「今日は何作ろうか」と聞いてくれた先生
横浜へ向かう電車の中で、
息子は少し緊張していた。
窓の外を見ているようで、 見ていない。
そういう顔だった。
スイミングに通っていた頃、
「緊張して嫌だ」 と言っていた。
みんなと同じペースで、 同じことをやる。
その空気の中で、 息子はどこかずっと、
つまらなそうだった。
習い事へ行く前になると、
「行きたくない」 が始まった。
この子に合う場所が、 どこかにあるはずだ。
そう思いながら、 探していた。
見学へ行ったのは、 少し遠い、
横浜のプログラミング教室だった。
扉を開けると、 明るかった。
先生がこちらを見て、
フレンドリーに声をかけてきた。
緊張しやすい息子が、 少しずつ、
ほぐれていくのが分かった。
しばらくして、 先生が息子に聞いた。
「今日は何作ろうか」
それだけだった。
教えますよ、 でもなかった。
やってみましょう、 でもなかった。
「何作ろうか」 だった。
息子の目が、 変わった。
さっきまでの、 窓の外を見ているようで、
見ていない顔じゃなかった。
何かを考えている顔だった。
自分が何をしたいかを、 考えている顔だった。
私はその様子を見ながら、
呼吸が少し楽になるのを感じていた。
この子、 ここだと安心できるかもしれない。
そう思った。
息子を変えたいわけじゃなかった。
ただ、 この子が、 自分のまま息ができる場所が、
どこかにあってほしかった。
同時に、 ずっと不安もあった。
この子は、 将来、
どうやって社会の中で生きていくんだろう。
でも、 その日初めて。
この子の特性と、 社会へ繋がる可能性が、
同じ場所にあるのかもしれない、 と思えた。
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この話は「この子に合う場所を探していた」シリーズの初回です。
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