「頭が痛い。」その本当の理由を、私は知らなかった
その夜。
息子が寝たあと、
私は一人でキッチンに立っていた。
いつも夜に飲んでいるカフェインレスの
カフェオレは切れていた。
棚に残っていたのは、
「濃厚クリーミーカプチーノ」。
こんなの飲んだら、寝られなくなるかな。
そう思いながら、お湯を注いだ。
甘い香りが立ちのぼる。
でも、頭はもう十分冴えていた。
カフェインのせいなのか。
考えすぎているせいなのか。
もう、自分でも分からなかった。
マグカップを両手で包みながら、
私は考えていた。
来週、どうしよう。
三週間前。
あの頃は、まだ理由が分からなかった。
朝になると、
「頭が痛い。」
学校へ行く時間になると、
「お腹も痛い。」
そして、
「休みたい。」
それだけだった。
私は迷っていた。
理由が分からないまま休ませた方がいいのか。
それとも、
新しいクラスにまだ慣れていないだけなのか。
もう少し時間がたてば、
落ち着いていくものなのか。
私には判断がつかなかった。
でも一つだけ、確かなことがあった。
頭痛も。
腹痛も。
身体は確かに、
「疲れた。」
と訴えていた。
そのサインだけは、見過ごしたくなかった。
私はリビングの壁に立て掛けてある
ホワイトボードの前に座った。
息子も隣へ来る。
私は黒いペンを手に取った。
「ちょっと、一緒に考えようか。」
月。
火。
水。
木。
金。
まっさらな白い板に、一週間を書いていく。
「ママね。」
「頭が痛い、お腹が痛いって言うのは、
本当にしんどいんだと思う。」
「だから、そこはちゃんと休ませてあげたい。」
少しだけ息をついた。
「でも、ずっと休んじゃうと、今度は学校へ行く時に、もっと緊張しちゃうんじゃないかなって、ママはそこも心配なんだ。」
「だからさ。」
私は水曜日に丸をつけた。
「月曜日と火曜日を頑張って、
水曜日になったら、ふぅーって一回休もう。」
「それでまた木曜日と金曜日を頑張るっていうのは、どうかな。」
息子は少し考えて、
「うん。」
とうなずいた。
私たちは、その時に
分かっていることだけを頼りに、
二人でその約束を決めた。
あの時は、
それが一番いい方法だと思っていた。
でも、今は違う。
理由は分かった。
「バカ。」
「デブ。」
「ブサイク。」
そんな言葉を、何人もの子から受け続けていた。
先生も話を聞いてくれた。
相手の子どもたちも認めた。
謝りたいとも言ってくれた。
それでも。
息子は教室へ入れなかった。
私はマグカップを持ち上げた。
カプチーノは少し冷めていた。
あの頃の私は、水曜日に一日休めば、
また少しずつ学校へ戻っていけると思っていた。
でも、もうそんな段階ではなかった。
私はマグカップの最後の一口を飲んだ。
来週、どうしよう。
答えは、まだ出なかった。
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この記事は「何も解決していないのに、笑ってしまった日」の続きです。
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