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白銀の騎士(7)第2話 act.3

前回の話

2.嵐の前 act.3

「非常に残念なことだが」
と前置きをして、ガイアール艦長は艦内放送を続けた。
「『自由都市』制圧作戦は、予定通り行うことが決定された」
 予想していたこととはいえ、艦内のそこかしこで溜息が漏れた。誰だって悪者にはなりたくないものだ。
「これより本艦『ギムネマ』は、新国連会議直属宇宙軍より、連合宇宙軍第1艦隊旗艦『コエンザイム』の指揮下に入る。作戦開始時刻は本日2200、参加する乗員は充分に休息をとっておくように。以上」
 作戦会議室に残っていた3名も、例外なく大きな溜息を漏らしたくちである。
「ま、仕方ないわね。あの2大国が、軍事に限っては手を結ぶ、ってご時世だもの」
 珍しくハーナイが投げやりな口調で言った。いつもならバイプが言いそうな台詞だ。
「でも、いくら敵の旧首都とは言っても、もうめぼしい物は残ってないんでしょう? いったい何の得があって…」
 クーキーの疑問にバイプが応えた。
「放棄されたとはいえ、あの歴史に名高い『自由都市』だからな。潰れに潰されまくった2大国のメンツの回復に、少しは役立つって事なんだろうよ」
「それに、放棄された都市だからこそ、制圧作戦に踏み切ったのかも知れないわね。うまく行けば、犠牲は最小限で済むから。戦闘員も…民間人も」
「そうあって欲しいですね」

 新国連軍の連合艦隊主力部隊は、『自由都市』から南西方向の大きなクレーターに密かに集結を終えている。
 ここはかつて、敵対するゴモン独立都市民主連盟――略称ゴモン都市連盟の『自由都市』防衛艦隊が停泊していたドックであり、現在は放棄されていた。

 つい7日ほど前までは、ここを含めた数カ所にゴモン軍の艦隊が配置され、『自由都市』は全く攻め入る隙を与えなかった。
 状況が変わったのは、新国連軍の中では「犬猿の仲」であったはずの強大な2大国が、ゴモン都市連盟を「共通の脅威」として、一時的にせよ軍事的な提携を行う、という不測の事態が起こったからである。

 現在でこそ、ケタ外れの機動性と火力を持つ人型戦闘機の量産に成功したゴモン軍が、局地戦においては優勢を誇っている。
 だが、開戦から数ヶ月も経つと、これまでのように『自由都市』を守るために戦力を確保しておけるほど、ゴモン側にも余裕がなくなってきつつあった。
 軍部からは「いつまで無駄な警護を続けるのか」と不満の声が上がっていた。
 すでに、要塞と言えるほど堅固な新首都が、財政の無理を押してまで建造されているのだ。
 確かに、今や「旧首都」となった『自由都市』の周辺に配備した戦艦・人型戦闘機を他の局地戦に投入できれば、その効果はどれほど上がるか計り知れない。

 もとより、ゴモン都市連盟側には、戦争を長引かせるつもりは毛頭無かったのである。
 目的は、あくまで短期決戦で新国連に脅威を与え、自軍に有利な停戦条約を結ぶ事にあった。
 戦局が長引けば、いくらゴモン軍が宇宙戦に長けているとはいえ、事実上の全地球連合軍を相手に勝利することは不可能に近い。

 かくしてゴモン軍は、歴史ある旧首都である『自由都市』の防衛を放棄した――
 少なくとも、誰の目にもそのように見えた。
 ただ、一般市民にその事実は知らされていなかったが。

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