「生成AIで、何かできそう」を、現場の具体策に変える
―― ある開発部門のエンジニアが、自分たちの業務改善アイデアを出すまで
マクニカ 営業統括本部 DXコンサルティング部の吉田です。
前回「いいワークショップは、始まる前に9割決まっている―― お客様が主役であり続ける「場」のつくり方」の続きで、今回はワークショップの具体事例を書いています。
今回のテーマは、いま多くの製造業で関心の高い「生成AIの活用」です。守秘のため詳細は伏せますが、ある計測機器メーカー様(お客様)の開発部門で実施したワークショップをもとに、「生成AIで、何かできそう」を具体策に変えたプロセスをご紹介します。
「何かできそう」の、その先で止まっていた
ChatGPTが登場して以降、生成AIへの注目は一気に高まりました。設計・開発の現場でも「これは使えるのではないか」という期待が広がります。
ところが、いざ自分たちの仕事にとなると――具体的にどう使えばいいのかが分からず、手をこまねいている。そんな状態が、多くの開発現場で起きていました。
この開発部門も、同じでした。情報は分散し、ベテランの知識は属人化し、ルーチン業務に時間を取られて、本来注力すべき開発に集中しきれない。
「生成AIで何かできそう」という肌感はある。けれど、それが自分たちの業務課題と結びついた具体的なアイデアには、なかなかならない。企画窓口を引き受けてくださった研究所の部長が感じていたのも、まさにそこでした。
答えを「渡す」のではなく、自分たちで見つけてもらう

こういうとき、いちばん簡単なのは「生成AIでこんなことができます」という活用事例を、こちらから渡してしまうことです。でも、私たちはそうしませんでした。
外から渡された事例は、たいてい「よその会社の話」で終わります。本当に動き出すのは、自分たちの業務課題に紐づいた、自分たちの言葉になったアイデアだけ。だから、この日の設計はシンプルでした。
生成AIのトレンドを共有したうえで、あとは――自分たちの現状(As-Is)の課題を洗い出し、めざす姿(To-Be)を描き、そのギャップを埋める施策を、参加者自身に考えてもらう。
めざす姿は、具体的に置きました。生成AIを使いこなして、将来的に業務時間の効率を倍にし、エンジニアが本来の開発に集中できる体制へ。漠然と「効率化」ではなく、何のために使うのかを、最初に握る。
そして、ワークの始まりと終わりに、必ず「目的・ゴール」を全員で確認する。一般論で終わらせないための、ささやかですが大事な仕掛けです。
3つの「自分たちの解」が生まれた

集まったのは、開発本部の主任から担当クラスまで15名。3チームに分かれて、半日、自分たちの業務と向き合いました。
そして出てきたのが、「生成AIで何かできそう」という肌感を、PoC(試作・検証)にかけられるレベルの具体策に変えた、3つのアイデアでした。
あるチームは、図面の統合AIを構想しました。口語や絵からでも図面を検索でき、関連する案件を自動でサジェストし、写真・議事録・Q&Aといった雑多な情報を一元的に蓄積する仕組みです。
別のチームは、社内の情報検索そのものを高度化しようと考えました。定型のプロンプトで検索品質を標準化し、回答には参照元を表示してファクトチェックを担保し、過去のプロジェクトファイルから横断的に探せるようにする。
もう一つのチームは、開発案件の一元管理に踏み込みました。複数のルートから入ってくる開発要求を一つのデータベースに集め、過去の実績やリソースの状況から優先順位を定量的に判断し、市場・競合の情報と連携して開発計画を最適化する。
どれも、「生成AIの一般論」を聞いただけでは絶対に出てこない、自部門の文脈に深く根ざしたアイデアです。そして3チームに共通していたのは――大量の資料を整理することと、若手とベテランのあいだのナレッジギャップを埋めること。ここに生成AIが効く、という確かな手応えでした。

一般論を、自分たちの言葉に翻訳する
半日のワークで、生成AIのシステムが完成するわけではありません。けれど、参加者の中に、確かに残ったものがあります。
自分たちの開発業務の現状とめざす姿、そのギャップを、チームの言葉で言語化できたこと。具体的な施策アイデアを、誰かに指示されてではなく、自分たちで生み出せたこと。そして「情報が分散し、属人化している」という共通の課題が、部門を越えて共有されたこと。
生成AIの活用は、ツールを導入すれば進む、というものではありません。「自分たちの業務の、どこに、なぜ、どう効かせるか」――その問いに、現場のエンジニア自身が答えを出せたとき、はじめて前に進みます。
もし、「生成AIで何かできそうだけれど、自分たちの業務にどう使えばいいか、具体策が出てこない」と感じている開発・設計部門の方がいらっしゃったら。一般論ではなく、自分たちの具体策を出すところまで、一度、一緒にやってみませんか。
お問い合せ先:AsgDcd@pn.macnica.co.jp
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