育児に集中しようと思ったのに、それどころじゃなかった
夫が、また仕事へ向かえるようになった頃、
私は仕事を手放した。
疲れていなかったと言ったら嘘になる。
でも、それ以上に思っていたことがあった。
息子はまだ小さかった。
神社で車輪を回したり。
公園で夢中になって遊んだり。
毎日少しずつ世界を広げている時期だった。
私は、その時間をもっと見ていたかった。
もっと育児に集中したかった。
仕事を辞めれば、
神社で車輪を回し続ける息子の隣に、
もっと穏やかな気持ちで
待っていられるかもしれない。
幼児期は、今しかない。
だから私は、そちらを選んだ。
そういう選択だった。
でも、普通の生活は始まらなかった。
年末年始も、
家族のことで色々な調整が続いていた。
電話をしたり。
相談先を探したり。
何かを決めたり。
ある日には、
親族の家の玄関に卵が投げつけられた。
「今日もまたか」
という声を聞きながら、
私は次にどこへ連絡すればいいのか考えていた。
何かひとつ落ち着いたと思うと、また次が来る。
その繰り返しだった。
そこにコロナ禍が重なり、 相談や手続きの話が、
途中で止まってしまうこともあった。
何かひとつ落ち着いたと思うと、 また次が来る。
その繰り返しだった。
毎日、 普通に起きて、 息子にご飯を食べさせて、
洗濯をして、 買い物をした。
でも、 その普通の生活の底に、
ずっと緊張が流れていた。
いつ、 何が起きるかわからない。
次は、 何が来るんだろう。
そういう感覚が、 身体の奥から離れなかった。
休まらなかった。
誰かを責めたいわけじゃない。
ただ、 安心が来なかった。
家にいるのに。
家族といるのに。
どこにいても、 安心できる場所がなかった。
息子は、 神社で車輪を回していた。
私は、 ブレーキに手を添えながら、
その横で待っていた。
その時間だけは、 少し静かだった。
でも、 家に帰ると、 また神経が張り始めた。
普通に生活しているだけなのに、
ずっと、 緊急事態だった。
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「軸へ戻るまで」シリーズです。
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