見出し画像

息子を怒鳴った日から、先生に戻れる気がしなかった


少し動けるようになってきた頃、
「働かなきゃ」 と思い始めた。

経営するエネルギーは、 もう残っていなかった。

でも、 いつ収入が途絶えるか分からなかった。
その恐怖の中で、 私はとりあえず、
正社員を目指した。

まず、 リクルートエージェントに登録した。

ずっと経営者だったから、
雇われて働く感覚を、 もう忘れていた。

 何をアピールしたらいいのか、 分からなかった。
自分が何者なのかも、 分からなくなっていた。

息子との時間は、 削りたくなかった。
時短勤務で探した。
でも、 条件が合わない。

お金の不安と、
息子の幼児期を削りたくない気持ちが、
頭の中でずっとぶつかっていた。

優先順位が、 分からなくなった。

妹に相談したら、
「真面目すぎる」 と言われた。

「まずパートでいいじゃん。
賄いが美味しそうとか、 スパの受付だったら帰りに入れるとか、 そんな理由でいいんだよ」
と。

目から鱗だった。
仕事=志、 みたいに思って生きてきたから。

そうか。
そんな感じで、 働いていいのか、と。

そして、私は、賄いが美味しそうな、
懐石料理屋で働き始めた。
素敵なお店だった。

でも、 お品書きを覚えられなかった。
昔みたいな記憶力が、 もう無かった。

そのことに、 ひどくショックを受けた。

複数のことを同時に回す仕事も、
身体に合わなかった。

大学生の頃、
飲食店でアルバイトをしていた時も、
同じだったことを思い出した。

あの頃から、 向いていなかったんだ。

今更、 そんなことに気づいた。


でも、 一番避けていたのは、 教育だった。

育児に余裕がなくて、
息子に怒鳴ってしまった日のことが、
ずっと消えなかった。

怒鳴った後、 静かになった部屋で、
私は何度も、 「まずいな」 と思っていた。

教育の仕事なんて、 もう無理だと思った。

いや、 実績があることも、
経歴を評価されてきたことも、 分かってる。

でも、 もう、
あの場所へ近づける気がしなかった。


私は、 何者なんだろう。


その問いだけが、 静かに残っていた。


𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒

「軸へ戻るまで」シリーズです。
続きはコチラ
⏬️


第一話はコチラ
⏬️




#note連載
#エッセイ
#子育て
#お母さん
#人生
#軸へ戻るまで


いいなと思ったら応援しよう!

とも|教育のプロ、家ではバタバタ母 記事を読んで応援したいと思っていただけたら、とても励みになります。いただいたチップは執筆活動に大切に使わせていただきます。