「言わない。」その一週間、私は待った
「バカって言われる。」
息子が、ぽつりと言った。
「デブとか、ブサイクとかも。」
胸がざわついた。
私はNetflixの一時停止ボタンを押した。
「誰が言ったの?」
「いい。」
「言わない。」
私はもう一度だけ聞いた。
「誰が、何を言ったのかが分からないと、
先生に相談できないんだ。
先生も、どう動いたらいいか分からない。
だから、教えてほしい。」
息子は黙ったまま首を振った。
「言いたくない。」
私は、それ以上聞かなかった。
その言葉の向こう側へ、
土足で踏み込みたくなかった。
先生に伝えるには、名前が必要だ。
それは分かっていた。
でも、
話したくない気持ちまで、
こじ開けることはしたくなかった。
息子はおもむろに、
Netflixの再生ボタンを押した。
それから一週間。
朝になると、お腹が痛いと言う。
学校へ行こうとすると、表情が曇る。
私は毎日、
「今日は話してくれるだろうか。」
そう思いながら隣にいた。
でも、名前を言うことはなかった。
この子はもう、
小さい頃みたいに何でも話す年齢じゃない。
「言いたくない。」
その言葉の先へは、
入らないことにした。
話したくなった時に話せばいい、
なんて、そんなさっぱりした気持ちじゃなかった。
無理やり聞き出して、
頑なにさせてしまうかもしれない。
追い詰めてしまうかもしれない。
そう思うと、何も聞けなかった。
ただ、この子が呼吸できている時間を、
壊したくなかった。
彼の呼吸と一緒に、
言葉が出てくる時を、待とうと思った。
ただ一つだけ。
「一人で抱えなくてもいい。」
それだけは、伝わっていてほしいと思いながら。
𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸 𓂃𓈒𓏸
安心して神経を休められる場所。
それは子どもだけじゃなく、
大人にも必要なのかもしれません。⏬️
この物語の第一話はコチラ
⏬️
いいなと思ったら応援しよう!
記事を読んで応援したいと思っていただけたら、とても励みになります。いただいたチップは執筆活動に大切に使わせていただきます。