怖かったけど、大丈夫だった
翌朝、 息子は
少し不安そうな顔をしながら学校へ行った。
久しぶりの登校だった。
しかも、 前の日の夜、
あれだけ「先生に怒られる」と泣いていた。
玄関を出る時も、
少し緊張した顔をしていたと思う。
でも、 それでも学校へ向かった。
私は、 「大丈夫かな」 と思いながら、
玄関で見送った。
そして夕方。
帰ってきた息子が、
ランドセルを下ろしながら言った。
「先生、優しかったよ」
私は思わず、 「そっか」 と笑った。
息子は、 昨日とは全然違う顔をしていた。
「怒られなかった」
「みんなで探してくれた」
「先生が "みんなで教科書ないか見てみよう”
と声をかけてくれて、
クラスのみんなも机の中を確認してくれた」
私は、 少しホッとした。
先週の個人面談で、 私は担任の先生に、
「音楽の教科書が見つからなくて、
不安が強くなっています」
という話をしていた。
だから先生も、
少し気にかけてくださっていたのかもしれない。
でも今回、 私が一番大事だと思ったのは、
そこじゃなかった。
息子自身が、「全然大丈夫だった」
と言えたことだった。
私は聞いてみた。
「昨日、“先生に怒られる”って
すごく怖がってたじゃん?」
「でも、実際はどうだった?」
息子は少し考えてから言った。
「全然、大丈夫だった」
私は、 その言葉を聞きながら思った。
人って、 不安になると、
頭の中でどんどん怖い未来を
作ってしまうことがある。
怒られるかもしれない。
嫌われるかもしれない。
終わるかもしれない。
でも実際には、
思ったより大丈夫なこともある。
もちろん、 不安が消えるわけじゃない。
怖いものは怖い。
でも、
「怖かったけど、大丈夫だった」
という経験は、
少しずつ人を支えてくれるんじゃないかなと思う。
私は息子に話した。
「今度また不安になった時ね、“あの時も大丈夫だった”って、自分に教えてあげてほしいんだ」
「心の中に、もう一人の自分を作る感じ」
「大丈夫だよ」
「前も大丈夫だったよ」
「今回もきっと大丈夫だよ」
「そんなふうに、 自分に話しかけてあげることって、 すごく大事だと思うのね。」
息子は静かに聞いていた。
そして私は、 今回のことは、
親子にとって、
一つの学びだったのかもしれないと思った。
人は、 思ったより優しい。
そして、 不安は、
思ったより大きく膨らむことがある。
だからこそ。
“大丈夫だった経験”を、
これから少しずつ、 心の中に置いていけたらいい。
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このお話は
「親子でも対等ていたかった。」シリーズです。
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