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休校が決まった日、息子は笑った

翌日の休校が決まるほどの、
大きな台風が近づいていた。

「明日は学校、お休みだよ。」

そう伝えると、
息子が久しぶりに明るい声を上げた。

「やった!」

その声を聞いたのは、本当に久しぶりだった。

その日。午前で給食を食べて帰ってきた息子と、
私は家で過ごしていた。

午後になると、空の様子が変わり始めた。

雷が鳴る。
白い稲妻が、何本も地上へ伸びる。
風が唸る。

ベランダの向こうでは、
公園の桜が枝の先まで大きく揺れていた。
激しい雨が、アスファルトを叩きつけている。
今まで見たことのないような嵐だった。

私はベランダの窓を開けた。

「すごいね。」

息子は私の膝の上によじ登ってきた。
二人で外を見上げた。

風で大きく揺れる木々。
空を裂くような稲妻。
雨の音。

自然のエネルギーに、ただ圧倒されていた。

ふと、桜の木の上に目が止まる。
少し前からあったカラスの巣だ。
葉っぱの間に黒い巣が見える。
雛が口を開けるたび、小さな赤だけが見えた。

「あんな雨で大丈夫かな。」

そう言いながら見ていると、
近くの枝には親ガラスが止まっていた。

激しい風に揺られながらも、
雨に打たれながらも、
巣の近くから離れなかった。

ふと、息子に聞いてみた。

「友達と何かあった?」
「わかんない。」

「勉強が難しい?」
「わかんない。」

「何か心配なことがある?」
「わかんない。」

「先生が怖い?」
「それはない。」

そこだけは、はっきり答えた。

先生ではない。
でも、それ以外は分からない。

少し前には、ファミレスで泣いた。
「大人になりたくない。」
そう言って泣いた。

頭が痛い日が続いた。
お腹も痛いと言った。
微熱も続いた。

全部、どこかでつながっている気がする。
でも、その一本の線だけが見えなかった。

息子は私の膝の上に座ったまま、
二人で嵐を見上げていた。

地上へ伸びる稲妻。
白く煙るほどの雨。
激しく揺れる桜。
巣の中で耐える雛。
そのそばを離れない親ガラス。

私たちは何も話さなかった。

ただ、目の前の自然のエネルギーを感じながら、
二人で、じっと見上げていた。


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続きはこちら⏬️

行き渋りシリーズ第一話
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