親子でも、対等でいたかった
昨日、しばらく公園にいたあと、
私はゆっくり家へ戻った。
マンションの階段を上がりながら、
まだ少し息が浅かった。
玄関を開ける。
リビングの灯りはついたままだった。
そして息子は、 私の顔を見るなり、
泣きながら抱きついてきた。
「ママ、ごめんね」
そう言って、 ぎゅうっとしがみついてくる。
私は、 その体温を感じながら、
すぐには何も言えなかった。
まだ胸の奥が痛かった。
でも今回は、
先に私が答えを出すんじゃなくて、
息子がどうするのか、
ちゃんと見ていたいと思った。
息子は、 泣きながら何度も
「ごめんね」 を繰り返していた。
そして、 ぽつりぽつりと、
自分から話し始めた。
「ママ、ちゃんと話そうとしてくれてたのに、聞いてなかった」
「背中向けて、ごめんね」
「ため息ついて、ごめんね」
「ママ、悲しかったんだよね」
私は黙ったまま聞いていた。
息子は、 ホワイトボードの前で起きていたことを、 一つずつ思い返すみたいに話していた。
「ぼく、先生に怒られるの嫌で、
いっぱいになっちゃった」
涙でぐしゃぐしゃになりながら、
それでも息子は、
ちゃんとこちらを向いて話していた。
私は、 その姿を見ながら思っていた。
この子は、
ただ私を困らせたかったわけじゃない。
不安でいっぱいになって、
聞けなくなってしまっていたんだ。
それはわかってる。
でも、 私も苦しかった。
私は静かに言った。
「ママね、あなたのこと大事なんだ」
「でも、ママのことも大事にしたい」
息子は静かに聞いていた。
「ママはね、対等でいたいって思ってる」
「自分が不安だからって、“自分の話だけ聞いてよ”ってなるのは、対等じゃないよ」
「思い通りにいかなくて怒鳴り散らすのも違う」
「自分が苦しいからって、相手を雑に扱っていいわけじゃない」
「ママは、そんな扱いをされるのは嫌なんだ」
部屋は静かだった。
さっきまで、
あんなにキーキーした声が響いていたのに。
今は、 泣いたあとの息づかいだけが聞こえている。
私は続けた。
「大切にしてほしいなら、相手のことも大切にするってことなんだと思う」
息子は、 何度もうなずいていた。
そして小さな声で言った。
「ママのことも、大切にしたい……」
私は、 少しだけ肩の力を抜いた。
人は、 不安でいっぱいになると、
相手が見えなくなることがある。
でも、 ちゃんと話せば、
また見え始めることもあるんだと思った。
息子は、 まっすぐこちらを見ていた。
私も、 その目をちゃんと見返していた。
親子でも、 お互いに学び合いながら、
関係を作っていけたらいい。
さっきより少しだけ、
私たちは、 ちゃんと向き合って話していた。
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このお話は
「親子でも対等ていたかった。」シリーズです。
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