の喜ぶ姿を見て、本気でうれしそうにしている顔だった。
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人事という仕事をしていると、「人柄」という言葉をよく使う。
面接でも、「どんな人ですか?」と聞くし、「この人は周りといい関係を築けそうです」と話すこともある。
でも、人柄って、会社の中だけでは見えないのかもしれない。
子どもと遊んでいる姿。
誰かのために景品を選んでいる時間。
休日にわざわざ家まで来てくれること。
そんな何気ない場面のほうが、その人らしさが自然と出ることもある。
娘が笑っていることもうれしかった。
でも、それと同じくらい、休日に娘のためだけに時間を使ってくれている同僚たちの姿が、なんだかうれしかった。
景品を選ぶ時間もあったはずだ。
「何が喜ぶかな。」
そんなことを考えながら、お店を歩いてくれたのかもしれない。
その見えない時間まで含めて、この日の思い出になった。
⸻
夕方になり、みんなが帰る。
玄関で「また遊ぼうね」と手を振る娘。
ドアが閉まると、家の中は急に静かになる。
さっきまで笑い声でいっぱいだったリビングが、少し広く感じた。
床にはビンゴカードが一枚落ちている。
景品のおもちゃを抱えながら、娘は満足そうに遊び始めた。
「今日は楽しかったね。」
そう声をかけると、
「またビンゴしたい!」
と笑っていた。
⸻
たぶん娘にとって今日は、「パパのお友達と遊んだ日」。
それくらいの出来事なんだと思う。
娘にとって会社なんて関係ない。
ただ、「パパのお友達」が遊びに来て、一緒に笑ってくれた休日。
でも私は、その景色を見ながら、会社で出会った人との関係は、案外いろんな形になっていくんだなと思った。
仕事で出会った人との関係は、会社を出たあと、どんな形になっていくのでしょうか。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
もしこの空気感が好きだと思っていただけたら、これまで書いてきた記事も読んでいただけるとうれしいです。
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