「おいしいを、ママにも作ってあげるね」
夜、 息子に突然言われた。
「明日、調理実習だからエプロンいる!」
もっと早く言ってよ、 と思いながら、
慌てて買いに行った。
お店で息子は、 シンプルで、 少しクールなデザインのエプロンを選んでいた。
帰りは、 時間も遅くなってしまったので、
そのままリンガーハットへ寄った。
息子は、 麺1.5倍のちゃんぽんを、
ぺろりと平らげ、
さらに、 ミスタードーナツを二個追加していた。
よく入るな、 と思いながら見ていた。
翌日が、 調理実習だった。
息子は、 小松菜とチンゲン菜とキャベツを、
学校へ持って行った。
「マヨネーズも持ってっていい?」
と聞かれて、 私は、 「いいよ」 と答えた。
前回の調理実習では、
じゃがいもに塩をかけただけだったらしい。
「なんか、 まずかったんだよね」
と言っていた。
だから今回は、
マヨネーズを持って行きたかったらしい。
本当は、 ドレッシングを持って行こうとしていたのだけど、 「こぼれそうだから、マヨネーズの方がいいんじゃない?」と、 私が言った気がする。
持って行ったチンゲン菜と小松菜は、
「なんかまずかった」 そうだ。
でも、 キャベツは、
「めっちゃ美味しかった!」 と言っていた。
翌朝。
息子が、 急にキッチンで動き始めた。
「ママにも作ってあげるね!」
今回は、 キャベツだけを茹でていた。
「あのね! ゆめちゃんが、 醤油かけても美味しいって言ってた!」
そう言いながら、 マヨネーズと醤油を並べている。
学校で教わったことを、
夢中で説明しながら作っていた。
私は、 その様子を見ながら、
なんだか嬉しくなっていた。
この子、 本当に、
“楽しい” を持って帰ってくるなぁ、 と思った。
完成したキャベツを、 息子は、
ニコニコしながら食べていた。
「ちょーうまい!」
と、 嬉しそうに言いながら。
正直、 味は私には、 かなり微妙だった。
しかも、 醤油をちょっとかけすぎて、
しょっぱかった。
でも。
息子が、 あまりにも嬉しそうだから。
なんだか、 こっちまで、 美味しい気がしてきた。
漢字を覚える時とは、 まるで違う。
勝手に、 どんどん始める。
「ママ、見てて!」
と、 相変わらず言いながら。
でも、 私は、 そういうところ、 嫌いじゃない。
美味しかった。
楽しかった。
だから、 ママにも作ってあげたい。
そんなふうに、 嬉しいを持って帰ってくる。
私は、 そういう息子を見ている時間が、
結構好きだったりする。
“作る側”だと思っていたのに、
その日は、私のほうが支えられていたのかもしれない。
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