白銀の騎士(15)第5話 act.3
前回の話
5.陽炎の記憶 act.3
結局、コウはそれから何度か、母と一緒に特別実験室へ行き、例の体感ゲームをプレイした。
だから、あの実験室あたりの道はわかっている。
窓が割れていても、天井が溶けていても。
電気系統はほぼ止まっていたが、緊急時の自家発電に切り替わっているらしい。
床の無事な部分には非常ガイド灯が点き、スプリンクラーが作動しているため、コウは頭のてっぺんから足先までびしょびしょに濡れた。何度も。
天井が溶けて? なぜスプリンクラーがずっと? 濡れる、何度もだって?
今のところ火災が起きている気配はないが、我に返ってみると、気温が異常に高い。
コウのコートとジーンズからは湯気が立ち上っていた。何度も薄く濡れては乾いているらしい。
スプリンクラーが作動していなければ、建物の中にこう長く留まることはできなかっただろう。
戦争になってから省エネのため、コロニーの気候設定が冬のままになっていたことも幸いした。
厚着に染みた水分が身体を守ってくれている。軽装ならこの気温に肌をさらして数分も居続けることは無理だ。それに、流れ込む外気が冷たいおかげで、ずいぶん熱気も落ち着いてきている。
ふいに、目の前に見たこともないものが現れた。
半壊した特殊実験ドームの分厚い壁から、鈍い白銀に光る鋼鉄の騎士の顔が覗いている。
ちょうど稼働実験中だったのか、スコープアイや各部LEDが点灯し、燃料・電源ともにFullなのがひと目でわかった。
赤く燃える夜空を背景に、白い壊れたドーム、白銀の巨大な兜、その下の目は生まれたばかりのように明るく光っている。
まるで、固い殻を破って孵化したばかりの…しかも、その場ですぐに飛び立とうとしているような、鋼鉄の戦天使。
思わず立ち止まったコウは、いきなり背後から声をかけられて驚いた。
「コウ…コウじゃないか?」
「父さん!」
父の立っている後ろの部屋は扉は開け放たれ、「メインシステム管理室」の表示があった。
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