編み物と、一杯のはなし
編み物をしていると、ふと手を止めたくなる瞬間があります。
糸を置いて、深く息を吸い、あたたかい一杯を口にする時間。
その一瞬があるからこそ、また次の一目を編みたくなる。
「糸と音と」では、編むことと同じくらい、“飲む時間”も大切にしたい。
そう思いながら、オリジナルブレンドコーヒーづくりが始まりました。
この春の出会いに合わせて、この記事は全体を公開します。
糸と音と オリジナルブレンドが生まれるまで
試飲を重ねて
2月12日。
2回目の試飲会で、ようやく糸と音とのブレンドが決まりました。
私がこだわった点のひとつに、冷めても楽しめることでした。
編む人は、淹れたての一口のあと、すぐには飲みきれません。夢中で針を動かしているうちに、気づけばコーヒーは少し冷めている。
そのとき、「ああ、冷めてしまった」と残念に思うのではなく、「この温度もいい」と思える一杯であってほしかったのです。
試飲では、淹れたてと、少し時間が経って冷えた状態を必ず飲み比べました。
さらに私は苦味が強いコーヒーが得意ではないため、砂糖のみを入れた場合、クリームを加えた場合など、さまざまな飲み方でも試しました。
温度による変化。
甘みの出方。
後味のやわらかさ。
編む時間に寄り添い続けられる味わいかどうか。
その視点で、何度も微調整を重ねました。
はじめてお会いしたのは、昨年9月13日。そこから約5か月。
月に一度の打ち合わせを重ね、方向性を定めた後、ブレンドを組み、試飲を繰り返しました。
打ち合わせも試飲も、毎回コーヒー製造会社の直営喫茶店で。
そのたびに、私はオランを連れて行きました。

インドネシア産だけでつくる、という選択
今回のブレンドは、インドネシア産の豆のみで構成しています。
ブレンドとしては珍しく、ひとつの国(エリア)の豆だけで組み立てました。会社としても、初めての試みだったそうです。
けれど私にとっては、とても自然なことでした。
オラン(オランウータン)の故郷が、インドネシアだからです。
故郷がボルネオ島のオランに見守ってもらいながら、同じインドネシアの大地で育った豆を選ぶ。
毎回オランを連れて打ち合わせや試飲に赴いたのも、その景色を大切にしたかったからです。
森と、編み物と、私の人生は、すでにどこかでつながっている。
このコーヒー一袋につき10円を積み立て、ボルネオ島にある「オランの森」の植林費に充てていきます。販売を続けながら、少しずつ森へ還していきます。
編む時間に寄り添う一杯。
そして、遠い森へ想いが届く一杯です。

はじめて出会ったドリップコーヒー
私がドリップコーヒーに出会ったのは、20歳の頃。
叔父の会社で、初めて淹れてもらった一杯でした。
それまでのコーヒーの印象が、その瞬間に塗り替えられました。
「ああ、これが本物なんだ」
そう感じた味が、私の中の“基(もと)”になりました。
その叔父のブレンドにも、実はインドネシア産の豆が含まれていたのです。
スペシャリストとの出会い
今回、糸と音とのブレンドは、叔父のコーヒーを30年以上つくり続けてきた会社にお願いしました。
そこで出会った、ひとりの社員の方。
私の活動や森づくりへの想いに共感し、敬意をもって接してくださる方です。
私は、その方が大切にしているコーヒーの世界に、敬意と「知りたい」という気持ちをもって耳を傾けました。
同時に、疑問に思ったことは素直に質問しました。
教えていただきながら、一緒に味を育てていく時間でもありました。
コーヒーのスペシャリストでありながら、驚くほど感覚が近い方。
言葉にしなくても、大切にしているものが伝わるような。
何度も打ち合わせと試飲を重ね、微調整を繰り返し、ようやく完成した一杯です。

叔父のコーヒーと、つながっていること
20歳の頃から親しんできた叔父のドリップコーヒー。
その味を守り続けてくれている会社と共に、糸と音との一杯は生まれました。
どちらのブレンドにも、インドネシア産の豆が含まれています。
叔父の配合を伺ったとき、インドネシア産の豆が含まれていると知りました。
その豆を、糸と音とのブレンドにも入れてはどうかと提案してくださったのも、その方でした。
実は私も、同じことを考えていました。
感覚が、ぴたりと重なった瞬間でした。
これはきっと偶然ではなく、必然だったのだと思います。
だからこそ辿り着けた味があると、私は感じています。
このコーヒーは、いくつものご縁と時間が重なって生まれた一杯です。
20歳の私と、今の私と、オランと、森と、人との出会い。
これから、「旅する 糸と音と」の場で。
そして、ご自宅でも味わっていただけたら嬉しいです。
光恵

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