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ママ、怖いと思わない?

最近、怒ったときの自分が少し怖い。

声は大きくなる。
言葉も乱暴になる。
「そんな言い方しなくてもいいのに。」
頭のどこかで思っている。

でも、止まらない。
だから、ある日、息子に聞いてみた。

「ママ、怖いと思わない?」

息子は笑いながら言った。

「うん。怒ると鬼ばばあになっちゃう。」

私は少し間を空けて、
「……ママも、そう思う。」
とボソリ答えた。

すると息子は、間髪入れずに笑いながら言った。

「ママも思うんかーい!」 

私もつられて笑ってしまった。

「鬼ばばあ」と言われたことは、
もちろん少しショックだった。

でも、それ以上にほっとした。
あまりにも軽い調子だったからだ。

もし、あのとき息子が真顔で
「うん、怖い。」と言っていたら。

もし、怯えたような表情でうなずいていたら。
私は、その場で笑えなかったと思う。

だから、あの笑顔に少し救われた。

それでも、自分が最近
怒りすぎていることは否定できなかった。

テーブルの上に、丸まった靴下が置かれていた。
食事をする場所なのに。

またか、と思いながら、息子に言った。
「靴下、洗濯機に入れてきて。」

返事はない。
ゲームの画面を見たままだった。

少し待つ。
でも、動かない。
もう一度言う。
また
「テーブルの上に靴下は置かないよ。
今、洗濯機に入れてきて。」

「今ちょっといいところだから。あとで。」

その"あとで"が来たことは、ほとんどない。
だから三度目は、声が大きくなる。

「片付けてって言ったよね。」

それでも動かない。
もうすぐ夕飯だ。

「もう、今すぐやって!」

気づけば、怒鳴っている。

「こんな言い方、したくない。」
そう思っているのに、止められない。

「まただ。」
と心のどこかで思っている。

昔も、一回で伝わることなんて、
ほとんどなかった。
それでも、
もう少し穏やかに話しかけていた気がする。

「一緒にやろうか。」
「あと五分したら片付けようか。」

そんなふうに、息子に寄り添う言葉を探していた。

でも今は違う。

「片付けて。」
「今すぐ。」
「何回言わせるの。」

気づけば、私の言葉は、
お願いではなく命令になっていた。

あの日、
「ママ、怖いと思わない?」
と聞いたのは、
息子に答えを聞きたかったからじゃない。

本当は、自分自身に問いかけていた。

いつから私は、
こんな言い方をするようになったんだろう。

いつから、お願いじゃなく、
命令になったんだろう。

いつから、寄り添うより、
怒鳴るほうが増えたんだろう。

最近、怒ったときの自分が少し怖い。

だから、あの日、息子に聞いたつもりで、
本当は、自分に問いかけていた。



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