【BL二次小説(R18)】 朝まで踊りたい③
「オメーの右手は、オレの腰へ。……もっと下だ。尾てい骨辺り」
「け、結構際どいな」
さすがにフォークダンスとは訳が違う。
「女と踊る時は、こうやって尾てい骨な。紳士ぶって背中に手ェ置いてちゃあ、フられんぜ」
「……靖友もこんな風に女の子と……?」
「だーかーらー、オレは女と踊ったりしねーっつーの。一般論だバァカ」
「……ごめん」
さっきもこんなこと聞いて怒られた。
でも、気になって仕方ない。
店長さんは、靖友に一度ぐらい女の子と踊ってやれって言ってた。
てことは、靖友は女の子から声を掛けられてるってことだ。
いわゆる逆ナンってやつだ。
靖友……。
女の子にモテてるんだ。
なんか……嫌だ。
なんでだろう。
「チークってさァ」
耳元で靖友に囁かれてハッとする。
「頬と頬を合わせるなんて言われてっけど、そこまでする必要はねェ。こうやって囁き声が聞こえるぐらい近けりゃ、それでイイんだ」
「……」
靖友は単にダンスを教えてくれてるだけだ。
妙な気分になっちゃダメだ。
しっかりしろ、オレ。
「ら、来週頼まれてたジャズ、さ」
「ん?」
オレは気を紛らすために話題を変えた。
「オレ、観に来たいな。靖友が演奏してんの観たい。そうだ、何人か誘って来ようか?寿一とか」
「……へっ。福ちゃんがジャズなんか聴くかよ」
「き、聴かないかな」
「別にノルマがあるわけじゃねェ。誰も誘う必要なんかねーよ。……1人で来いよ新開」
「……う、うん。じゃ、そうする」
靖友が頭をオレに肩ズンしてきた。
ドキッ。
妙な気分を消すために話題を変えたのに、またすぐ妙な気分に戻ってしまった。
なんか変だ……。
チークのせいなのか。
なんか……いいムードっていうか……靖友とずっとこうしていたいって思う……。
オレは尾てい骨に添えた右手にグッと力が入ってしまった……。
と、思ったら、また騒がしい音楽に変わった。
ライトがパパパッと点いて、ダンスフロアにまた人がたくさん集まって来る。
チークタイムはもう終了だ。
靖友もスッとオレから離れてしまった。
ああ……。
「新開、ほら一緒にィ。足もっと開いて。膝曲げて腰落として、ハイ、背中海老反りィ。腰の重心忘れンなァ。肘耳付けてェ両手握ってブンブン回すゥ」
うわぁ、すごい体勢だ。
なんの体操だか。
「イイぞ。そうそう。そのまんま左膝上げてェ、ピッチャーが投げるように右手を大きく振り下ろすゥ。ハイ、今のもう一度繰り返しィ」
こ、これは踊りなのか?
自分でも何やってんのかわからない。
「ハイ、上体起こして背筋伸ばすゥ。足揃えて右足軸に1回転。鏡に向かってバキュン!きまったァ!」
ヒューヒュー!
パチパチパチパチ!
周囲の人がオレ達に拍手を……。
の、ノせられてしまった。
恥ずかしい。
「イカスぅ!オメー、やっぱ何やらしてもサマになンなぁ」
「恥ずかしいよっ」
「バァカ。イケメンはもっと堂々としてろ」
「すみませ~ん。一緒に踊りませんかぁ?」
そこへ、二人組の女性がオレ達に声を掛けてきた。
オレは靖友を見る。
「あ、オレぁ遠慮するわ。新開、オメー踊っとけ」
「んなっ!オレも無理だよ!」
オレは慌てて靖友にすがる。
「悪りィな、オレ達もう疲れたからァ」
靖友は女性達にそう言って、オレの手を引いてダンスフロアから出て行った。
ソファーのある席に行ってドサッと座り込む。
ああ、疲れた。
「ドリンク取って来るわ」
靖友がそう言って席を立とうとしたら、さっきの女性二人組が来た。
「どこから来たんですかぁ?あたし達ぃ~……」
言いながら一緒にソファーに座ろうとする。
オレは思わず立ち上がり、
「靖友、もう出よう!」
と言って靖友の腕を掴んだ。
「え?」
靖友も女性二人も呆気にとられていたが、オレは気にせず店を出た。
店内の熱気が別世界のように、外は空気がヒンヤリしていた。
オレは深呼吸する。
「……どーする?帰るかァ?」
靖友が頭を掻きながら言う。
「オレ……靖友ともっと踊りの練習したい」
オレがそう言うと靖友は驚いた顔をした。
「踊りの練習?……じゃあ、鏡があるトコだなぁ。カラオケは……鏡付いてねーか。ほんなら……ラブホとか?なんてな」
「ラブホだな。わかった」
オレは靖友の腕を掴み、繁華街の裏の方へズンズンと歩いて行った。
「え?オイ!冗談……」
