古民家で過ごす盛夏の朝
4時半に思い出したように鳴き始めるニイニイゼミ。どうやら朝らしい。
前夜の就寝が早かったからというよりも、まともに夕食を食べなかったので心底お腹が空いていた。
(こちらのエピソードは以下の続きです)
『里山暮らし研究室』というプロジェクトの一環で『里山文庫』という施設に滞在している。
研究室とはいっても、その過ごし方は自由である。日本家屋を自分で建てられるかというと絶対に無理だし、今ここにある環境を存分に楽しみたい。
奥の一室から抜け出して廊下を渡り、土間へと降りて台所に入った。
近代の日本の家ではキッチンや風呂・トイレへゆくのに下靴を履いて移動することはほぼ無いだろうが、この水を使う空間とそれ以外の居住空間の間に、土間という「境界」が設けられた構造はなんとなく好ましい。

そんなこともあろうかと、脱ぎ履きしやすいサンダルのような靴(あるいは靴のようなサンダル)で来たのは正解だ。
あの時に履いていたのと同じメーカーの、型違いのサンダルである。
一ツ目のトースト
とにかく空腹だったので、さっさと口に入れられるものが良い。

持参した卵で目玉焼きを作る傍ら、前の滞在者が置いていったらしい紫オニオンをスライスし、こんがり焼き色がつくチーズと共にトーストにする。

そこに目玉焼きをオンしたものの、あまり深く考えていなかったので、極めて半熟。これは……と思って、オンした状態で追トースター処理をしたものの、うっすら白い膜が張った程度ではご想像の通り。
トロ〜リこぼれ落ちた黄身はパンの端っこで余すところなく拭い去った。

朝は長い
山歩きをするなら朝4時半起きなんて普通の起床時刻だけれど、涼しいところへ行くわけではなく、ここは奈良盆地だ。
もうすっかり明るくて、そして暑い。

今ちょうど今夏の暑さのピークが来ている気がする。
今週末の雨は予報通りしっかり降ってほしい。
朝食を作って食べる間に一汗かいたし、眠気覚ましの意味でも朝っぱらからシャワーを浴びた。どうせなら着替えて、昨日の分と一緒くたに早速洗濯してしまおうって魂胆でもある。
旅行だと多分こんなことはせずに、さっさと出かける準備をするだろう。
でも、ここへは暮らしに来たのだから、これで良いのだ。
洗濯機を回す間に自室の掃除機がけをする。ちょっと滑りが悪いけれど、朝一番に明るくなる東向きの入り口がお気に入りだ。

全自動洗濯機は果たして便利か
ここには共用の全自動洗濯乾燥機が二台設置されていて、住人・ビジター共に自由に使うことができる。かの有名な青いネコ型ロボットの秘密道具として語られていた夢が具現化した代表例だ。
全部放り込んで仕舞えば、洗って乾くまで放っておけば良い。
それはどこか魔術的な囁きにも感じられるが、実際の現場ではそうでない方が都合が良かったりする。季節的にどうしても乾燥機を使う必要がある時などはもちろん使えばいい。冬場は設置した洗面室に暖房効果をもたらすだろう。
けれどこのような暑い時期には、わざわざコストとエネルギーをかけて室内でさらに発熱させるより、さっさと取り出して日光に晒し、なんなら気化熱を以て少しでも周辺の気温上昇に歯止めをかけたいところである。
気化熱
物質が液体から気体に変化する(例えば、水が蒸発する)時、それに必要なエネルギー(熱)を周囲から奪う。熱を奪われた周囲の空気は冷却される
複数人が集う場所としても、乾燥しきるまで次の人が洗濯できないよりは、さっさと空けた方が効率も良い。
自室の掃除機がけを終えて見に行くと、もう少しで脱水が終わりますよとのことで、しばらくそこで待っていた。今回は針金ハンガー2本と四ツ口のピンチハンガー1つしか持参していないので、あまり熱をかけたくないものだけを取り出して、あとは乾燥機の世話になる。
時間がかかる上に非常に暑いが仕方ないのである。
他の部屋を探検する
終わったら取り出さなければならない。そのタイミングを待つ状況だと、部屋にこもって執筆作業に移るには少なからずソワソワするものだ。
だからいっそここにある空間を探検してみることにした。
幸いにも、この時ビジターとして滞在しているのは自分一人で、他の部屋も全て開放されていた。

土間を挟んで台所の向かいにある部屋には囲炉裏が設けられてる。右手奥のスペースと共に共用の空間である。
一方、左手奥は個室スペースで、座敷好きなら断然この部屋を選ぶかもしれない。南向きの窓がある方は部屋も明るい。

外の駐車スペースとの間には縁側もある。
縁側好きの私としては、書庫の隣の書斎部屋だけでなく、こちらの部屋にも大層唆られる。縁側は囲炉裏部屋側とも一続きで寛げるスペースも設けられていた。

腹が減ってはブランチ
そうしてウロウロしている間に再びお腹が空いてきたので、早めの昼食をとることにした。喫茶店ならまだモーニングサービスの提供時間だろうから、ブランチだろうか。
朝ごパンを食べた後に、洗って浸水しておいた米を炊く。
洗濯物の乾燥が済んだら執筆作業に移りたいから、持参してきたレトルトカレーで済まそうと思ったのに少し魔が差した。
彩りを添えようと焼きズッキーニと適当に作ったチーズオムレツを乗せたおかげで皿に対してモリモリになってしまったのだ。まあ、皿のチョイスをミスったとも言えるのだが。

レトルトパウチから最後の一滴を絞り出しているところへ、『里山暮らし研究室』の主宰者(『里山文庫』の管理者)の方が現れた。
「何か作ってるんですか? ジャスミンライスみたいな香りがする」
流石である。今回持参してきたのは高知県のある土地で突然変異により生まれた香り米で、少し玄米をブレンドして炊いたものだ。
ちょうど良い機会だったので、洗濯物を干せる場所を教えてもらった。次からはいくらかハンガーを持ってこよう。畑として使えるスペースを見せてもらい、飼い猫とのご対面も果たす。
牛のような黒ぶちのボディに、見事なハチワレの面であった。

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